浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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私は弱いものの味方ですから

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それはそれは趣味は悪く、気持ちの悪い惨劇が目の前にあり。
次の被害者として舞台にあげられた少年は、その不快さに、吐き気が込み上げてくるが。
「どりゃ!」
片手に剣のおっさんが乱入した。
「大丈夫ですか、こちらはKCJです、助けに来ました」
その後ろから制服の人達がかけよって。
「後は我々にお任せください」
「そうよ、こういうときは大人に任せろよ!ズバーンとやって、ドキュン!終わらせてやるからよ」
不覚にもこのおっさんの言い方に、このおっさん何をいってんだよと、笑ってしまいそうになった。
「ああいう事件に巻き込まれると、気分を悪くなる人、そこから通院する人もいるそうなですが、僕はそうはならなかったのは、あそこで笑ったからですかね、あのおっさんのおかげですよ、もしもお会いしたらお礼を伝えてくれると、こっちの不安和らげるためにあんな感じのこといってたのかなって思うので」
うわ、どうしよう、そういわれたけども、そのおっさんね、いつもそうなの、話とか聞かないで、突撃しちゃうおっさんなんで、誉めるとまた調子に乗るんだよな。
なのでどう伝えるべきか、迷ったという。


「俺はバカのままここまで来たんだよ、そんなバカでもな、誰かを守れるんだよ、だからやるんだよ、死ぬまでな」
おら、来いや!
『世の中に寝るほど楽はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く』
転身!
読み人知らずの狂歌口ずさみおっさんは今日も戦場に赴く。

戦場はいつどこで始まるのかわからない。

怒りと悲しみがあれば、いつ始まってもおかしくはないのかもしれない。

「そっくりでしょ、お嬢さん」
「お嬢さんなんて久しぶりに言われたわ」

『先日このような事が起こりましたので、見かけたら通報ください』

「これは人人形(ひと にんぎょう)あなたの代わりに悲しみや辛さを受け止めるんですよ」

妻が動かなくなった。
「動かなくなったのはいつからですか?」
「一週間ぐらいかな」
その答えを聞かされたとき、のんきに答えた人以外は緊張が走った。
しかし調べてみると。
「いや、これ人じゃないですよ」
「どうしたの、あなた」
そこに奥さんが出てくる。
「これはすいません、私の勘違いだったようです」
しかし調べた人は気づいた。
目の前の奥さんにそっくりな人形はヤツれていたのだ。
「私は弱いものの味方ですから」
どこかでそう呟かれた。

「というのがその後、一回ありまして」
「行政仕事しろよ!」
そう言いたくなる。
「え、奥さんは?」
「それがですね、二回目の通報の後は現れませんでした、ええっとですねこれどうも、一回目にひょっこり現れたのも人形だったんじゃないかと」
「つまり、いつの間にか奥さんは入れ替わってた人形(一体目)→壊れる→通報→新しい人形現れる(二体目)→壊れる→通報」
「奥さん自体は行方不明」
「はい」
はいじゃないでしょ、それ。
「それで破損した人形は一体目は業者に任せたので、二体目も任せようとしたらその前に消えていたそうです」
「裏があるやつじゃん」
「そう思ったのでKCJさんに是非ご協力をお願いします」
頑張れKCJ、余力があるのでこんなやっかいごと持ってこられるんだ、それは余力があるって思われているんだ、そこはすごいことだと思うよ!
「そうですね、とりあえず解決して、うちの前に解決しようとしてできなかったところにマウントを取れると思いましょうか」
そこを幹部が一言で、みなは持ち場についた。

『お水の美味しい浄水センター~お冷やにしてもごくごくしても、美味しい~美味しい!美味しいです!』

「おっちゃんさんはおられますでしょうか?」
KCJからの電話らしい。
はいはい、もしもし。
「おっちゃんさん、実は明日の朝、こちらから冷蔵車が出まして、午後にはそちらにつくのですが」
まさか!
「アレしません?」
心踊る提案やな。
「では…」
ちょい待ち!
そこでおっちゃんさん、誰かに連絡をする。
もしもし、サトちゃんさんはいますか?おっちゃんです!そや、サメのおっちゃんやで、お父さんに変わってな。
と話をした後に。
okや!
「では」
サトちゃんからもそっちに連絡行くと思うんで、よろしく!
「 わかりました」

次の日の午後。

サメともう一人が仁王立ち。
ここは浄水センターの独身寮だが、サメの隣にいるのがサトちゃん、元独身寮の住人。
「何しているんですか?」
お帰り!
「ただいま、おっちゃんはわからないけどもわからなくもない、けどサトさんはどうして」
そこにエンジン音。
「来たか」
そやね。
「えっ?何が」
そこにやって来るのはKCJの冷蔵車である。
「お待たせしました」
はるばる来てくれてありがとうな。
「いえいえ、他の荷物もありましたからね、そっちを優先させてくださればこれぐらいどうってことも」
運転席からおりてきた。
「ではおっちゃんさん、サトさん、アレです」
楽しみやな。
「何?あれか、前に頼んだアイス?」
「今日はケーキなんですよ」
「ケーキ?わざわざ」
ピクッ
サトさんがこっちをギリっとした目で見た。
サトちゃんは甘党さんや、甘党さんの前でわざわざなんていうもんやないし、みんなの分もあるやで。
サトさんはKCJの職員を手伝って、おそらくケーキの入っているプラスチックのケース、『ばんじゅう』というのだが、カートにつけていく。
「どうせでしたら、一緒にどうですか?長旅でお疲れでしょうから」
「えっ?いいんですか?でもこっちはこっちの支部に来るまでは眠らせていただいたので、疲れてませんが、いいんですか?」
功労者を招待せなな。
じっとサトが『ばんじゅう』の蓋を見ている、中が気になるようだ。
パカ!
サメは空気を読まずにあける。
「おっちゃん、何を」
甘い匂いと造形が美しいケーキが並んでいた。
サトさんは深呼吸した。
「あかんは、おれは俺がしっかりしないとボケしかいな…ええ匂いや」
おっちゃんはツッコミに回ろうとした職員に嗅がせるようにケーキを一つ置いたのだ。
関西人なので、ここはノル必要がある、そんな心を巧みに手玉に取る技。
そして見てくださいこのサメの顔、これはやっぱり悪いサメですよ。


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