浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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三万以上振り込むのも躊躇うわ

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「お待たせいたしました、こちらにお座りください」
「あっ」
「どうしましたか?」
「俺、臭くないですかね?この時期気になっちゃって」
「大丈夫です、こちらへどうぞ」
そうしてカットを進めている最中に。
「先程、臭い話をしておりましたが、何か問題があったんでしょうか?」
「あ~なんかこう、言われて気づいたんですよね、職場で、だから気になって消臭スプレーとか」
「体からだと、おそらくきちんと洗えてないと思いますね」
「えっ?きちんとお風呂入ってますよ」
「お客さんはトイレ掃除とかします?」
「します、独り暮らしなんで」
「トイレ掃除って、汚れの種類によって洗剤違うじゃないですか」
「それ独り暮らしになってから知りました、最初適当に買って、あれ?なんで取れないんだろうなって、そしたら酸のやつ、ビニール手袋と一緒に買って、落ちたとき、ああ、トイレ掃除はこれがいるんだなって」
「そういうことです、その臭いの元の脂、それをきちんと落とすボディシャンプーがあれば違いますよ、後は角栓をきちんと取ってもらって」
パック民はそわそわした、そう、角栓、そのケアをしていない人間にパックをするかもしれない、そうなればドキドキするではありませんか。
(選んでくれ)
(むしろ金は出すぞ)
お金を出してもいいけども、変な人と見られるのが嫌なので、後ろで念じるだけでございます。
「よろしければ、フェイスケアや耳の後ろも洗いますが?」
「せっかくだから、頼みます、けっこう頑張って洗っていたけども、疲れてきたのも事実なんで」
「わかりました、先輩」
「おう!」
「シャンプーお願いします」
「お客様、シャンプーにこだわりはありますか?」
「特にはないです」
「今は期間限定の炭酸のものを使っておりますので、毛穴の汚れも綺麗に落ちますよ」
「ではそれでお願いできますか」
夕暮れサイダーデート共同購入の会の策略により、初期ロット、生産量の5分の1を抑えることに成功した。
メーカーさんは…
「はっ?」
何を言っているのか、何しろこのメーカーさんはメインがサロンなどお店なので、個人を相手にしていない。
「確かに浜薔薇さん経由にはなりましたが」
個人で取引したことがないからわからず、上司に相談したところ。
「販売してもokの許可は出ましたが、掛け売りは無理ですよ」
「もうお金は用意してあります」
帯のついたお金。
「すいません、止めたんですけども、誠意を見せたいと言われたので、一応何かあったときのために警備もできる方についてもらってます」
KCJの東司の姿が見える、おそらく他にもいるのだろう。
「この程度ならば警護の必要はないんじゃ?」
「何かあってからじゃ困るんですよ」
傑さんの心労を減らしてくれ。
「これ…逆に持って帰るまでがドキドキするんですけども」
集金は任されてはいるが、この額はさすがになかった。
「手数料振り込みだとかかっちゃうんですよね」
「この辺の方々にはあまり詳しくはないでしょうが、そういうところがあります」
三万以上振り込むのも躊躇うわ!
上司に来てもらって、警備侍らして、入金にいきました。
「不思議だ、あの時の記憶がそんなにない」
ただ入金はしているし。
「月末の売上をあげてくれたってことで、上司が喜んでおりました」
「それだけですか?」
そこが傑さんであります。
「わかっております、わかっております、売上一位にしてくれたということで、営業所からサンプルなどが今よりもずっとやって来ます」
試供品の配布は売上につながる、相乗効果があると認められると用意されたりしますが。
「この辺は難しいのはわかってます」
「それはもちろん、何しろ、これがずっと続くのかっていう話ですからね、特に聞きましたところ、浜薔薇はこの辺に頼らなくても上手いことやってしまうと」
「おや、お耳に入りましたか?」
「社長、うちのじゃなくて、一緒にラーメン食べるあの社長さんから聞きましたよ、浜薔薇で売上出したいなら、欲は捨てろって」
「あ~それは僕じゃないですね、先輩ですね」
「いいものあったらドンドンいれるからな」
「なるほど」
「僕はそうじゃないですよ」
その言い方の意味はわからないが。
(これでも傑は親切な方なんだよな)
意味がわかる蘆根からすれば、商売のいろはを子供の頃から慣れ親しんでいた傑に、適当なものを営業しようものならば、まずその段階で信頼されない。
(この辺は正直、俺も驚いている)
蘆根は予算とか考えないところがあるが、傑は違う、予算内でも、タモツや蘆根が納得するものを探し出す。
「これよくあったな、この値段で作っているところ、今もあったことに驚いた」
「そりゃあもう探しましたよ」
それは蘆根も探したのだ、それでも「ないか~」と諦めていたところを、傑が「じゃあ、時間があったら見てみますね」で「ありました」と来る。
(俺の目が節穴ってことかな)
相馬という言葉は知っているだろうか?名字でも地名でもあるが、これは馬を見る目のことであり、それは先天的なものとされている。
「良いものを写真、まあ、できれば現物ですけども、見るとわかってくるようになりますよ」
「それが出来たらな」
「こういうのは習えますよ」
「えっ、そうなんだ」
「そうじゃないと、才能ある人ばかり忙しくなるでしょう?興味があるなら毎日ちょっとづつ覚えていけるかもしれませんけども、仕事でどうしても、この期間でならば、業界団体の勉強会に一年ぐらい、そこお弁当がつくし、一日で三千円ぐらいなんで、前にも興味ある人に勧めはしましたがね、結局いってないみたいで」
「そんなもんだな、教えてもやらないなら、身に付かないし、変わらない」
「がっかりしますよ、そういうのを見ると」
「それも一人だ、一人、ガッツがあって乗り越えてくると、それはそれ、これはこれ、覚える気力がある人に教えるために、学ぼうっていう気になるから」
「先輩は色んなところで先生たちにその気にさせてそう」
「まさか!」
いや、蘆根、君は先生たちに大事にされている理由それだから!最初はわからなくても、色々と考えて乗り越えて、そういう教え子がいたことがない達人、職人、一廉ある人物ほど、自分はできるんだけども、他の人たちが来てくれない、孤独を感じるところに。
「先生、見てください、やっとできましたよ!」
と元気よく走ってくるのだから。

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