浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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俺もまだ未熟だな

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「う~ん」
「なんだ迷っているのか?」
傑さんは迷ってる。
「ヘアミルク、トリートメント系は買うだけ買ってみましたけども、今考えると、もっといれても良かったなかなと」
お客さんが気に入ってくれて、夏までに無くなるかな?という予想を超える早さです。
「この時期にしかセール、アーリーサマーとでもいうのでしょうか、その時にしか安く」
ちょうど外を見たら、ポールサインのてっぺんに猫が乗り、大変いい顔していた。
「あれはいいんですか?」
「猫だからな、それで話してみてくれよ、そこから何かが生まれることってあると思うぜ」
そんなに簡単には…と言いたくはなるが、不思議と手がかりが見つかるから。
「KCJのお二人とも話したんですが、食料支援が必要としている方々、夏だと食べ物の保存とか、下手すると、熱中症の危険が」
「それこそ、駐車場にはったテント屋根の下に、また小さいテントを貼ってさ、トイレとかうちで使っているみたいにすればいいのにな」
「あれ?」
解決したんじゃない?
「確かに、あの屋根の下って、気温がさわやかですもんね」
「水はわき水、シャワーとかも貸してくれるしな」
「じゃあ、僕たちがいないとして考えましょうよ、自衛でどこまでいけるか」
かなり難問である。

『ここは浜薔薇の耳掃除です』

「なぁ、お前金持ちだな」
同級生でも話したことがない奴に永島は話しかけられた。
「俺が金持ちなはずがない」
「えっ?じゃなんで、そのトート持っているんだよ」
その後に続く言葉は不快だった。
「じゃあ、××なのかよ」
それを聞いて、他の奴が中に入った。
「こいつのバイト先がおかしいだけだ」
それで納得したかはしらないが、引き下がった。
「先生には言っておくし、次はねえから」
「悪い、助かった」
「いや、ああいうのは何もしねえのが一番頭に乗る」
永島は座り込んだ。
「悪い、気が抜けた」
ガサガサ
クーラーバックに入っていた飲み物一本差し出した。
「いいの?」
「ああ、何本かいつも持ち歩いてる、このご時世だから」
「あっ、そうか、お前、アレルギーか」
「そっ、だから水筒使えないの、ここら辺を永島なんかは配慮してもらえるので、借りは返せるときに返しておこうと思って」
「借りだなんて、思わなくていいさ、人は大変なときには支えあい、労りあうのが大事なことだろ」
「気持ち悪ぅ」
「ひどくねえ、ちょっと格好はつけました」
「真面目にいってたら、距離置くわ…あっ、こういうことあったってさ、そのトート用意してくれた、傑さんだっけ?言った方がいい」
「うん、それとうちのバイト先にも言うわ、あの人たちこういうトラブル慣れすぎてるし」
「えっ?何クレーマー来たら、対処係とか?」
「う~ん、それとも違う気がするんだよな、肝が据わってるっていうのかな、逆に傑さんは普通、どうしよう、どうしようって、その先輩や先生なんかは、どうした、落ち着け!ってくるんだけども、ええっとカット中や、草刈りしている途中で来るから、なんか刃物持ってる」
「刃物持ってるw」
「浜薔薇だとそんな感じだよ、なんか起こるとしたら傑さんだけがいるときなんだ、波里さん曰く」
あれは勝てそうな、怒鳴れそうな人間を見てそういうことをしている。
「だからだいたい蘆根さんやタモツ先生が来ると終わるんだよな」
でもそうじゃないとき、KCJの二人が来ると、それとはまた違う空気なんだ。
人間はこういうとき、蘆根やタモツのように感情をあらわにするものではないかと、でも波里と東司は冷静というか、ここで冷静で人はいられるものか?と、そう感じるのは自分だけかもしれないが。
(お世話になっているけども、なんかこう)
自分達が知らない一面はあると思っている。
とりあえずのほうれんそう。
「…」
傑は落ち込み。
「なんかあったら、任せろ」
蘆根は勝ち気に答えた。
「なんでしょ、俺の同級生、ヤバいのを敵に回したなって思いました」
その後KCJからも聞き取り。
「次になんかあったら、全力でサポートするから」
「波里、支部にも報告するからね」
そしたら後日給付型の奨学金とか受ける気ありますか?と支部から連絡があったそうだ。
「!?」
とりあえず親に相談。
「給付型だし、生活費の足しにするなら、KCJの人は信用おける方々だし、でもちゃんと説明全部聞いてからにしなさいよ」
「はいよ」
永島からすると、なんかとんでもないことになったなと。
「じゃあ、給付の書類出しちゃう方向でまずは説明からね」
「波里、まずは」
「あっ、そうそう、永島くんが絡まれた理由ね、君が持っているトートってブランド品になったりはするんだよ」
「へっ?」
「まあ、普通に買うととても高い、一万じゃ買えない、さすがは傑さん、それをアウトレットや業者のセールなどで確保しちゃう素晴らしい腕の持ち主だね」
傑にも話は聞いたが、永島のトートはそれ+展示品で最終日まで残っていたのでとても安かったと。
「そんなに」
「こっちはショップ展開はしてないけども、まあ、そういうやつ、君の同級生は、下に見ていたんだろうな、だからあんなこと言っちゃったと」
「でしょうね」
「…」
「…」
「?」
波里と東司の間が妙である。
「ごめん、ごめん、私と東司だと、これはデスゲーム案件とかだからさ」
「うわぁ」
絶対この人たちを怒らせてはいけない。
同級生の不快な言葉、「じゃあ盗んだのか?」よりも、この二人から感じるのは殺気。
(蘆根さんやタモツ先生で済むうちはまだ幸せなんだ、この人たちは途中で終わるということはたぶんないし)
「ん?どうした?」
「殺気漏れてますよ」
永島は冗談でいったのだが。
「あらやだ」
「俺もまだ未熟だな」
なんて三人で笑ったが、永島の胃は痛かった。

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