浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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なんだい?残酷かい?

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「蘆根さんよぉ、よろしく頼むぜ」
最近仕事終わりによく来るお客さんがいる。
「また無理しちゃったのか?」
「ここで今やらないと、なにも変わらないだろうから、ここで変えなきゃ、愚痴ってばっかだしな」
そういってお客さんは蘆根にマッサージを受ける。
このお客さんはいかついが、小心者であった。
「じゃあ、胃な」
それこそ、胃の上から軽く押してやる。
「くっ」
我慢はしているのは、小心者で見栄っ張りだからだ。
げっぷが出た。
「夕食は食べたか?」
「軽くだ、蕎麦にした、前に注意されたから、豆腐サラダも足した」
「良し」
そういってまた蘆根は掌で探っていく。
「ストレス酷いだろう?」
「でも浜薔薇に来ているお陰で、なんとか面目はたてるぜ」
「おいおい」
「いや、これはさ、面子の問題でな、責任者が問題投げ出したら、責任者になんてなれやしないのよ、同僚にも部下にもどういう顔をして会えばいいんだ」
根は真面目なのだ。
「靴も変えて、散歩には?」
「ちゃんと出てる、しかし、あの靴すごいな、今まで履いていた靴より、バランスが良くてびっくりしちまった」
「だろ?」
「靴は、見映えよりも、歩きやすさで選びたいところだがな、両立するものはやっぱり高いし、ソールのもちがなあんまり良くねえ、妻子持ちにはきついぜ」
「しかし、奥さんからしっかりマッサージしてくれって言われているんだから、愛されているじゃんか?」
「そりゃあ、惚れて、口説いて、そしたら赴任でこっちに来ることになって、別れるか?って聞いたら、それじゃあ、誰がやりくりするのよって言われたからな」
「本当に奥さんすごいと思うよ、浜薔薇はマッサージとか通いやすい金額にはなっているけども、不調を感じたらすぐとか、疲れが溜まりがちな時期に通い続けるだけのやりくりをしてくれんだから、うちもな、本当、傑には頭が上がらないからな」
「でもさ、こっちの話を聞いてくれて、納得する節約なら悪くはないと思うよ、まあ、そんなのできるかって言われたらそれまでだけどもさ」
「何?また色々あったの」
「聞いてくれる?問題あったら、調査するとか、そういうのって大事だと思うんだけども、前任、それをやらずに思うがままにやったら、赤字だして、強制的に俺がやることになったのさ」
「おいおい、そんなん話していいのか?」
「ああこれはいいやつだ、何しろ金を払ってないから、その場合はいくらでも回収するために、こうして世間話にしている」
「…」
「なんだい?残酷かい?」
「いや、それをさらっとやっている友人がいるから」
「皆無か、世間は狭いよ、学生時代の時から知ってるがね」
ため息をついた、さすがに蘆根には言いにくいことを知っているらしい。
「彼の生き方はどっかで燃え尽きると思ってた、そういうところあるでしょ?」
「ありますね、マッサージとか、全く気にしない時期とかありますし、なんというか、昔から孤高でしたね」
「いくらか、柔らかくなったが、年齢のせいでもないと思うよ、あれは」
「食料支援の寄付もありがとうございます」
「ああ、それは私ではなくもっと上の方に、私は提出しただけ、上が選ばなきゃ無理だしね」
「しかし、KCJの方から言われていたんですよ、固い職業の人たちに指示されなければ、この支援は自己満足で終わるよって」
「それは困るよね」
「…はい」
「ああ、ごめん、部下に話すようにしちゃったよ、不思議だね、マッサージされると、しゃべり方も砕けてくる」
「なんでもオンオフは大事ですよ」
「そうありたいよ、愚痴を言えばキリがないよ、それこそ、なんでこうなる前に準備しておかなかったのに尽きるものね」
「そんなもんですよ」
肩にクリームを塗られ揉みほぐされる。
「相変わらず肩凝りですね」
「気を付けてはいるんだけどもね、あ~温泉行きたい」
「これはベストフレンドの湯じゃなく、孔雀の湯ですかね」
「苦弱の湯ね」
会話では漢字表記は見えず、蘆根にはイントネーションの違いぐらいしかわからなかった。
「あそこは苦弱が正しい字なんだよ、まあ、そんな字じゃ、そしてあんな伝承じゃお客さん呼べないから、そうなったんだけどもね、そうだな、私の知っている限りでは、今何かを変えたいとかそういう時期に行くといいんだ、私なんかは一段落ついたら行くことにはしているが」
「やっぱりほういうのあるんですか?」
「あるよ、そりゃあ、あそこは心労とか抱えちゃうとね、お湯の力に負けちゃうのさ、見たことあるでしょ?」
「ありますね、子供の頃かな、行ったときに、まだ浴場がポツーンとあるだけで、たまに疲れてそこで寝ちゃって、救出されているお兄さんとかいましたね」
「夏のツーリングシーズンなんか、よく起きてたものさ」
休憩室に寝かされている人たちが多かった。
「私はそういうのはあまり信じない方だけども、あるんだなって、やっぱり目の前で見ちゃうとね。でも浜薔薇も孔雀の湯に負けないぐらいそういうのあるからね」
「ありましたっけ?」
「ケットシーがいればそれだけで十分じゃない?」
足の爪の手入れをされながら答えられた。
「俺にはあんまりそういうのわからないんですよね、イツモはイツモだしなって感じですから」
ダンジョンにいって秘密のネズミパーティーをしているケットシーも、普通のカテゴリーにいれてしまうのが蘆根である。
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