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一キロ三万
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「なんだこりゃ、ずいぶんときたねぇじゃないか」
「だからお前のところに来たのよ、カミさんに頼んだら、私は目が悪いから、浜薔薇さんのところにいってよって」
「なんだい、のろけか?」
「まあ、うちのところは駆け落ち同然だったからな」
「あ~お前はいつもそうだ、死ぬの生きるの、何回聞いたかうるせぇうるせぇ」
「で?耳はどうだ?」
「空き地の雑草みたいにボーボーよ」
「たまにはスッキリしてみてえから、お前さんの技を見せてくれなよ、そのまま年を50才若くしてくれてもいいんだぜ?」
「お前みたいな問題児が、若くしちまったら、俺が閻魔様に怒られちまうよ、お前は放蕩たたって病で、ようやく落ち着いて体を気を付けるようになったんだから、そんぐらいでいいのよ」
(あちらは誰です?)
(タモツ先生の昔からの客だな、今日はお孫さんが車で連れてきてくださったから、しばらくぶりの来店になる)
「まったくどうしてここまで耳の中を放置できますかね」
そういって、カミソリを片手に、毛を揃うとするが。
「ジジイの癖に、耳の中の脂多いな」
「そりゃあ、そこそこ良いもの食ってるからよ、それが俺の耳の中にも出ているんじゃないか?」
「けっ!口の減らないジジイだ」
「お前だってジジイだろうが」
「…よっちゃんの事聞いたか?」
「聞いたわ、聞いたからちょっとな生きてる奴の顔を見たくなったんだわな、この年になると誰が呼ばれるかわからねえ」
「よっちゃんは知らねえそうだ、たぶん伝えたら自棄になるってよ」
「ああ、それはな、あいつは真面目だからよ、俺みたいに適当に生きていけば、何かあってもしょうがねえな、まあ、いっかで大抵の事は終わらせちまう、でもあれだろ、運動とかすればまだ」
「ところがな、骨粗鬆症とか花粉症やらで、自力で歩くのが辛いってよ」
「あらま…神様っていうのは、会ったことはないけどもよ、祈りは捧げたことはあるからよ、なんか、こう…残酷だな」
「本当さ」
「先生、泡立てました」
「ありがとうよ」
「おお、蘆根ちゃん、元気?」
「はい、元気です」
「やっぱり元気が一番だよね」
「おい、耳を洗うから静かにしねえか」
「へいへい、ジジイなもんでよ、話しても話しても次から話したくなる生き物なの」
「だから死んだ母ちゃんに、口から生まれたって言われるんだぜ」
「ええ、うちの母ちゃん、そんなこといってたの?ショック」
「本当にすいません、本当にすいませんって、あん時80近くか、おめぇよ、その年になって親に心配させるってどういうつもりなんだい?」
シャワシャワ
耳の中を洗い始めているので、ここからは一方的にタモツが話始める。
「まったくよ、いつもこれはすげぇから、本当だから、じゃあいってくるわっていって、半年もしねえで着のみ着のまま帰ってきて、毎回毎回呆れられているのに、またやるんだもんな、カミさんと結婚する時も止められたのはお前さんのそういうところ!」
しかし、現在の奥さんは出来た人なので、うまいこと手綱を捕まえた、それでもあちこちに遊び歩いて帰ってこないので、子供たちは女で一つで育てたもので。
「よくそれで家族仲悪化してねえな」
「なんかいってるのはわかるんだけども、耳の中にゴホゴボいって聞こえねえんだ」
「ほら、全部洗い流すから」
お湯を出して。
「汚ねえのが出てきたぞ、これでやっとカミソリ入るわ、本当さ、うちは本当に汚い状態でこられても困るの、きちんと清潔にしている人たちのお店なの、わかる?」
「タモツさぁんよ、わかるけども、それじゃあ、人生が面白くはねえよ」
「あんだと?」
「まあ、でもここはお前の城だ、タモツ城だから言うことは聞いてやるぜ、それで耳の中は次はどうするんだって?」
「カミソリだよ、カミソリ、この細いので、耳に生えた雑草みたいかのを刈り取るんだよ」
「痛くはねえよな?」
「お前は髭を剃ったことはねえのかい?」
「ああ、そういうこと、じゃあお願いします」
「おとなしくしてな、下手にしゃべると危ねえからよ」
あんなにしゃべっていたお客さんが、耳の中にもカミソリを入れらると怖いのか、膝のところを両手でぎゅっと握っているじゃないか。
「終わったよ」
「そうかい、終わったかい、確かに痛くはなかった、痛くはなかったけども、ドキドキしたぜ、あっ!なんてないか」
「そこで耄碌していたら、店すぐ畳んで、奥でイツモ撫でて過ごすに決まっているだろう」
「おお、イツモちゃんね、あのにゃんこ高いんでしょ、グラムおいくら?」
たぶんこの人は知らないで聞いたんだと思う。
そこでタモツが答えてやんなと蘆根を見ると。
「そうですね、一キロ三万ぐらいですかね」
「えっ?何、血統書つきなの?」
「血統書…まあ、そんなもんです、これ毛の引取り価格ですね」
「毛だけで?」
「そうですよ、そっかイツモくんって、その辺にイツモいるんだよね、そっか」
(これは大丈夫ですか?イツモ狙われませんか?)
(KCJの人たちがいるし、イツモはあの系統は…ほら窓を見ろ、客に気づかれずにな)
チラッ
イツモが店内を見ている。
(うわ、あの顔は縄張りに勝手に入ってきた招かれざる客認定だ)
それからたまにイツモの毛を欲しがる人間が来ても。
「いや、それはイツモじゃねえって」
ニヤニヤ
イツモを捕獲しようと間違った猫を追いかけようとする人たちの前にわざと姿を見せて、注意を引いたところに。
浄玻璃の鏡!
おおっとKCJが来たぞ、後はまかせておいた方が良さそうだ。
「だからお前のところに来たのよ、カミさんに頼んだら、私は目が悪いから、浜薔薇さんのところにいってよって」
「なんだい、のろけか?」
「まあ、うちのところは駆け落ち同然だったからな」
「あ~お前はいつもそうだ、死ぬの生きるの、何回聞いたかうるせぇうるせぇ」
「で?耳はどうだ?」
「空き地の雑草みたいにボーボーよ」
「たまにはスッキリしてみてえから、お前さんの技を見せてくれなよ、そのまま年を50才若くしてくれてもいいんだぜ?」
「お前みたいな問題児が、若くしちまったら、俺が閻魔様に怒られちまうよ、お前は放蕩たたって病で、ようやく落ち着いて体を気を付けるようになったんだから、そんぐらいでいいのよ」
(あちらは誰です?)
(タモツ先生の昔からの客だな、今日はお孫さんが車で連れてきてくださったから、しばらくぶりの来店になる)
「まったくどうしてここまで耳の中を放置できますかね」
そういって、カミソリを片手に、毛を揃うとするが。
「ジジイの癖に、耳の中の脂多いな」
「そりゃあ、そこそこ良いもの食ってるからよ、それが俺の耳の中にも出ているんじゃないか?」
「けっ!口の減らないジジイだ」
「お前だってジジイだろうが」
「…よっちゃんの事聞いたか?」
「聞いたわ、聞いたからちょっとな生きてる奴の顔を見たくなったんだわな、この年になると誰が呼ばれるかわからねえ」
「よっちゃんは知らねえそうだ、たぶん伝えたら自棄になるってよ」
「ああ、それはな、あいつは真面目だからよ、俺みたいに適当に生きていけば、何かあってもしょうがねえな、まあ、いっかで大抵の事は終わらせちまう、でもあれだろ、運動とかすればまだ」
「ところがな、骨粗鬆症とか花粉症やらで、自力で歩くのが辛いってよ」
「あらま…神様っていうのは、会ったことはないけどもよ、祈りは捧げたことはあるからよ、なんか、こう…残酷だな」
「本当さ」
「先生、泡立てました」
「ありがとうよ」
「おお、蘆根ちゃん、元気?」
「はい、元気です」
「やっぱり元気が一番だよね」
「おい、耳を洗うから静かにしねえか」
「へいへい、ジジイなもんでよ、話しても話しても次から話したくなる生き物なの」
「だから死んだ母ちゃんに、口から生まれたって言われるんだぜ」
「ええ、うちの母ちゃん、そんなこといってたの?ショック」
「本当にすいません、本当にすいませんって、あん時80近くか、おめぇよ、その年になって親に心配させるってどういうつもりなんだい?」
シャワシャワ
耳の中を洗い始めているので、ここからは一方的にタモツが話始める。
「まったくよ、いつもこれはすげぇから、本当だから、じゃあいってくるわっていって、半年もしねえで着のみ着のまま帰ってきて、毎回毎回呆れられているのに、またやるんだもんな、カミさんと結婚する時も止められたのはお前さんのそういうところ!」
しかし、現在の奥さんは出来た人なので、うまいこと手綱を捕まえた、それでもあちこちに遊び歩いて帰ってこないので、子供たちは女で一つで育てたもので。
「よくそれで家族仲悪化してねえな」
「なんかいってるのはわかるんだけども、耳の中にゴホゴボいって聞こえねえんだ」
「ほら、全部洗い流すから」
お湯を出して。
「汚ねえのが出てきたぞ、これでやっとカミソリ入るわ、本当さ、うちは本当に汚い状態でこられても困るの、きちんと清潔にしている人たちのお店なの、わかる?」
「タモツさぁんよ、わかるけども、それじゃあ、人生が面白くはねえよ」
「あんだと?」
「まあ、でもここはお前の城だ、タモツ城だから言うことは聞いてやるぜ、それで耳の中は次はどうするんだって?」
「カミソリだよ、カミソリ、この細いので、耳に生えた雑草みたいかのを刈り取るんだよ」
「痛くはねえよな?」
「お前は髭を剃ったことはねえのかい?」
「ああ、そういうこと、じゃあお願いします」
「おとなしくしてな、下手にしゃべると危ねえからよ」
あんなにしゃべっていたお客さんが、耳の中にもカミソリを入れらると怖いのか、膝のところを両手でぎゅっと握っているじゃないか。
「終わったよ」
「そうかい、終わったかい、確かに痛くはなかった、痛くはなかったけども、ドキドキしたぜ、あっ!なんてないか」
「そこで耄碌していたら、店すぐ畳んで、奥でイツモ撫でて過ごすに決まっているだろう」
「おお、イツモちゃんね、あのにゃんこ高いんでしょ、グラムおいくら?」
たぶんこの人は知らないで聞いたんだと思う。
そこでタモツが答えてやんなと蘆根を見ると。
「そうですね、一キロ三万ぐらいですかね」
「えっ?何、血統書つきなの?」
「血統書…まあ、そんなもんです、これ毛の引取り価格ですね」
「毛だけで?」
「そうですよ、そっかイツモくんって、その辺にイツモいるんだよね、そっか」
(これは大丈夫ですか?イツモ狙われませんか?)
(KCJの人たちがいるし、イツモはあの系統は…ほら窓を見ろ、客に気づかれずにな)
チラッ
イツモが店内を見ている。
(うわ、あの顔は縄張りに勝手に入ってきた招かれざる客認定だ)
それからたまにイツモの毛を欲しがる人間が来ても。
「いや、それはイツモじゃねえって」
ニヤニヤ
イツモを捕獲しようと間違った猫を追いかけようとする人たちの前にわざと姿を見せて、注意を引いたところに。
浄玻璃の鏡!
おおっとKCJが来たぞ、後はまかせておいた方が良さそうだ。
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