浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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緑が美しいがゾンビがきつい

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タイトル通り、ゾンビの話があります、苦手な人はご注意ください…


『ここは浜薔薇の耳掃除です』



波里と東司は出張所のお仕事から帰宅中、国道沿いのコンビニに立ち寄ることにして、郊外のコンビニということもあり、大変駐車場も広い。

混んでいることと、このご時勢ということ、それで離れたところに停める。

その時一陣の風が吹いた。

吹いたというよりは、もわっとした空気が通り抜けたという感じ。

「そんな顔するなよ」

「だって…」

「ゾ」

「今年もこの時期がやってきたって感じですよ」

近年、日本の各地で猛暑が観測されているのだが、それにともない、今までゾンビが観測されていない地域にも、ゾンビが現れているという。

「日本のゾンビの討伐方法だけは、理解できませんね」

「連絡だけはしておくか、でどうする?」

「コンビニでさっと買い物して帰りましょう」

「わかった、いつもならば確認はするぐらいはするんだがな」

「こういうとき、戦闘職でなくて良かったなって思うわけですよ」

日本ではゾンビを見つけたら、できるだけそのまま確保しましょうという風に言われている。

それが、波里には信じられない。

「身元の確認のためにもな、そこはしょうがないしな」

冬に凍死した方なんかが、そのままゾンビになり、春が終わる頃には遠くからでもわかるという。

「ゾンビは今の時期の季語だぞ」

「なんでそんなものを」

古典文学にもあるそうで、緑が美しいがゾンビがきつい時期などと日記が残っているようだ。

「ゾンビを文学にするなんて」

ここら辺が異世界経験者の感覚。

東司が奢るぞといってくれたので、波里は新製品をあまり見ずに買い物かかごに入れた。

東司が支払いの電子マネーで支払うとき、ほら貝の音がした。

「相変わらず、戦が始まる感じがしますね」

「いいと思うんだがな」

コンビニから出て、車に乗ろうとした時。

「誰か生ゴミでも捨てたままなんじゃない?」

「本当に嫌な時期だな」

他の車から降りてきたお客さんの、そんな会話が聞こえてきた。

「さっさと行きましょうか」

「ああ」


『ここは浜薔薇の耳掃除です』


「でさ、大変だったの」

「わかった、わかったから、ああそういえば」

男女がふざけあいながら夜道を話ながら歩いていた。

そして横断歩道まで来ると。

「じゃね」

「ああ」

そういって別れて、それぞれが暗い夜道を歩いていく。

ペタ‥

微かな音、しかしそれは這い出る音でもある。

ここら辺は元は水田があった地域で、水路があちこちに走っている

そして今の時期は水も臭い始めるから、まさかそういったものがいるとは思わないだろう。

「私じゃなくて、向こうだったら逃げ切れたかもよ?」

闇夜でもわかる白い糸のようなもの。

シュ

それを縦横無尽に走らせて、形を残したまま捕獲する。

「はい、おしまい」

そういうのはアクアドロップと呼ばれる魔法使いである。

水を操る魔法使いで著名なのは「スターカバー」などであろうが、アクアドロップもなかなかいい仕事をする。

謝礼のでないこともある公共に関わる仕事も引き受けるために、表も裏も情報が入ってきやすいという。

「あっ、 カイム?やっぱりいたわよ」

先程別れた男の方は、知己の皆無 優、連絡すると後はこっちがやると言われる。

「最悪、服が‥」

文字通りの汚れ仕事である。

「洗っても洗っても取れないんだよね」

独特の臭いがします。

そこに車が現れて。

「お着替えをお持ちしました」

メイド服の女性が現れて、着替えを持ってきてくれた。

「ありがとう」

 簡易の更衣室を作ってもらい、そこで着替える。

「こちらはどうしましょうか?」

「燃やしてもいいわよ」

「ではそのように」

焼却処分する際も、専用の焼却場か、訓練を受けた魔法使いがお祓いしながら行ったりする。

「身元の確認が終わったようです」

「さすがに早いわね」

「行方不明時の服装、そのままでしたし、今はカメラが優秀ですし」

「その方がいいた思いますよ、目視で確認するには素人には酷な話かもしれません」

「それはわかる、わかるんだけどもさ‥」

手応えである程度以上の情報を知ることになってしまったが。

「そうね、気分がいい話ではないわ‥よし!これから気分転換するわ、ごめんなさい、あなたにも不快な気分にさせてしまったわ」

「いえ、こういう現場ではそういった心境になりやすいのは存じでおります」

「ああ、迎えが来たわね、ありがとう、それでは良い夜を!」

そのままアクアドロップは迎えの車に乗って帰ったのだが。

(しかし、驚きました。心が荒みそうになっても、自分でとどまって、こちらに笑顔までくださるのですから)

魔法使いは精神が強くないと、自分の魔法で身を焦がしてしまうこともある。

こういった仕事をすると、色んな人がいるのだが、お世辞にも人当たりが良いとは言えない人たちの方が多いのが実情で、ありがとうなんて本当に久しぶりに言われた。

「どうしたんですか?」

運転席の同僚が話しかけてきた。

「そうね、今、私の魔法が戻ってくれたら良かったのになって思ってしまったのよ」

彼女は回復魔法の使い手だった。

助けたいという気持ちから生まれた魔法は、助けてしまって後悔したことがきっかけで消えてしまったのだった。
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