浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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みんなキョトンとするだけだ

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「イツモちゃんってこういうのは着てくれますかね?」
KCJの人が蘆根に聞いてきた。
「着たことないからな」
いわゆる猫のお洋服なのだが。
「どうしたんですか?」
「写真を撮影出来る、ケットシーがいなくて」
用意はしたが…
「イツモはどうだ?」
目が細くなった。
「仕事ならばやるそうです」
「そこまで意思疏通が!」
みんなを食わせるのがボスの仕事なんで。
「本当だ、いやがらない」
「むしろ積極的だ」
KCJでのお仕事が増えました。
「職業にモデルが追加だな」
プニ
可愛いミツバチの衣装に着替えたイツモはスタジオにて撮影にはいる。
ミャン!
この分、尾花と永島のボーナスにするようにイツモから指示がありました。


「ケンさん、心配したんだよ」
「いや~すいません」
「なかなか見ないから、死んでるんじゃないかって」
「そうよ、今日もたくさん食べていってね」
そういってどん!と丼にご飯をもられた。
(ケンさんって間違われちゃったよ…)
と思いながらも、食事をまずはいただくことにする。
「いただきます」
「ケンさんって、名字ってなんていうの」
「熊追です」
「熊追ケンタっていうのか、いい名前だな」
(今さら訂正が難しいかな、これ)
前回の話を読んだ人はよくわかるだろうが、この人の名前は仮名である、そしてケンタの部分はケンタウロスから来ていた。
浜薔薇のイツモから猫のおもちゃ、福猫というマスコットをもらったところ、運気が恐ろしく上がり、大金が転がり込んだ、しかも一回じゃないし、また今もそれは起こり続けている。
それまで浜薔薇の炊き出しを楽しみにして、お腹一杯にしながら仕事をしていた自分が、いきなり生活が変わった。
「仕事柄、お金があるとろくなことにならないというか、それで変わる人間を見てきてるから、信頼おける人間と付き合いたいんだけもさ」
銀行以外は彼がお金持っていることを知らない、それが一ヶ月ぐらい続いた。
「寄付とか調べたけども、顔出しはきつい」
押し掛けてくる人がいては困る。
そんな中でも浜薔薇には顔を出して、ご飯を食べて。
「お兄さん、今日はちょっと豪勢だね」
キッチンカーから地鶏焼きバジルを買ったときにそういわれたとき。
(これはばれるかもしれないな)
ちょっと怖くなった。
そうか、俺はもう炊き出しを食べに来ている兄ちゃんなのか、まあ、他のところで外食するという欲もなかったからいいのだが…
ふにゃ
そこにイツモである。
(ありがとう、きみのおかげで俺はお金には困らなくなったが…)
今度は違う悩みというやつだ。
「何かお悩みでしょうか」
「?」
KCJの職員はいるのは知っているが、話しかけられたことはない。
「いえ、イツモ様がお力になるようにと」
「えっ?イツモ」
ふにゃん
そうだな、イツモが持ってきてくれた福なのだから、ここでもし無くなったとしても、それはそれでいいかなと思ったところ。
「あっ、そうでしたか」
「なんかありましたか」
「それは私よりも管理部の人間が出てきた方がいいと思います、ぶっちゃけうちのセキュリティ部門でもありますから、よろしければそちらでも」
「構いませんけども…」
「私たちってケットシーの命を受けて職員をしているので、力になるようにと言われましたら、全力でお力になることになってます」
この時は行政のような最低限やってくれるならばなと思ったのだが。
「お任せください、その資産を守り、増やし続けましょう」
「えっ?」
職員が専任でつくことになった。
「熊追さんは生徒としてはいいですね、きちんと学び、わからないことも質問する」
そしてボランティアにも理解があった。
「そうですね、寄付分はこの金額でしたらご自由になんですが」
「救急車かな」
「救急車ですか」
「あれに乗ったことあります?」
「ありますが」
「座るの、腰悪いと大変だと思うんですよね」
そして先日、そういう悩みを解決する救急車、新モデルが出たのだが、高いので。
「こういうのかな」
「いいことだと思いますよ」
KCJが中に入ることで、匿名で寄付や寄贈の手続きが出来るのも良かった。
「あと、それと浜薔薇にキッチンカーで、いつも大盛りでご飯を食べさせてくれたおじさん達、キッチンカーあれば他のところでも出展できるかなって」
「なるほど、しかしそちらに関してはうちの整備部門に顔を出してくれればよろしいかと」
言われなくても改造するよ!
「あなた方は」
「大丈夫、はじめての人には人見知りだから」
「へぇ」
すごいよな、管理部門を本気で苛立たせることが出来るのって、悪意のない整備部門ぐらいだけだぜ。
「話を聞くと、まず新車と、これからキッチンカーが増えた、始めたい人のためにDIYのパターンがあれば」
「それっていくらぐらいなんですか?」
「予算くれなくてもやっていいならやるよ」
「書類出してください」
「面倒くさい」
「あなたたちは」
「じゃあ、書類は俺がやりますよ」
「えっ?そんな」
「そういう仕事してきましたからね」
会社は休業中だが、おそらくこのままやめることになるんではないだろうか、会社も大変そうだし。
「ケンタウロスからケンタ…」
「波里くん、そこは笑いをこらえなくていいんですよ」
おかしいもので熊追という名前で通そうとしていたら、ケンタウロスの足じゃなくて良かった。なんていう会話を聞かれた。
「そういえばこの間あの兄ちゃん来てたぞ、そうケンタ、ケンちゃんよ」
その人は酒が入っていたため、ケンちゃんと呼び始め、周囲もいつの間にかケンちゃんで慣れていった。
「せめてリギルとかじゃダメなんですか」
「えっ?それだと足ですよ」
熊追という名前の他の候補であった、ケンタウロスの足、アラビア語ではリギル・ケンタウロス、日本だったらちょっと格好いい名前感じなのだが、管理部のこの人はそちらの言葉も詳しいので。
「リギルよりはケンタウロス足さんでいいのでは?」
感覚としてはそっちの方が格好いい名前らしい。
「私が名前を選ぶと、みんなそういう顔するんですよね」
センスが飛び抜けていいものは仕事にもなるが、そうでなくても気にするな、みんなキョトンとするだけだ。
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