異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた

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本編

人はそれを諦めと呼ぶ ロイside

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「リル、助けてくれてありがとうね!!」

「きゃふ~ん」

目の前で起きた長いようで短い、恐らく時間にして数十秒にも満たないほどの一瞬の出来事。

見えていたが理解出来ずにいる俺を他所に、テンション高くお礼を言いつつリルを抱きしめようと両腕を広げて待つアリアと、大喜びではち切れんばかりにしっぽを振りながら懐へ向かう リル。

喜びのあまり 勢い余ったらしく、リルの突進によりマリアは押し倒されたが、それでも尚、きゃっきゃうふふと 非常に楽しげな声が聞こえる。

リルは大きくなっているせいで 何も知らない奴が見れば 子供が襲われかけてるようにも見えるだろうその光景を前に、呆けるしかなかった。

迷宮内.......それも最下層のボス部屋で呆けるなど、冒険者としてあってはならないことだとわかっていても──......。



「ロイさん?」

どれくらい、呆けていたのだろうか。
気づけばマリアとリルのじゃれあいも終わり、不思議そうな顔でこちらを呼ぶ声に、ようやく意識が覚醒する。


「.........色々ツッコミたいこと満載だか、とりあえず帰るか」

迷宮の最下層のボスがミミックだなんて話は聞いたことがないが、
これで攻略した扱いになっていることだけは、確かだ。

なぜなら──........


「ロイさん、こんな魔法陣、あったっけ?」

「攻略すると出てくるやつだな」

「これで出口に転移する、ってこと?」

「あぁ」

「起動の仕方は?」

「全員が魔法陣の中心にある円の中に入れば勝手に動く」

「なるほどねぇ.......」

「行くぞ」

「はーい」


──こうして、本来とはまるで違う手順で あっという間に 迷宮を攻略したのだった。
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