浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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俺も出世したな

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「後だしになりますけども、それでは山宮さん、管理部門へのプレゼンをよろしくお願いします」
炊き出しの調理の責任者、そういう位置付けでKCJの職員となったのだが。
(管理部門の顔ぶれって、職員でもほぼ知らないんだよな)
それは警備の関係上仕方がないことであり、炊き出しの責任者は予算を管理している管理部門のみなさんに、実際にどういうものを食べているのか、実際に食べてもらいたくと説明を受けたとき、まず大丈夫かな?と思った。
もうそりゃあ、ドキドキですよ。
だって、ほら、KCJってあんなにお金とかガンガン使うから、きっとみなさん舌が越えてて、僕のメニューとか食べたら、安いもの使ってるな、美味しくないとかいっちゃうんですよ!(被害妄想)
ふぅ~
しかし、実はこれが一回目ではない。
「山宮さん、本日のメニューはなんですか?」
「教えてもらった焼き空豆と、本当はこちらはビールがあればいいんでしょうが、それと空豆とトマトクリームのパスタですね、食後は抹茶アイス作りましたから、さっぱりしていただけたらなっては思います」
カラカラカラカラカラ
料理を乗せたカートを運んでいくが、警備がだんだんと厳しくなっていくのがわかる。
この先に管理部門の人たちがいるのである。
なお、防犯のためモザイクと音声の加工はさせていただいております。
「山宮さんが来てから、食べるものに楽しみが増えたよ」
「季節を感じるよね」
音声加工特有の甲高い会話が繰り広げられています。
「それでは始めさせていただきます、焼き空豆はこちらで実際に焼かせていただきます」
事前に許可はとっております。
準備をしながらも、山宮の心の中には。
(普通だ、本当に管理部門の人は普通だ)
モザイクのため、山宮さんの感想だけでご想像ください。高そうなスーツを着ているわけでもない、むしろ地味で目立たない、この人たちがKCJの支部の中でも機密を扱う、外にはでない重要な存在。おそらく外で会ってもそうだとわかることはないだろう。
「ごめんね、山宮さん、わざわざこんな形で作ってもらって、私たちさ、お金の管理とかしちゃっているから、他の人の手前自分たちが使う分も節約が当たり前に義務づけられているんだよ」
「そうじゃないと他のところが、お金で好き勝手やるようになっちゃうんだ、あそこはお金をあんなに好きに使っているんだから、こっちも使うぞって、あ~なんかこれは愚痴だね」
「でもしょうがないですよ、そういう愚痴を他にいうことはできないんですから」
「この間さ、腹立つことあったの、なんかニートに間違われたの」
「うわぁ」
「その時さ、査定終了後だったの」
「それは腹立つ」
こっそり査定のため地味のままいったら、同級生の親にニート扱いされたという。
「こういうときさ、憎たらしくなるね、そういうのとも付き合っていくしか、管理部門にいるならやらなきゃならなくてもさ」
そのため管理部門は他の部署よりも集まりが多い。
「こちらの一食のメニューは予算より50円ほど安く仕上がりました」
「おお、ナイス」
「これなら安心して食べれる」
この人たちは本当にすごい人たちなんだなと、山宮が思うのはこういうところなのである。
(きちんと空豆農家さんにはお金を渡して、予算は僕が計算もした)
そこからさらに検討して、決定案だけを山宮は見ることになったが、メニューの予算は安く仕上げているが、農家さんに無茶な要求しているでもなく。
(どうやってこれ浮かせるポイント見つけたんだ)
と思ったぐらいである。
なお、今回は。
「整備部門に古い農機具と、あとはご自宅の家電の修理、水回りのリフォームもしてもらいました」
「えっ?それだとすごい金額になるんじゃあ」
「月一万円の2年払いです」
「携帯端末の分割払いみたいですね」
つっこみにも困るというのはこういうことである。
「もしも山宮さんがお引っ越しの時に、家電を買い換えるなどがありましたら、一度ご相談ください」
「はい、そうします」
返事はしたが、展開には頭がついていってない。
他の管理部門の人たちは山宮さんを初々しく思った。
(あ~あるある、そういう顔したわ)
(この世界入ってすぐの時ってこうだよね)
「山宮さんは賄いとか作りますか?」
「はい、作りますけども、それは何か?」
「全部そういうの使っていると思ってください」
そうか、その応用で、家電や、不動産や、高額のものを賄えているんだ。
(これ、最初っから知ってたら、人生イージーモードとかなんじゃないの)
途中でそこに気がついたが、他のことを考えると空豆で火傷しそうなので、一回切り替えることにした。
山宮が職員になる前もこういうようなプレゼンと称した会食はあったのだが。
「本日は名店の味を再現しましたカップ麺、味はラーメン好きの職員がお墨付きです、こちらが販売期間終了となり、大変お安くなりましたので、ご用意させてもらいました」
や。
「小学校のバザーで大変美味しいケーキを作っておられるかたがおりましたので、そちらに名刺を持っていき、本日のためにつくってもらいました」
などであった。
そのため山宮が休みの際には。
「本日は山宮さんがお休みですので、久しぶりにこちらの地域では販売されていない麺どころの安旨グルメを用意しました」
そういう感じで対応している。
「山宮さんがいると、俺も出世したなって思っちゃう時があるんだよな」
一人がそんな話をすると、他の人たちも笑いながら同意した。
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