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客としてはもっとやれ
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「しんどいよ、蘆根さん」
これを何とかしてくれと言う。
「すまんね、蘆根さん」
「大丈夫です、仕事ですし」
そういってマッサージの準備を始める。
「原因はわかってるんですか?」
「顔色見て、話を通そうとしているとね、疲れがたまるんだよ」
「なるほど」
よくあるパターンである。
「気分転換することというのはとても大事で、でも気分転換したら、そこで発散させたから遊ぶんじゃなく、そのまま原因を解決しないとダメですからね」
「本当にそうだ、あ~そこ」
「目、かなり疲れてますよ」
「そっか」
肩にある目のツボを揉みほぐす。
「疲れは取れるだけ取っていいですよね」
「いいんじゃないの?」
こう聞くのはわけがある。
「でも面白いというか、珍しいというか、変わっているというか、他のところではそんなの聞かないよね」
「これも難しい話なんですけども、悩んでいることって大事なことなので、それを老廃物として流しちゃうと、大事ではなくなる、執着しなくなるってこともあるんですよ」
「えっ?何、そんなにメンタルにまで来るものなの」
「結構そうですね、もうどうでもいいやってなるというか、もちろんいい意味ですよ、ストレスの原因の一つに執着があるから、それがなくなるので」
「蘆根さんって魔法でも使えるの?」
「使えませんよ、そんな、ただ教わった先生たちはすごかったですよ、そりゃあもう、こんなことできるんだって驚きしかなかった」
「それなら会ってみたいな、あっ、浜薔薇から浮気とか、鞍替えとかじゃなく」
「何人かは現役なので、良ければ教えますよ」
「えっ?いいの?」
「それぞれ得意分野ありますし、俺より上手いならそっちで早くすっきりした方がいいんじゃないかなって」
「蘆根さんって余裕あるよね、それで売上下がったら困るとか考えないの?」
「それこそ二足のわらじだからじゃないですかね、いや、三足かもしれませんけども、スタイリング、耳掃除、マッサージには指名のお客さん来てますし、お客さんは今も増えてますよ」
「傑くんはおしゃれだもんね」
「うちのおしゃれ番頭ですよ、きちんと計算して、安く格好よく決めてくれるんで、学生さんに人気なんですよね」
最初は男子からの相談が多かったと思うが、今では女子からも相談が来る。
「彼氏への誕生日プレゼント、何がいいですか?」
そんな話を店内で照れながらされたら、ほんわかどころか、癒されるだろ!
「なんか最近、浜薔薇に行くと、俺が味わえなかった青春と遭遇する」
お客さんは泣いた。
「智子!」
「誰ですか」
「好きだった女の子らしいよ」
話は戻ろう。
「そうですね、この辺が今いいかなと、予算としてはこういう感じなので、家で見てくださればいいと思います」
もうお客さんが多いので、実際にコーディネートする前の段階は、無料のパンフレットを作り、こっち参考にしてねにしてる。
「人数としては結構な人が見ているんですよね」
浜薔薇のホームページから見れます、随時更新しています。
「でも、まさかこのお店に来てコーディネートやるとは思いませんでした」
「だって世話とか焼いていたからさ、あれは良かったっていうなら、頼みに来るぜ」
彼女が笑ってくれたんです。
「傑は自然にやっているから気づかないかもしれないけども、その段階まで多くのやつらはいかないの」
行かなかった一人が蘆根である。
「学生時代に傑のコーディネート知ってたら頼んでたから」
「僕、その時何歳ですか」
「中学生とかじゃないか」
「先輩はそういうとき何を参考に」
「そういうのわからんから、自分の行きたい場所に」
一番やっちゃいけないパターンかもしれません。
「来たぞ」
「ああ、そろそろ来るっていうか、来店の頻度早い気がする」
「しょうがない、体力と経験がある程度あるから、離してもらえないんだよ」
そういって上着を脱ぐ。
「まったく世の中どうなっちゃうのかね」
「さあ、知らないよ、自分の仕事をするだけだしな」
手慣れたようにマッサージ用の着替えを始める。
「お前もさ、義理堅いよな、今のところにずっといるし」
「何もできない時に拾ってもらっているんだぞ、死に水ぐらいは取ろうと思ってな」
「お前が取るのか?」
「取ることになりそうだからな、これで跡継ぎがしっかりしてくれればいいのだが、遊ぶことに夢中なご様子で」
「それは不味いな」
「おそらくもめた場合はこちらには何も残らんが、元々何もないのだから、それでもいいのかなって、そしたらしばらくゆっくりしたいものだな」
「ゆっくりさせてもらえるかな?」
「ゆっくりさせてもらえるだろ、少なくとも飼い殺しはない」
「理由は?」
「跡継ぎがもう少し真面目であればと、ため息ついてこっち見るような周囲だぞ、比べられる対象をそばに置いておくと思うか?」
「それで真面目にやり直すのならば」
「それもあるかもしれないが、それならばもっと周囲の期待に応えるべきだったと思うぞ、後、本人は気づいていないが、情報ソースは有為だが、上手く隠しているようだが、やらかしているようで」
「調査が入りそうか?」
「調査費用が無駄だよ、あれはやり直しが利かないところまでいってしまったしな」
はぁ~とため息をついた。
「出来ればだが、出来れば、少しは人の目を気にしてほしかったよ」
「継ぐのならば身なりからしっかりしねえとな」
「そうだ、なんで服装が気にされるところであんな格好で客前に…なんかもう考えれば考えるほど、嫌な話しか出ないものだな」
血縁がない仕事や技術を継ぐことの苦労というのを分かち合える者は少ない。
「俺はよく継ぐ気になったなって言われたな」
「お前のところはな」
覚えることはとんでもなく多いから、脱落者がすごい出る。
「この間もさ、疲労回復とか、アンチエイジングとか聞かれたら答えたら」
一回じゃ覚えられないから後にしてください。
「お前は昔からそうだからな」
気になるとそのまま行動に移してしまう方。
「だからこそ、マッサージを、あっ、痛いな、そこは?」
「腰、座りすぎ」
「思い当たりが多すぎる」
「話変えるけどもさ、本音は話をしたらソレデソレデ?って食いついてほしいわけ」
「無理だろ」
「だから傑に言われたよ」
生徒とか弟子とかそういうんじゃなくて。
「お客さんにしているような面白トーク方面で、マッサージの話をしたらと、なるほどとは思ったが、そうなるとしゃべり方の勉強をした方がいいんじゃないかと」
「お前はそのままでいい、というか、どれだけ好奇心で身につける気だ」
「人生勉強っていうだろう?」
「その言葉の使い方間違っていると思うぞ」
でも確かに、どんどんマッサージが上手くなり、朝起きた時がまるで違う。
「友人としては無理するな、客としてはもっとやれだから難しいな」
「それはお前もじゃねえか」
これを何とかしてくれと言う。
「すまんね、蘆根さん」
「大丈夫です、仕事ですし」
そういってマッサージの準備を始める。
「原因はわかってるんですか?」
「顔色見て、話を通そうとしているとね、疲れがたまるんだよ」
「なるほど」
よくあるパターンである。
「気分転換することというのはとても大事で、でも気分転換したら、そこで発散させたから遊ぶんじゃなく、そのまま原因を解決しないとダメですからね」
「本当にそうだ、あ~そこ」
「目、かなり疲れてますよ」
「そっか」
肩にある目のツボを揉みほぐす。
「疲れは取れるだけ取っていいですよね」
「いいんじゃないの?」
こう聞くのはわけがある。
「でも面白いというか、珍しいというか、変わっているというか、他のところではそんなの聞かないよね」
「これも難しい話なんですけども、悩んでいることって大事なことなので、それを老廃物として流しちゃうと、大事ではなくなる、執着しなくなるってこともあるんですよ」
「えっ?何、そんなにメンタルにまで来るものなの」
「結構そうですね、もうどうでもいいやってなるというか、もちろんいい意味ですよ、ストレスの原因の一つに執着があるから、それがなくなるので」
「蘆根さんって魔法でも使えるの?」
「使えませんよ、そんな、ただ教わった先生たちはすごかったですよ、そりゃあもう、こんなことできるんだって驚きしかなかった」
「それなら会ってみたいな、あっ、浜薔薇から浮気とか、鞍替えとかじゃなく」
「何人かは現役なので、良ければ教えますよ」
「えっ?いいの?」
「それぞれ得意分野ありますし、俺より上手いならそっちで早くすっきりした方がいいんじゃないかなって」
「蘆根さんって余裕あるよね、それで売上下がったら困るとか考えないの?」
「それこそ二足のわらじだからじゃないですかね、いや、三足かもしれませんけども、スタイリング、耳掃除、マッサージには指名のお客さん来てますし、お客さんは今も増えてますよ」
「傑くんはおしゃれだもんね」
「うちのおしゃれ番頭ですよ、きちんと計算して、安く格好よく決めてくれるんで、学生さんに人気なんですよね」
最初は男子からの相談が多かったと思うが、今では女子からも相談が来る。
「彼氏への誕生日プレゼント、何がいいですか?」
そんな話を店内で照れながらされたら、ほんわかどころか、癒されるだろ!
「なんか最近、浜薔薇に行くと、俺が味わえなかった青春と遭遇する」
お客さんは泣いた。
「智子!」
「誰ですか」
「好きだった女の子らしいよ」
話は戻ろう。
「そうですね、この辺が今いいかなと、予算としてはこういう感じなので、家で見てくださればいいと思います」
もうお客さんが多いので、実際にコーディネートする前の段階は、無料のパンフレットを作り、こっち参考にしてねにしてる。
「人数としては結構な人が見ているんですよね」
浜薔薇のホームページから見れます、随時更新しています。
「でも、まさかこのお店に来てコーディネートやるとは思いませんでした」
「だって世話とか焼いていたからさ、あれは良かったっていうなら、頼みに来るぜ」
彼女が笑ってくれたんです。
「傑は自然にやっているから気づかないかもしれないけども、その段階まで多くのやつらはいかないの」
行かなかった一人が蘆根である。
「学生時代に傑のコーディネート知ってたら頼んでたから」
「僕、その時何歳ですか」
「中学生とかじゃないか」
「先輩はそういうとき何を参考に」
「そういうのわからんから、自分の行きたい場所に」
一番やっちゃいけないパターンかもしれません。
「来たぞ」
「ああ、そろそろ来るっていうか、来店の頻度早い気がする」
「しょうがない、体力と経験がある程度あるから、離してもらえないんだよ」
そういって上着を脱ぐ。
「まったく世の中どうなっちゃうのかね」
「さあ、知らないよ、自分の仕事をするだけだしな」
手慣れたようにマッサージ用の着替えを始める。
「お前もさ、義理堅いよな、今のところにずっといるし」
「何もできない時に拾ってもらっているんだぞ、死に水ぐらいは取ろうと思ってな」
「お前が取るのか?」
「取ることになりそうだからな、これで跡継ぎがしっかりしてくれればいいのだが、遊ぶことに夢中なご様子で」
「それは不味いな」
「おそらくもめた場合はこちらには何も残らんが、元々何もないのだから、それでもいいのかなって、そしたらしばらくゆっくりしたいものだな」
「ゆっくりさせてもらえるかな?」
「ゆっくりさせてもらえるだろ、少なくとも飼い殺しはない」
「理由は?」
「跡継ぎがもう少し真面目であればと、ため息ついてこっち見るような周囲だぞ、比べられる対象をそばに置いておくと思うか?」
「それで真面目にやり直すのならば」
「それもあるかもしれないが、それならばもっと周囲の期待に応えるべきだったと思うぞ、後、本人は気づいていないが、情報ソースは有為だが、上手く隠しているようだが、やらかしているようで」
「調査が入りそうか?」
「調査費用が無駄だよ、あれはやり直しが利かないところまでいってしまったしな」
はぁ~とため息をついた。
「出来ればだが、出来れば、少しは人の目を気にしてほしかったよ」
「継ぐのならば身なりからしっかりしねえとな」
「そうだ、なんで服装が気にされるところであんな格好で客前に…なんかもう考えれば考えるほど、嫌な話しか出ないものだな」
血縁がない仕事や技術を継ぐことの苦労というのを分かち合える者は少ない。
「俺はよく継ぐ気になったなって言われたな」
「お前のところはな」
覚えることはとんでもなく多いから、脱落者がすごい出る。
「この間もさ、疲労回復とか、アンチエイジングとか聞かれたら答えたら」
一回じゃ覚えられないから後にしてください。
「お前は昔からそうだからな」
気になるとそのまま行動に移してしまう方。
「だからこそ、マッサージを、あっ、痛いな、そこは?」
「腰、座りすぎ」
「思い当たりが多すぎる」
「話変えるけどもさ、本音は話をしたらソレデソレデ?って食いついてほしいわけ」
「無理だろ」
「だから傑に言われたよ」
生徒とか弟子とかそういうんじゃなくて。
「お客さんにしているような面白トーク方面で、マッサージの話をしたらと、なるほどとは思ったが、そうなるとしゃべり方の勉強をした方がいいんじゃないかと」
「お前はそのままでいい、というか、どれだけ好奇心で身につける気だ」
「人生勉強っていうだろう?」
「その言葉の使い方間違っていると思うぞ」
でも確かに、どんどんマッサージが上手くなり、朝起きた時がまるで違う。
「友人としては無理するな、客としてはもっとやれだから難しいな」
「それはお前もじゃねえか」
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