浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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わくわくサンタコース

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螺殻ミツは現在同行者が武装資格を持っている場合限定で、自身の装備を使うことができた。
これは彼女が前職が異世界とはいえ、治安の仕事をしていたことと、やはり現在の所属が有名であり実力を兼ね備えているということがとても大きい。
「早いうちに取ってはほしいけども、そう急ぐものではないから」
お父さんこと瀬旭(せきょく)はそういっていたが。
「でも試してみるのも悪くはないとは思うな」
パパこと覆木(オオウキ)としてはそうらしい。
こういうときなんだかんだで便利なのが、KCJの戦闘許可申請試験である。
落ちても何度も受けれるし、受験料も高くない、今では全都道府県で実地され、そこに行くもの大変な人間のためには予約で無料バスなども出しているぐらいだ。
その説明を窓口でしてもらうと。
「以上が基本なのですが、螺殻さんでしたら評価がプラスにもなる上級者向けを受けてみてもいいかもしれませんね」
「いえ、もしも受けるなら一般からでお願いします」
それは通称わくわくサンタコースという。
その名の通り、サンタ、もしくはレッドノーズ、そうでないから有名人がやってくるとされている。
その話を事務所に戻ってからすると。
「ああ、あれか」
瀬旭はそういい。
「そっちには参加したことがある、受験生を落とす方としてね」
試験管理側として呼ばれたことがあるそうだ。
「もちろんこっちの水芭(みずば)もだよ」
「要請は今でも来てますよ」
そういってKCJからの封書を見せてくれる。
「ただうちも他のパーティーが解散や廃業したおりに引き継いだ仕事があるから、こういうのまではなかなか行けませんがね」
水芭としてはこの辺は引き受けたいようだ。ミツからするとそれは少し以外だったが、その辺の事情は瀬旭や覆木が試験管理側として呼ばれたときに、運悪く受験した人間に聞けばわかるかもしれない。
その時の参加者リストを当方は独自のルートから入手し、話が聞けそうな…
おお、ナリタツさんの名前がありますね、これはよろしくければその時の話を聞かせていただけませんでしょうか?
「ん?」
戦闘職許可申請試験で、その昔瀬旭さんと覆木さんがお呼ばれした際に、受験生だった人にお話を聞いておりまして。
「…ああ、それか、でもそこまで話せることはないぞ、何しろ、その時すぐに落ちたから」
えっ?ナリタツさんでも落ちることあるんですか。
「あの時は若かったから、その~だ、名前を上げたかったのはある」
そうそのためにわざわざ評価がプラスになるコースを選んだそうだ。
「あれはね、自分がバカなことしたなって本当に言いたくはなる話だもん」
この時わくわくサンタコースの合格者は数人だったとされるが、KCJやその他に所属する人間である。
「普通に受けた方が合格者が多い回だったからさ、あそこで欲出さずに普通に受かっていたら、たぶん今のように俺はなってないよ」
そこまでナリタツさんに言わせますか。
「あれ?知らない?あの時普通に受かったやつは危機管理が優れているとかで、今はあちこちの中核なんだよね」
ええっと待ってください、今、確認しますが、あ~そうですね、この回に合格したかた、試験の参考書のインタビューにも載ってますが、結構有名どころに収まってるって感じですね。
「実力で赤子の手をひねるような負け方をしたら、しばらく夢に出るよ」
えっ、そこまで!あっ、いや、すいません。
「いや、いいって、この世界はなんだかんだで実力の世界だしな、あの二人はな、敵対すると、まず近づかせてくれないからな、実際にあの二人と戦ったことはあるか、戦ってるところは見たことはある?」
申し訳ありません、ありません。
「そりゃあそうだ、手の内はなかなか見せないのもあそこの怖いところではあるさ、試験の日、今でも覚えているけども、二人の名前が出たとき、受験生の中で騒いだやつがいたからな、俺は知らなかったんだ」
このわくわくサンタコースには夢があるとされている。
何しろ普段は会えない有名人がやってくるので。

俺さ、この間すげぇ人と会ったんだよ。

とか

お父さんな、昔この人と模擬戦したことあるけど、本当に強くてだな。

など、落ちたとしても話の種になるのである。

「んでもってさ、そこでいい戦いが出来たら将来有望株になれるし、土でもつけたらそれこそそこで人生が変わるからな」
すぐにその名は知れ渡り。

「私はこういうものなのですが」
名刺をもって、合格者を勧誘にやって来る。
「将来の設計にお役に立てるようなお話をさせてください」
スカウトが来る。

「そのスカウトのうちでも、新人を見抜くのに長けたところが今はあるから、そこが目をつけているってだけで箔がつくんだよ」
パーティーに所属しなくても、業務の提携や協力関係という形をとりつけただけでお釣りが来るそうだ。
「そこもあるし、人手不足はこの業界にも蔓延る問題なわけよ」
ああ、それは…
「KCJの試験が画期的なのはわかると思うけども、だからこそ昔からの育て方しているところは目の敵にしているんだよ、でも今はその声はそこまででかくない、それは何故かというと、昔からのやり方で来た奴等が後進の育成に失敗したからなんだよ」
それは少し聞いたことがあります。
「ぶっちゃけると、俺が試験を受けたときぐらいから、三人これからを担う人間として上がったけども、今は表舞台から引退しているからな」
それは気になる話ですね。
「そしてその穴を埋めたのは、KCJの戦闘許可証持ちなんだよ、肝心なときに助けが来ないならば武力の意味はがた落ちするからな、あっ、それとだ、あの二人はそこまでわからないけども、水芭さんは知ってる」
意外なところから名前出ましたね。
「一度依頼先でかぶったというか、こっちが槍ぶん回しているときに援護がされたんだが…」
狙い目というのは時折かぶるものである。
そして近接のナリタツの場合、銃器でフォローするのは大変であり。
「突こうとしたら、横から着弾があって、綺麗に突けたことがある、あんなに綺麗に突けたらすんごい気持ちいいんだが、水芭さんって特別な装備じゃないんだよ、それこそ汎用の装備でそれをやるんだよな」
KCJの警備でも採用されているモデルがメインです。
「同じ装備という括りで競わせたら、水芭さんに勝てる人はそういないと思う」
ナリタツさん、今日はおもしろい話をありがとうございました、何かあったらまたお願いします。


コンコン
「失礼します」
「入りたまえ」
河川管理部長室。
ミツはポスターや紙袋を持って訪れた。
「数日ぶりだが元気そうだな」
「お陰さまで」
「しかしすまないな、急な出向という扱いにしてしまった」
「いえ、あそこにいるのは遅かれ早かれだと思ってましたから…」
「そうか、君のような人間を手放すのは損失だと思うよ」
「そのお言葉はありがたいです、それで部長、来年度のカレンダーですが、お持ちしましたので」
「カレンダー?」
カレンダーというのは理由があって、日本で使われる暦とこちらの都市部では暦が若干違うのだが。
「子供っぽいかもしれませんが、河川繋がりということで」
レッドノーズ週刊カレンダー!
「日本にいる、サンタさんのところにいるサメのカレンダーと…」
「見てもいいかね」
「どうぞ」
一枚めくるごとに、笑顔になってる。
このカレンダーは実は水芭が用意した。
「挨拶周りという理由は必要だから」
なんでこのカレンダーにしたのかなと思ったが、わかった気がした。
そうヒロシ部長はね、河川ザメ好きなんだよ!
「私は子供の頃、家族と共に向こうの水族館に旅行したことがあってね、その時水族館で見たサメが忘れられなくてね」
「サメがお好きなんですか?ああ、それならもう一枚カレンダーがあるのですが」
出したものはよく見た外観、浄水センターである。
「このカレンダーの9月だけは、…見てください、なんでもこの施設の職員のサメらしくて」
「ああ、なんということだ、奇跡はあったのだな」
「へ?」
サメファンは一枚の写真で個体をすぐに把握する。
「このサメだよ、このサメ、イサリというサメでね、私が行った水族館はもうないという話だが、そうか、職員になってたのか…」
ホロリとした。
(どうしよう、まだあるんだけどもな)
「部長、お子さん向けにこういうのもあるんですが、よろしければ」
だいた同じ、若干の違いは気にするな河川ザメ実寸ぬいぐるみである。
「これはうちに持って帰ったら、取り合いになるから、この部屋で飾らせてもらおう」
そういって部長室にサメのぬいぐるみは置かれることになった。
かなり溺愛しているらしく、同じく飾られたレッドノーズカレンダーなどは、何故かめくられていないので、職員や掃除のかたがめくろうとすると。
「それはそのままでいいんだ、ありがとう、後は私がやる」
部長は就任中、カレンダーとぬいぐるみには触らせなかったという。
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