浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
上 下
33 / 988

まさかの寝落ち

しおりを挟む
疲れている人が多いのか、個室のマッサージの予約が多い。
「あれか、自宅で仕事しているのか、運動不足なんだろうな」
常連のお客さんの疲れの位置も変わってきている。
「そうでしょうね、健康診断で引っ掛かる人多くなったっていってましたし」
「竹踏みとかしてくれればな、階段の登り降り増やすとか」
「そういうのは習慣なので」
マッサージ類はただ寝ていれば受けれるが、運動は自分の意思で行わなければならないため、始めるのも続けるのも難しいようである。
トットットッ
そこにフェカリスとイツモがやってくるが、フェカリスの上にイツモが立っているというどこかの音楽隊のようであった。
「バランス感覚良すぎるだろ!」
「そもそもこういうのいつ覚えているんだろう」
この二匹は仲良しなので、見ていると飽きないよというのは、フェカリスの飼い主の話である。

常連客のマッサージ。
「あれ、お客さん…自転車やめたんですか?」
「ああ、好きだったけども、やめたな」
ちょっと残念そうにいう。
「自転車だと太ももに筋肉つきますから、そういうの無くなっているんで」
「自転車楽しいんだけどもね…ゆっくりはしばらくは無理だろうな」
何か事情があるようだ。
「代わりにスクワットとかしているみたいですけども」
「よくわかったね」
「バランス変わってますし」
「自転車は乗りたい、ただ精神的に楽しむ余裕がなくて、たまにジムでバイクに乗ると、今で乗ったところ思い出したりはしているんだけどもね」
「仕事ですか」
「ああ、そう、そうなんだ」
グイ
ここで足のツボを押す。
「やっぱり疲れているな」
「副腎ですね、後考え事している人はだいたい
こことか」
ゴリ
「あれなんか音したね」
「ここに老廃物があるとそれだけでしんどくなりますから、とってもいいですか?」
「お任せするよ」
足のツボは頭の下に胃のツボがあり、この人の足を見ていると、繋がっているなと思える老廃物の溜まり方をしていた。
この流し方というのは痛いやり方もあるが、そうではないやり方もある、そうではないやり方は時間がかかった。
ちょっとでも良くなるように、蘆根という男はそういう考えを常に持っている。
「一度開脚してもらえます、足のつけねで老廃物止まっているんで、流したいです」
「えっ?そんなに悪い?」
「座り仕事しているとどうしても」
「難しいもんだね」
開脚してもらった後、軽く左右に回した。
「手の方も見せてもらっていいですか?」
「ああ」
手の方もかたいし、冷たい。
「キーボードとか叩きすぎてすね」
おそらくここで支えているんだろうなという癖の場所が少々悪い。
「そこから、肩に…目と」
「なんか良いところないな」
「まあ、難しいんですよ、この辺」
「ふ~ん」
「場所が繊細すぎるのと、この点だけが悪いとなると、ツボだけでは限界があるし、体全体で回復を補うしかないというか」
「悩んじゃってるみたいね」
「そうですね、今までマッサージしてきた人はこういう疲れ方しなかったので、逆に習いたいですね、こういうときにどうやって癒すのか」
勉強会とか開きたいぐらいである。


「蘆根先輩でもダメってことは、誰がやってもダメなんじゃ」
「そうは思わないけどもよ、色々と調べているけども、仕事の環境をそれぞれが気を付けないと、マッサージでは限界があるっぽくてな」
(あっ、これ諦めてない顔だ)
「まあ、イツモで例えるなら…」
そこで呼ばれたと思い、イツモがとことこやってきて。
「ちょうどいい」
蘆根はイツモをマッサージする。
「やっぱりさ、食事から見直した方がいいというか、いつもの分量で肉がついている感じだな」
そういってイツモの肉のたるみを強調した。
「でもイツモって結構筋肉ですよ」
「寒いと肉がつく感じだな」
毛の生え方も冬になると、伸び方も変わる。
「やっぱりそういう季節に敏感だなっていつも思うよ」
気温が低くなると、被毛の生え代わりために食事の量を増やしている。
「ブラッシングで血行をよくしてあげることも忘れずにって言われたな」
最初はブラッシングの習慣に慣れなかったイツモだが、そこは蘆根の職人技。
「人間へのブラッシングとは違うんだよな、何て言うのかな、義務だと付き合ってくれないから」
終わるとご褒美をあげてましたが、そのうちにあれ?ブラッシングって気持ちよくない?と気付き始める。
「そうなったら勝ちよ」
今ではイツモ用のブラシの準備をすると、目の前に現れる。
「こうやってそれじゃあ、ブラッシングさせてくれっていってな、初めてる」
傑の前で実際にブラッシングを始めるが、気持ち良いのか、目を細めて、たまに蘆根や傑を見ている。
「この時に触りることも慣れていってもらったんだけどもさ」
空いている手で撫でるように。
「痒いところありませんか」
蘆根の空いている手に、イツモは前足をかけている。
ゴロゴロ
そして喉を鳴らし始めた。
(僕がやると絶対にこうならないのに)
我の姿を見て精進するがいい!
イツモはいきなりピタっと止まった。
「寝ちゃったか」
「ええ、まさかの寝落ち」
「まあ、安心するといつもこうだな」
そのまま抱っこされて、イツモは爆睡したままもふられ続けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

耳をかりかり。

りー
大衆娯楽
耳かき小説です。 一人称視点。自分で自分に耳かき。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...