浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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そういう問題じゃない

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「呪いですか」
「うん、そう、これは比較的に発生して新しいとはされているが、それでも20年ぐらいは経過している、うちとの関わりは最初にかかわっていた担当が廃業するための引き継ぎだよ」
今日はパパこと覆木(オオウキ)と一緒である。
「昨日その呪いからの交代者が出たから、そのための確認ってやつ、お清めがてらも兼ねてね」
この古い屋敷の中では、呪い、わかりやすくいうとゲームが続いているという。
「老若男女と共に明日のライブのために、オジの家に泊まることになるからこの地を訪れることになるですか」
「そう」
一日目は何も起こらない、むしろ地元の美味しいグルメ満喫みたいな流れらしい。
「で普通に二日目を迎えるけども、そこからがいけない」
ライブに行こうとするのを許さないのだ。
「そして何らかの方法で殺害してくる、犯人は一番多いのはイトコらしいね」
これもまた保護され、証言を取られてからわかってることである。
「問題はいろいろあるんだけども、一日目に出てくる地元のグルメ、あれ、実際にお店があるんでさ」
「営業妨害にあたるわけですか」
「そう、だって殺害されると一応は二日目からスタートだけども、いいイメージはつかないでしょ」
そしてこの呪いの不味いところは、呪いを解くよりも呪いをかける相手を交代させる方が比較的簡単に見つかるところである。
「極限状態だからそこから逃げる、そして誰かに代わるのはギリギリ犯罪には問われないんだけども、人間はそんなに単純ではないさ」
「そうですね、何も知らない自分を呪いに関わらせたとなれば、それこそ恨まれますもんね」
屋敷の兵には区の管財管理の看板があげられるし、危険、進入禁止のものもあった。
「しかも今、ここ肝試しスポットになったみたいで」
ほらと端末を見せてくれる。
「この配信者が今回入れ替わって中にいるかもしれない人ですか」
次週有名なあそこに行っちゃうぞ!
と写真が一枚乗ってるが、それはこの屋敷の正門で、もう特定班が住所を特定され、動画公開時間に公開されてないために大騒ぎになってるようだ。

「まさか本当に」
「話題作りじゃねえの」

「もう少ししたら野次馬がいっぱい来ちゃうかもしれない、こういうことは前にもあったらしいけどもね」
テレビで怪談スポットとして紹介されたらしい。
覆木の運転で次の場所に向かう。
地元、老舗デパートの地下である。
「なんか騒がしいですね」
どうもお客の目を引くようなイベントを開催しているらしい。
「昨日の今日だからだよ」
厄払いセールらしい。
「じゃないと人なんて来ないから」
安いということ、それが呪いに打ち克つ活力になるとは、なんとも人間らしいやり方である。
「だからこの日に合わせて色々と作るものがあるんだ」
「いらっしゃいませ」
「こちら、このお店の若旦那さん」
「はじめまして」
「はじめまして、ということは先程は向こうに」
「静かでした」
「そうですか」
いつもは本店にいるが、若旦那は今日のためのお菓子を持ってきたらしい。
「若旦那、それでは店頭に並べます」
「お惣菜売り場の方にもよろしくね」
「ミツ、この運ぶ人もね、お店の人じゃないんだ、この厄払いが始まった頃、厄払いしようとしても色々と起きてしまったんだ」
一番妨害が起きるのは運ぶ人なので。
「うちらと同業者が運んだりするんだ」
「剣の修行と通じるのか、今じゃ職人の手伝いが出来るようにもなりましたからね」
あの白衣の人がそうらしい。
「彼はね、節句の生まれだから、こういうのに強いってことで選ばれたんだ」
その人を先頭に他のお店の人も並べるのを手伝うらしく。
「実際についていってみるといいよ」
覆木がいるとそういう現象が起きないからこそ、ミツ一人でいかせる。
お菓子というのは和菓子で、饅頭に書かれている文字は、いわゆる経文の一種、それを仕上げに焼き印で押して完成するが、その他のお菓子もあるようだ。
(ああなるほど)
ミツはおそらくこれが影響だろうか、というものを感じた。
ピリピリとした火傷に似た空気。
「さあさあ、縁起のいいお菓子が出来上がったよ」
しかし、白衣の男の口上で、その空気はかき消えていく。場が和むと、いつもと変わらないものになっていった。
(すごいな、こういう方法もあるんだ)
研修としては呪いの対策は受けたことはあるが、それらを実際に仕事にするのは将来を約束されたキャリアたちであるので、ミツは一度も実務としては経験はなかった。
(あっ、そうか、このお菓子、そういう意味か)
頭の中で、焼き印の文字から元の経文を思い出せた。
(こういうのも勉強しなくちゃな、これは比較的有名だったから思い出せたけども)
たまにいるのだ、これはどんな意味ですか?という質問が飛ぶというのが。
(あれ?でもこっちのお菓子は何か意味があるんだろうか?)
この日作られたお菓子は他にもある。
「謎は解けましたか?」
白衣の男が話しかけてきた。
「あのわからないことが、この可愛いのはなんですか?」
ピヨ!
「ああ、これですか?それはせっかくだから可愛いのが作りたいと思ったので、さすがに売り物では無理ですがこうして飾るぐらいならばと許可を得ました」
「ということはあなたが作ったんですが」
「そうなんですよ、どうもこういうのが性に合うのか、無心になれるといいますか、今ではこの日になると自然とお菓子作りの気持ちになるんですよ、ええっと覆木さんのところの方ですよね」
「はい、先日からお世話になっています、螺殻です」
「古平良(こべら)です、あなたとは長い付き合いになりそうだ」
「ああ、そうですね、よろしくお願いします」

事務所に戻ると、禊が少しばかりある。
あれはやはり強い力があるらしい。
「お帰り」
水芭(みずば)さんである。
そしてみんなで話し合いに入った。
「ここ数十年で発生した呪いだと、あそこがやはり別格なんだよね」
「そうですね、死者はでないが、性格の悪さでは段違いでしょうね」
そうなのだ、死は経験するが、実際の死者はいない。
あるのは何度も殺される経験や、そこから必死で逃げようとする極限状態、そして逃げたいが故のちょっとした…
「十分人は壊れるけどもね」
「痛ましいですね、根本的な解決はないのでしょうか」
「難しいところなんだが、あそこには俺たちは入れない、それこそ無抵抗な一般人しか入れないとされていて、実際に俺らも試すことには試したが、無理だった」
「中の様子なんですが、時間としては7日目まではあるとはされてますが、それ以降は不明です」
事が起こる二日目午前中以降になると、途端に持ち帰られる情報が少なくなるという、無理もない、殺害されるという経験や感覚は一回で十分だろう。
「ミツにはそれを試すことはないから」
「それはこちらで勝手に決めました、ご了承ください」
「ありがとうございます、ああ、そういえば先程お話しした方がいるんですけども、私はあまりクラシックとかわからないので」
古平良がこの曲を聞いてお菓子のインスピレーションを得ましたといってたので、鼻唄で紹介してくれた曲を、鼻唄で繰り返すのだが。
「それはオーディオルームにあるから聞きたいか?」
「聞いてみたいですね」
ミツはその後オーディオルームに行った。

「なんで一人で行かせちゃうのよ」
「すまん、それは俺のミスだ、さすがに俺が行くと現象は発生しないと思って一人でいかせた」
「でも、ただの自己紹介ですし、古平良ならば年も近いですから…」

『そういう問題じゃない』

パパとお父さんの尾を踏んづけたようです。


(螺殻さん、ミツさんっていうんだよな)
若旦那と覆木が話していたのは聞こえていたので、名前も知ってる。
「どうしたの、兄、なんか機嫌いいわね」
「そうか?」
「お菓子作りが上手くいった?いや、これは…」
「なんだ」
「女の人と会った?」
「おう!えっ、でもだ覆木さんのところの新しい人なんだが」
「えっ?そうなの、あそこって女の人あんまりいないし、友達なんか募集があったらすぐに受けるのにっていってたぐらいなんだよ」
「そんなに人気なのか」
「わかってないな、兄貴はあそこはイケオジに囲まれ、呼吸をするだけで幸せになれるところなんだよ」
妹はファンではあったが、ここまで熱く語れるタイプだとは知らなかった。
「私も節句に生まれていればな、後、お母さん4日頑張ってくれれば」
「無茶は言わないでやってくれよ」
「でも羨ましいな、だってさ、決して同年代男性では得られないセンスの良さをヒシヒシと味わえるなんて」
「そんなに違うのか」
「お兄ちゃんさ、子供っぽいって自覚ある?」
「えっ」
「ここで自覚がないところがまだまだよね、でも覆木さんたちは違うの、ガッカリさせてくれないのよ」
今年のバレンタインデーにチョコレートを贈ったところ、ホワイトデーには丁寧なメッセージがついたお返しが届いた。
「これよ、これ、これがいいのよ、むしろ殻さんに私がなりたいわ」
そこでピンと妹がまた何か来たようだ。
(兄が螺殻さんと仲良くなるということは、あの事務所のイケオジたちとも交流が増える)
そして兄が失敗しても自分には痛手がない、「この方向で行こう!」
「お前の兄貴は人の心は読めないから、どういうことか説明してくれるだろうか?」
「いいから、いいから」
妹はそういって話はごまかしまくったという。








  
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