浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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住宅地にいたけども

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「何かあったらすぐに助けを呼ぶこと」
そうは言われても、本当に恐ろしいときは声などはでないものだ。
ただ運は良かった。
がちゃん
教室にいたため、気づいたら、自分を補食しようとスライムが体を広げて、その影に入ったとき、後づさりの際にいろんなものをひっくり返したせいで。
なんの音だと、傘目(かさめ)が教室に入ってきて、そのままスライムを叩きに行った。
「逃げて」
「は、はい」
「他の先生に助けを求めて」
そういって這うようにそこから逃げていく生徒。
(しかし、分が悪いな)
今ので切れなかった。
そしてなんだか、感触からこれはただのスライムではないのではないかと思っていたら。
「魔法いる?」
「えっ?あっ?はい」
後ろに白万(はくまん)ともう一人いる。
「どうも彼氏です」
「ああ、後ろを向けませんが、どうもお世話になっております」
「じゃあ、とりあえずスライムの法則を書き換えますね」
ふよふよ
書き換えられるとスライムは中に浮き出して収束してうなうねしている。
「あっ、もうこっち見えてないんで、距離とって大丈夫です、う~ん」
「どうしたの?」
「凍りつき方がスライムっぽくないな、これかなり犠牲者だしているか、それとも違うかだな」
パチッ
静電気のような音をして、スライムが確保された。
「あの埃っぽいのみんな目ですし」
「あれ全部目?」
「目ですよ、それでこっちを把握してるんで、まずはそこをわからなくさせているので、スライムにとっては音も光もない世界につれてかれたようなものなんですが、もしもこれが仮定通りなら」
彼氏はそういって自分の世界に入っていく。
「ごめんなさいね、そういう人なの」
「でもどうしてすぐに?」
「覆木(おおうき)さんからしばらくは先生も見てやってくれと、魔法が必要な場面が増えるかもしれないからって、さすがにデート中に出番があるとは思わなかったけども」
「これはもしかして…」
「研究者肌だな」
「そのぐらいおもしろいってことは、世間ではとても危険なものなんだけどもね」
「なるほど」
「何かわかったみたいね」
「うん、さっきの生徒さんだっけ?あの子のこれ関係者だね」
「えっ?これは人だったりするの?」
「生霊みたいなもんかな、生霊スライムっていえば属性としてはわかりやすいかな、嫉妬によって変質しちゃってて、たぶんなった方は無自覚だし、ええっと狙われた生徒さん以外にも被害者はもう…二人異性なのはわかった」
「そういうのも関係あるの?」
「これ、同性に嫉妬して、異性を誘惑というか地獄に連れていくんじゃないかな」
「それは恐ろしいわね」
「うん、だから先に目を潰して正解だったし、白万さんが」
「ユズリさん」
「ユズリさん一人だけだとたぶん難しかったと思うんだよね」
「どこら辺が?」
「さっきも言った通り、同性には嫉妬するから、魔法を使える女性は嫉妬の対象にたぶんなるかな、この生霊スライム、妬ましいでいろんなものを奪ってきちゃった、それで犠牲になった人っていうのは誘惑に負けちゃったからなわけで」
「人としては美人とか?」
「かもね、さっきの生徒さんと年は同じぐらいだろうから、それはあり得るが、もうスライムだしな」
「剣も俺が未熟なせいか、通りがいまいちでした」
「これ切れたら、剣聖とかじゃないかな、ねばねばしているわ、本来ならば研究したい個体ではあるけども、それだと生徒さんも安心できないだろうから、凍らしたらそのまま燃やしてか、でもできるなら呪いにならないように変質させたいんだがな」
「ああ、それならば心当たりが」
「誰?」
「サメくんの兄弟子さんたち、さっきシュビビン言わせているの見たから、あっ、もしもし覆木さん、俺ですが、実は」
覆木を通して、サメくんの兄弟子が二匹やってきた。
「サッ」
先程はどうも。
「お仕事中だったようなので失礼しました」
「傘目先生、忍ジャメのお仕事中、見つけることができるの?」
「最初はなんだかわからなかったんですが、先日新聞もみましたし」
兄弟子たちが元気でやっているか弟弟子を見に来たところ、刃物を出して、警官に囲まれている現場に遭遇し。
確保が難しそうだったために。
ギュイ
体を入れて割って入り、犯人を捕まえることに協力、ギュイという音は、刃物とサメ肌が擦れる音である。
「サッ」
表彰はするとはいってくれたが、トドメをさしていない状態で、録を受けるのもなんだしね。
「そういう考えって大事ですよ」
白万は傘目がサメと会話しているのにも驚いた。
(ギリシャ語も読めて、サメと会話できるってどんな逸材を放置しているのよ)
「サッ」
しかし弟弟子が身を寄せている真中(ただなか)さんから、お礼にナポリタンというか、喫茶店に私は初めて行ったが大変良かった。
そう、現在、なんで兄弟子たちがこの街にいるかといったら、弟弟子を見守るためといいながらも、この街の喫茶店文化にカルチャーショックを受けたからである。
このクールな忍ジャメ達が、ナポリタンが提供されたときに。

テーブルマナー、テーブルマナー!

フォークを持つヒレが震える。

と見事に動揺してしまった。

そして食べた瞬間。
(あっ、これははまったな)
真中はサメの食べ物に対するわかりやすい顔、反応に気づいたという。
そこから里から休暇、いや、弟弟子を見守るために街に兄弟子、姉弟子が来るようになっているのだが、そこがサメくんがカバーしきれない部分の治安も担っていた。
「サッ」
この人霊スライムは熊の寝床に送らうと思うんだが、それでよろしいかね。
「あっ、お願いします」
「サッ」
それで一つ聞きたいのだが、さっき見つけた熊はどこに届ければいい? 
「はっ?熊?」
「サッ」
うん、住宅地にいたけども、勝手に捕まえたらまずかったかな?
はい、そのまま通報しました。


「それは大変でしたね、傘目先生」
そこから熊が出来れば毛皮がほしいという兄弟子のために、傘目は書類を書いたりしたという。
「ニュースでは聞いてはいたが、まさかいるとは思わなかった」
「さすがに熊はね」
いろいろとスケジュールが変わったので、水芭(みすば)に連絡して、道場へ顔を出すためのおにぎり等を頼んでいた。
「あっ、これ白万さんたちから、みなさんの分のお土産だそうです」
地域限定スナック、キャベツうどん味。
「これはどうも」
「ああそうだ、水芭さんの差し入れ、料理にお母さん達が感謝をしておりました、そちらは純粋に感謝なのでお伝えします」
「それはどうも」
「一昔前は、父母会で持ち回りで差し入れを作ってましたから」
「それがどこで変わったんです?」
「うちの流派でKCJの戦闘許可書を最初にとった人たちですね、その人たちがお金が入ったので、それこそ持ち回りで、今はそういう仕事している人たちがメインですかね、ちょっと前までは社会人組が出していたんですが、物価がね」
「あ~」
「私だとここで頼めますが、KCJの戦闘許可書持ってると、KCJの食堂で頼めますから、今はほぼ二択です、ここか向こうかって、ただ先日うちの門下、俺の先輩でお見合いをした人がいるんですが、そちらのお見合い相手の関係を是非にお使いくださいと迫られてて」
「そういうのは、出来れば断った方がいいですね」
「弱味とはいいませんけどもね、うちの流派は金銭面と情報面では弱いところがあるからな、こちらがそういう意味では羨ましいですよ」
ピー
「失礼」
ご飯蒸らし終わりのお知らせ。
「先生、軽く食べますか?」
「いいんですか?」
「賄いですけどもね」
大粒ホタテの炊き込みご飯に、刻んだ海藻とオクラと、すりおろした山の芋がのったもの。
それを提供してから、水芭はご飯を混ぜ込んだり、味をつけたりしていた。
「何キロ炊いたんです?」
「20キロですね」
「20…」
「でも食べちゃうでしょう」
「はい」
最近じゃ、社会人、世帯持ちのみなさんも食べてから帰ったりしているようです。
「賄いどうですか」
「美味しいです、これ賄いですか」
「食材の量が少ないので、その山の芋、兄弟子さんたちが持ってきてくれたんですよ」
代わりにサンドイッチを用意したところ。
「サッ」
サンドイッチ…パセリ、中身は厚焼き玉子だと…
渓流育ちは動揺しまくっていたという。
「連絡を受けてから準備していたら、魚屋さんが鰺を持ってきたので、フライにしましたから、そちらもどうかみなさんで持っていってくださいね」
冷めても美味しい衣ついてます!
「先に鰺が来てたら、焼き魚でも良かったんですが、そこは申し訳ないですね」
「いいですよ、そこまで気を使っていただかなくて」
「そうですか?」
完全に腹ペコだから食べれるよねっていう目で見られているし。
(間違ってはいないんだよな)
シンプルな塩むすびと鮭ゴマ結びを道場に持っていくと、すぐにみなは手を伸ばしてくるが。
「手を洗ってから!」
そう注意すると、我の強い剣士たちはおとなしく手洗いをするのであった。




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