浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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おかわり!

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「それこそ、でかいデスゲームやっちゃってるから」
「なんですか?いきなり、面倒くさそうな情報を」
「なんかわからないがデスゲームが流行した時期があって、当時はデスゲームなんて名前ではなくて、こう…なんていうの、それを行うのが正しいと思っていた」
「気持ち悪いんですけども」
「あったんだよ、事実として、それでまあ、正しくないことを正しいと思い込み、効率の悪い恩恵のために、命をかけちゃったってやつ」
「そんなことをしたら、…どうなるんです?」
「歪むよ」
「まあ、そうですよね」
「ただその歪みは心だけではなく、物理面にも影響を及ぼすので、人の体に悪いことを常識だと刷り込まれる、それを外れる奴はダメだと決めつけたら、もうやっていることはデスゲームのように、誰かを切り捨てて、生き延びろを競わせたわけですよ、この静かな、人がいないような静かさ、生活感のなさってそれよ、もう十年ぐらいしたら、廃墟みたいになるからわかりやすいけども、今はその前ってところ」
「どうにかしなかったんですか?」
「それこそどうにかしようとするやつを悪と決めつけて、排除しようとしたんだよね、この地域、それこそ甦らせるには儀式がいるんだけども、管理の○○さんいるでしょ、あの人はこちらの出身で、あの人ならば儀式できるんだけども」
「含みますね」
「管理の名伏せって苦労人ばっかでしょ、それこそ親の借金を背負わされて、世間話で聞いたら、その額はありえないよっていう、そういうのをサラッと返せちゃうぐらいの人たちだったりするんだけども、そういう人が儀式を行った場合、今までの辛苦が、辛苦を与えた加害側に返るとされているんだ」
「それって復讐に、やったー!じゃその言い方は済まないですよね」
「加害側には変えるがどこまでを加害側ととるかはコントロール出来ないんだ」
単純に倍は飛ぶとされているが、倍以上は確定。
「全然関係ない人も巻き込まれる場合もあるんですか?」
「間接的にはね、そう、だけども、そういう数え方しちゃうとね、後には何も残らないし、それでもわざとやろうとするのならば、KCJが全力で止めに行くからな」
「それは怖いですね」
「不思議なことに名伏せの人間はそれを選ばないんだよね」
「なんでです?腹立ちません?」
「人ができているのかなんなのかわからないが、その辺は清涼感溢れるCMみたいな割りきり方をしているんだよね」
「理解できませんね」
「でもしようとしてくれ」
「了解しました、それで今から行うのは」
「ちょっとした散歩さ、少し歩くことになる」
多少でも怨みなどを晴らすように、KCJの職員が、要所を巡り歩いて足しにする。
「人が歩くことで、活性に繋がるからね」
「うわ…」
「どうした」
「ここって土地の力すごくないですか?ズシンと体に響くものがある」
「あっ、はっはっ、そうかい、新しい人が来てくれたと喜んでおられるのだろうな」
「それは神ですか?」
「わからん、ただ古くからおられるってものだ、分類できるほど人はまだまだ知らないことばかりさ」
この地脈の刺激は、行ったものにもプラスがある。
「運が良くなるってやつだね、良くなる部分は個人差があるけども」
「へぇ」
そうなんだ、ぐらいだったのだが。
そこまで運がいいと感じたことがない人間に、何度かラッキーが続いたので。
「地脈踏みを習慣にする人いるのよくわかりました」
今まで買えなかったものがセールになったが、買える額だったり。いきなりタイムセールが始まったり。
「私はそういうことは少ないんだよな、どっちかっていうと」
あっ、忘れ物した。
取りに戻り、再び歩き出したときに。
バン!
車が発進したが、運転手は反対方向を見ないままアクセルを踏んだ、ただ勢いがつきすぎたのでそのまま歩道をこすって、街路樹に当たる。
「あれ、忘れ物してなかったら、もしかして今の事故に巻き込まれてたかなって思うような、目の前でもしかしたら自分が、今…みたいなことが何回か起きるね、ただそれは音としてもあんまり気分がいいものではないから、怪我などはないけども、楽しいものではないね」


『耳掃除は浜薔薇』

「このソースは少ししょっぱいんだよね」
名伏せの職員が、帰宅し、家事を預かる妹ザメと話をする。
「ジュノベーゼっていう、バジルとか、松の実なんかが入ったものなんだけども、だからこのバランスにします」
そういって味付けしてない蒸かしたジャガイモにチョンチョンと乗せた。
「この濃さだと、バランスは、うん、ちょうどいいね」
「メッ」
妹ザメも気に入ったようだ。
この職員はおっちゃんのいる浄水センターに炊き出しを用意する際に、付き添ったりもするのだが、本人も扱うものが食べ物だけに勉強し、このようなアレンジはできる。
本日は浄水センターへの特別メニューの準備、そこを担当したのでこのように自宅で過ごしている。
では浄水センターのみなさんはどうしているかといいますと。
「本日は特別メニューです」
「よっ!待ってました」
元独身寮の人たちも、食事に集まっているようです。
「ここにいない人らにも、お持ち帰りで出してくれるなんて、太っ腹や」
「むしろ、これは関西発祥ですからね」
7月2日は何の日ですか?
半夏生というわけでKCJの炊き出しにタコが登場いたしました。
「それではみなさま、プリプリタコ飯定食です、どうぞ召し上がってください」
いただきますで、職員たちががっついていた。
「この職場選んで良かったです」
春から入寮した職員がそういった。
「ええやろ」
「はい!」
「KCJさん」
「なんですか?」
「改めて言うけども、最初はKCJってなんなの?そんな虫のいい話があってたまるかって思ったんだけども」
「は、はい…」
「このまま俺が死ぬまで騙してくれたらそれでいいから」
「ついでにこっちもお願いするわ、他の部署の奴は、あいつらは騙されてるってまだいうから、ここまで旨いもの食べさせてくれるなら、もう死ぬまで騙してくれって感じやな」
この担当者はいつも浄水センターに来ている人でも、関西のノリもわかっているわけではなかったので。
「どうしよう…と、とりあえず出来るだけ予算浮かせて、良いものを出来るだけ用意して」
このせいで若干浄水センターの炊き出しクオリティが上がることになります。
「ああ、そんなこと言われたのか、まあ、挨拶みたいなものだよ」
「ですが」
「まあ、最後まで騙してくれって言われたら、わかりました、いい夢を見せ続けますって答えるしかないよね」
対応に慣れてない職員も、なれている職員も、どっちもKCJだなと思えるこの個性。
「できるならば最後まで、本当、それって大事だよね」
たった一つの言葉を真に受けて、それを実現してしまえたからこそ、管理の名伏せ職員になれるものなので。
「おかわり!」
そのぐらいのためならばいいよで叶えてしまえるのだ。


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