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薔薇の遺したモノ
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その日、イヴァンは頭を抱えていた。
あまりにも花嫁にするには、幼すぎる少女をウィルソンに託されたせいだ。見た目は少しだけ大人びてはいるし、結婚可能な18歳にはなっている。しかし、温室でぬくぬくと育ち過ぎたせいかあまりにも物事を知らなすぎて、イヴァンは彼女を幼いと思ってしまった。例えば、イヴァンとの寝室を別々にしたら寂しいと言って、イヴァンの部屋にやってきて、一緒に寝てほしいと頼んできたことが数日前にあった。男女が一緒に寝るという意味をわかっておらず、イヴァンは仕方なくそこで彼女にあれこれを教えると、顔を真っ赤にさせながら俯いてしまった。あまりにも無知すぎて困ってしまうのがイヴァンの最近の悩みだったりする。
仕方なく、ウィルソンの元へと向かうとやあやあと言って執務室に出迎えてくれた。
「だいぶ、幼すぎて困っている」
ウィルソンに向かって、そう言うとくすりとウィルソンは笑ってみせた。イヴァンはさらに溜息をつくと、ウィルソンが目の前に紅茶を出してくれた。しかし、紅茶などに口をつける気にすらならない。
「まあ、君に言い寄ってくる女性よりかは圧倒的に幼いよね。だって、純粋だし男女のことなんて何一つ知らないよ。イヴァンだって、逆に彼女が迫ってくるような大胆な女性だったら嫌だろう」
「それはそうだが……ある程度、その……性教育のようなものはどの令嬢も受けているものではないのか」
そう、普通の令嬢が受けている性教育、つまりは男女が一緒のベッドに入るのはそういうことをするためだとかを教わったりという機会に彼女は恵まれなかったのではないだろうかとイヴァンは考えたのだ。見た目は大人びていても、行動も言動も大人の女性というよりは少女に近いからだ。
「まあ、君のことを怖がらないことがまず大事だからそういうのは教えなかったんだよね。だから、これから少しずつ君が教えていけばいいよ。リリアーナは1人で眠るのは寂しがるから一緒に寝てあげたほうがいいよ」
そうかとイヴァンは答えたが、ウィルソンが今まで添い寝をしていたということかという疑問を抱いてしまい、思いっきり眉間に皺が寄ってしまった。それを見たウィルソンは、笑いを堪えるので精一杯だった。
「君って割と嫉妬深いよね。リリアーナは僕と寝ていたんじゃないよ。僕の年の離れた妹と寝ていたんだよ。それに、僕は先王から彼女のお守りを命じられているし、そもそも僕はああいうか弱い見た目の子は好きじゃないんだ」
「むっ……」
「別に悪いって言っているわけではない。リリアーナは可愛いけど、僕には僕の想い人がいるから」
イヴァンは立ち上がると、礼を言うと言ってウィルソンの執務室を後にしようとした。そうすると、ああと何か思い出したようにウィルソンが口を開いた。
「リリアーナは、マカロンと参鶏湯とかいう異国の料理が好きだったから出すと喜ぶかもね」
イヴァンは何も言わずに、そのまま軍の訓練場に戻っていった。
その日、早々と帰宅をすれば、リリアーナが嬉しそうな表情をして迎えてくれた。彼女はイヴァンの腕を掴むと、お疲れですかと聞いてきた。「ああ、湯を浴びてくる」とイヴァンが言えば、彼の部屋で待っていると告げてきた。湯浴みから戻ると、リリアーナがソファに持たれて、スヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
その寝顔は、セレーナと瓜二つでイヴァンは懐かしくなった。よく、書庫で眠っている彼女を見かけて、羽織をかけてやったものだった。そして、必ず、翌日になると書庫のテーブルには羽織と綺麗な容器に入った紅茶の茶葉が置いてあった。
(容姿はそっくりでも、中身は全然違うものだな……)
あまりにも花嫁にするには、幼すぎる少女をウィルソンに託されたせいだ。見た目は少しだけ大人びてはいるし、結婚可能な18歳にはなっている。しかし、温室でぬくぬくと育ち過ぎたせいかあまりにも物事を知らなすぎて、イヴァンは彼女を幼いと思ってしまった。例えば、イヴァンとの寝室を別々にしたら寂しいと言って、イヴァンの部屋にやってきて、一緒に寝てほしいと頼んできたことが数日前にあった。男女が一緒に寝るという意味をわかっておらず、イヴァンは仕方なくそこで彼女にあれこれを教えると、顔を真っ赤にさせながら俯いてしまった。あまりにも無知すぎて困ってしまうのがイヴァンの最近の悩みだったりする。
仕方なく、ウィルソンの元へと向かうとやあやあと言って執務室に出迎えてくれた。
「だいぶ、幼すぎて困っている」
ウィルソンに向かって、そう言うとくすりとウィルソンは笑ってみせた。イヴァンはさらに溜息をつくと、ウィルソンが目の前に紅茶を出してくれた。しかし、紅茶などに口をつける気にすらならない。
「まあ、君に言い寄ってくる女性よりかは圧倒的に幼いよね。だって、純粋だし男女のことなんて何一つ知らないよ。イヴァンだって、逆に彼女が迫ってくるような大胆な女性だったら嫌だろう」
「それはそうだが……ある程度、その……性教育のようなものはどの令嬢も受けているものではないのか」
そう、普通の令嬢が受けている性教育、つまりは男女が一緒のベッドに入るのはそういうことをするためだとかを教わったりという機会に彼女は恵まれなかったのではないだろうかとイヴァンは考えたのだ。見た目は大人びていても、行動も言動も大人の女性というよりは少女に近いからだ。
「まあ、君のことを怖がらないことがまず大事だからそういうのは教えなかったんだよね。だから、これから少しずつ君が教えていけばいいよ。リリアーナは1人で眠るのは寂しがるから一緒に寝てあげたほうがいいよ」
そうかとイヴァンは答えたが、ウィルソンが今まで添い寝をしていたということかという疑問を抱いてしまい、思いっきり眉間に皺が寄ってしまった。それを見たウィルソンは、笑いを堪えるので精一杯だった。
「君って割と嫉妬深いよね。リリアーナは僕と寝ていたんじゃないよ。僕の年の離れた妹と寝ていたんだよ。それに、僕は先王から彼女のお守りを命じられているし、そもそも僕はああいうか弱い見た目の子は好きじゃないんだ」
「むっ……」
「別に悪いって言っているわけではない。リリアーナは可愛いけど、僕には僕の想い人がいるから」
イヴァンは立ち上がると、礼を言うと言ってウィルソンの執務室を後にしようとした。そうすると、ああと何か思い出したようにウィルソンが口を開いた。
「リリアーナは、マカロンと参鶏湯とかいう異国の料理が好きだったから出すと喜ぶかもね」
イヴァンは何も言わずに、そのまま軍の訓練場に戻っていった。
その日、早々と帰宅をすれば、リリアーナが嬉しそうな表情をして迎えてくれた。彼女はイヴァンの腕を掴むと、お疲れですかと聞いてきた。「ああ、湯を浴びてくる」とイヴァンが言えば、彼の部屋で待っていると告げてきた。湯浴みから戻ると、リリアーナがソファに持たれて、スヤスヤと寝息を立てて眠っていた。
その寝顔は、セレーナと瓜二つでイヴァンは懐かしくなった。よく、書庫で眠っている彼女を見かけて、羽織をかけてやったものだった。そして、必ず、翌日になると書庫のテーブルには羽織と綺麗な容器に入った紅茶の茶葉が置いてあった。
(容姿はそっくりでも、中身は全然違うものだな……)
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