浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
上 下
34 / 972

感覚の翻訳

しおりを挟む
蘆根にマッサージを頼み、後は寝転がるだけなのだが。
(あ~書類作らなきゃならないんだよな、どうしようか)
そういう悩みがマッサージを受ける前にあったのだが、そこは個室マッサージ。
いわゆる癒しのミュージックが流れ、付き合いで目を閉じると。
スヤッ
爆睡した。
そこから目を覚ましたときにお客さんは驚く。
(世界が違って見える)
ここ何ヵ月か仕事のトラブルをなんとかするために駆け回り、休めるときに休む、食べれるときに食べるといった、不規則な生活をしていて。浜薔薇に来たのも今なら浜薔薇にこれるからというただそれだけでやって来たから。
「蘆根さん、今何時?」
時間を聞いたら。まだマッサージを受けてから一時間も経過してないという。
(なんで一時間してないのに、たくさん寝たぐらい気持ちいいんだよ)
驚いてる顔をしてると、その心を読まれたのか。
「光と音と気温とマッサージの力ですね」
「ええ、そうなの」
「体が疲れていると好む暗さとか、音とかがあるので、そういう環境を作ってあげてからマッサージを受けてもらって、そうするとみなさんそのまま寝ちゃうんですけどもね」
それで起きるとスッキリするという。
「あっ、ちょっとトイレ貸して」
「はい!」
蘆根にはたくさんの先生がいるのだが、この環境を作るきっかけになった先生の店というのはやはりすごく。
(異世界な感じだった)
交通量が多い道路がそばにあるのに、その気配も感じさせず、時の流れさえも変わってしまったかのよう。
「魔法ですか?」
「いやいや、ただ人間がどこでそれを感じているかっていうのを遮断するような作りになっているだけだよ、気温は外気と比べてどうすると快適に感じるのかとか、科学とかの測定ってやつだよ」
「へぇ」
「特に今は猛暑とかあるから、昔からの家で何かをするというのは難しいんだよな」
「それはわかりますね」
「直射日光を遮りとか、いろいろ工夫はするけども、最初からわかった上で建築とかリフォームした方がいいんだけどもね」
「どうやって任せる人見つけたんです?」
「マニア」
「えっ?」
「損得よりも己の好みを追求するマニアな、話が止まらない人がいたから、その人に実は今こういうのを作ろうとしているんですけども、どういう伝統技術や新技術があるんですか?って聞いた」
そしたら一人が。
「これは素人さんでもわかりやすいから」
「毎日のようにこれ見てくれ、これもだよって来たんだ」
そこで先生はある程度以上詳しくもなったのである。
「金勘定が入るとそれはやれないとか言って止まる人はいるから、先にある程度知識をもった上で、これはいけるんじゃないかとか、集めていくことになるんじゃないかな」
浜薔薇と蘆根の自宅はご存じの通り職人さんと、ローンなどのお金は商人さんにやってもらいましたが、元々は自分で勉強してからやるつもりでした。
「うちは跡継ぎいないんで、いいさこれぐらい」
商人さんが手伝ったときにそういった。聞きたいがこれ以上理由は聞かない方がいいんだろうなが、蘆根の顔から出ていたらしく。
「これは生き方だからね、締めるところは締めて、使うところは使っていうのは感情ではなく、利益で見なきゃいけないから」
「そういうもんですか」
その割にはお節介というかなんというか。
「この辺の商人の数も少なくなったからな、変なの幅きかせはじめてる、それがいやなんだよ、真面目によく働いてくれる人間が金で困るようにしてはならないんだ、それでは誰も真面目にやってくれなくなるじゃないか」
「…」
「なんだい?」
「いや、申し訳ないなと、俺はそんな真面目じゃないし」
「えっ?」
「えっ?」
朝から店をあけて、夜まで営業し、お客さんが頼ってくれば時間外でもあける。
それで健康状態はどうかというと、マッサージを学んでいるせいで、体型もずっとキープできている。
そして最近では飼いケットシーのイツモの関係で、KCJの活動にも参加、この辺では手薄な社会福祉にも協力的。
「そういえば無料のカットの話とかも聞いたんだけども」
「ああ、あれですか」
就職やバイトの履歴書を作ると思うのだが、その時の写真を撮影する際に、KCJと協力してカットやシェービングをするよというやつである。
「そこのアパートの部屋、元々は民泊のために貸していたんですけども、こんなご時世だからって手放すことにして、そのままKCJが借りることになったんですよ」
二部屋あって、連絡すればお風呂を貸してくれたりします、また急な場合でも駐車場にKCJのキャンピングカーがいるので、職員にお伝えください、すぐに準備をしますよ。
「蘆根くんが一人いると、世の中がいい方向になっているのを自覚した方がいい」
「そうですかね、俺はただこう、やりたいことをそのままやっちゃってるから、申し訳ないなとは思います」
そうなったときの集中力で、職人技を身につけてきたところがあったりします。
(かといって蘆根くんって、教えるときもこれはガツンといけばわかるだろ?系でもないんだよな)
そういう感覚の翻訳はできるのに、自分が教える側に回ると。
「まずはここのツボなんだけども、体がびっくりするから、先にこう撫でてあげる」
本人は説明は苦手といってはいるが、ちゃんと理解できる文章を作れるならば、それでいいのではないかと思うし。
(これで教育もやることになったら、蘆根くん寝る時間もないから、潰れちゃうよな)
周囲からは心配されていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...