浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ヨミマシタネ

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「受けとるにしろ、それを使用するにしろは、秋澄くんには任せるけどもさ、どういうことが今まで起きたかは、ちゃんと知っておいてね」
吸血鬼からの贈り物はほぼ決定ではあるが、その先は秋澄に一任されることになったのだが。
「ただ調べている先で情報局でトラブルは発生したから」
古い資料を探している時だった。
ここにあるのはただ古いだけであって、危険度はないと思っていたが。

吸血鬼が無機物に変化した場合、劣化することは知られているが、人間から吸血鬼になった、そして無機物になる場合の劣化はずっと早い。
これはその記録である。
そこまで読んで、職員は顔をあげた、これは読んではいけないやつだと。
(なんでこんなところに?)
いや、それよりもここまでの文章を読んでしまったのも不味いのではないか…
「読みましたね」
真後ろから声がした。
これは振り替えったらいけないやつであろう。
「読みましたね」
「読みましたね」
「読みましたね」

   ヨミマシタネ

怖い、本当に怖い!こういうことに遭遇するのがKCJだとしてもだ、怖いのは怖いのである。
「な、なんで読ませたいんですか?」
「読んでくれる人が今までいなかったからです」
「あのどちら様で?」
「その本の記録係です」
古さから人ではないと思われる。
「なかなか読まれなくって、やっぱり本って読まれてナンボでしょ、初めは原語で書かれていたんですけども、ここを訪れてくれる人って、原語に詳しい人来なくってですね、私の方が日本語を覚えちゃいましたよ」
「それ、どのぐらいの期間で覚えましたか?」
この職員は、原語で苦労したので興味がある。
「興味あります?まあ、でも一ヶ月ぐらいで」
「それは人間でもできますか?」
そこで振り返った、記録係は人間に化けているが、目が違う、人間に似せてはいるが、焦点が虚ろなので。
「人間に化けるならもっと気を付けた方がいいですよ」
「これでも結構自信があったんですが」
「私たちならすぐにわかりますし、たぶん一般人なら怖いって思いますよ」
「そうなんですか?これでも人間とは上手く、ほら、本は読まれてナンボデショ?」
「そうなんですけどもね、それでええっと移動できます?」
「では談話室にどうぞ、飲食も可能ですよ」


「という情報を提供してくれた相手が見つかって」
「うわ…」
「それでその記録係の教えてもらえるところまで教えてもらったんだけども、この場合の贈り物は苦い話で終わってる」
「失礼します」
そういって書類を見ると。


吸血鬼に借りを作った男が、代わりに何が欲しいかと聞いたのならば。
「化け物を倒す武器がほしい」
それを聞いた吸血鬼は志願者を求めた。

「ここまででお腹いっぱいなんですが」
「これでも大分削って作ってくれてるから」
上司は記録係の翻訳文まで読みました。

志願者は家族を殺された女たちだった。
吸血鬼になった後、男の振るう化け物を殺すための武器になった。
が、これらは劣化する。
劣化が始まると、男は憐れに思ったのか、それ以上は使うことなく、けれども武器がなければ戦うことはできないので、吸血鬼になった女たちは増えていく。
男は老年期になり、戦うことから離れたのだが、変化も出来ない吸血鬼の女たちはそのままであった。

「これ、最後ないんですけども」
「記録されてないそうだ」
「記録係の仕事とはいったい?」
「それか、我々には教えられない話なのかもしれないし」
「そっちの方がまだしっくり来ますね。しかし、まだこの女性たちが存命している可能性は?」
「吸血鬼になっているのならばありえるよ、問題としてはその女性たちが何を思っているかかな」
人に対しての感情は友好的なのか、嫌悪感なのか。
「贈り物辞退するのが一番いいのでは?」
「吸血鬼の顔を潰す行為はやめたほうかまいいね、受け取って使わないにするのがおそらく平穏な人生をまだ歩める」
「ほしい人はいるでしょうね」
「いるね、こっちの都合を考えないタイプは多そうだ」
「すごいことになりました」
「本当にそうだ」

もちろん情報はある程度以上に伏せられるが。
「私を呼ばないなんてどうかしているんじゃないか!」
吸血鬼のパーティーは格がある、それこそ今回は料理人の紹介もあるので、そこに呼ばれないということで怒り狂っているものも出ているようだ。
「領地にどれだけ尽くしてきたのか、古い家柄だと言うことがわからないのか」
おとぎ話ならば、こういった招かれざる客がパーティーに怒鳴り込み、死の呪いをかけたりするのだろうが、さてさてここではどうなるのであろうか。
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