浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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白銀の風

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あの時の大雪は大変な騒ぎだが、地元の放送局は果敢にカメラを回していた。
何しろ…
「サメが除雪をしてくれてる?だって」
しゃ~
雪を滑るように、シンクロあるチームプレイによって、積もったものがかき出されていく。
「こりゃあすごい」
これはきちんと取材をする必要があると思っていた、それにはインパクトのあるキャッチコピーが必要ではないか…と考えていたが、すぐに浮かぶものではない。
そのうち市民のみなさんも、サメの除雪を一目見ようと、邪魔にならないところに集まってくるのが見えた。
「サメさんだね」
「そやね」
「すごーい」
親子連れがサメ達を見に来た。
「サメさんたちって雪かき上手なんだね」
そこでディレクターはピンと来た。
(雪かき上手…雪かきジョーズ、これや!)
タイトルが決まった。
「それでは次のニュースです、先日大雪の際に除雪協力をしてくださいました、雪かきジョーズさんたちの密着取材になります」
「北海道や青森では空港などに除雪部隊というのはありますが、いかにしてサメさん達は除雪をしているかというと」
イラスト図解が出てきて。
「ジョーズというのは本来サメではなく、顎を意味するのですが、顎を巧みに使って、アスファルトを削らないように雪だけを飛ばしています」
「雪かき後のサメさん達がこちらです、そしてこっちが雪かき前のサメさん」
「お腹の部分がスリムになってますね」
ぺったんこというか、断崖絶壁である。
「そうです、お腹が削れちゃうんです、でも二日ぐらいでご飯食べると戻るんで、安心してくださいね」
ただそれを知らなかった消防士さんが、そんなサメの姿をみて、泣いちゃったりしました。
「あの日は全国で大変な騒ぎでした、雪かきジョーズさんたちのおかげで、被害がありませんでしたが、日頃から防災については考えていきたいものです、それでは明日のお天気お願いします、イマイチさん、よろしくお願いします」

『ここは浜薔薇の耳掃除です』

浄化センターからも浜薔薇に行くのはサメ以外しばらく禁止になったそうなので、おっちゃんは一匹だけKCJのバスにのって、浜薔薇に来ているのだが、移動中は映画を見たり、寝たり、それなりに楽しんでいるようだった。
やっとお年玉スナイパー見れたわ。
年始年末は怒濤であり、そのまま通常のお仕事に戻ったので、こうしてリフレッシュする時間を積極的に作らなければ、ストレスで参ってしまうだろう。
浜薔薇についたら、今回のお土産どうしよう?などとうろうろしていたら、地域限定切手シートの貼り紙を見つけた。
地域限定、その言葉に弱いわ。
おっちゃんは浜薔薇のある九良の中心である寺院、その切手を買った。
赤い蓮花って珍しいデザインやな。
それは未敷蓮花(みふれんげ)、魔を調伏する愛染明王の鞭でもある。
「おっちゃん、お茶どう?今日は蓮のお茶なんだけども、飲んだことある?
飲んでかない?」
炊き出しで配っていたお茶をもらい、そこでごくり!と飲むと、おっちゃんの目から光が消えた。
そこまま出張所に向かい始め。
がちゃん
「あれ?イサリさん、どうしました?」
中には浜薔薇出張所の二人が仕事をしていたのだが。
「何か様子が?」
「月の満ち欠けを計算しなさい」
おっちゃんがテレパシーではなく、肉声であった。
「長短針を月が満ちるときに合わせなさい、あれはその力がある」
そこで外から。
「おっちゃんどこ?遊ぼう」
とおっちゃんを呼ぶ声が聞こえると、目に光が戻り。ああ、ここやと声を出して出張所から出ていった。
「今のは何?」
「要検証ですね」

『ここは浜薔薇の耳掃除です』

「ええっとそれでここに来たと」
九良ダンジョンの館長室。
「飲んでいたのは蓮のお茶と持ち物は?」
「切手でした」
「切手ね…」
館長は軽く調べてから。
「ハピかな」
「ナイル川の神ですか」
「まあ、河川ザメはあっちとも縁は深いし」
文字にヒエロサメグリフを使うものもおりますし。
「川のまとめ役も頭に蓮をかぶるというしね」
これはボスというよりは神官のような役割をするらしい。
「切手は何か意味があるんですか?」
「パピルス、蓮のデザインもあるけども、パピルスってさアラビアガム使うんだけども、日本でもっとも身近なアラビアガムを使うものっていうと切手だから」
「イサリさんは神官なんですか?」
「いや、これはたまたまじゃないかな、メッセンジャーではあるけども」
ただこの後しばらくはおっちゃんの追加調査となった。
「イサリさんって勉強を教えるのすごく上手くないですか?」
院内学級の生徒さんに勉強を教えている動画。
おっちゃんが一匹います、ケーキが三つあります。
黒いブロックでおっちゃんを、白いブロックがケーキだと思って、こっちに置いてください。
「一般常識と時事問題解いて就職してるしな」
ただ時事問題には苦労したらしく。
「問題!」
曲のイントロが流れる。
「この応援歌は誰の応援歌でしょうか!」
ピンポン
「はい、イサリさん早かった」
こんなことをして勉強したと言われている。
「河川ザメはエジプト以外にもギリシャ神話にもあるからさ、アムピトリーテーとか」
「えっ?それはお相手がポセイドンのやつじゃないですか?」
「そうそう」
ポセイドンに結婚してくれと迫られたアムピトリーテー、しかし姉妹に助けられて逃げてしまいました。
そのためポセイドンはアムピトリーテーや姉妹と仲が良かったサメに、探してほしいと頼みましたが。
「ちょっと強引なのはサメ的にNG」
サメ達は探しているふりをしました。
あまりにもサメが探せないので、ポセイドンは次はイルカに頼むと、イルカはすぐにアムピトリーテーを見つけてしまいました。
そのせいでサメは河川に住むようになったとされてますが。
「その後ポセイドンの女性問題でアムピトリーテーは大変苦労することになるので、サメが探さなかったのは正解じゃないかなともいわれているんだよね」
ただ海に残ったものもいて、それはその時に関係しなかったものの子孫だとされる。
「まあ、河川ザメそのものが美貌の王女に恋したゼウスが、その身を白銀の風に変えた、そうして生まれた子とかも言われてるし」
「それペルセウスと混ざってません?」
ペルセウスは黄金の雨に化けたゼウスと王女ダナエーの子である。
「でもまあ、幻想的とされる存在の身近にはこういったことは起こり続けますからね」
ただし何が起きるか限定はされるので、強制転移経験者からすると、またどっかに飛ばされるなどよりはマシとされている。
そしてこれが無事に帰ってきてからも、忘れて暮らしたいが出来ない理由でもあった。
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