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薔薇の遺したモノ
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先日、あまりにも環境が変わりすぎてしまい、ホームシックとなってしまったリリアーナは夜遅くにイヴァンの部屋に行った。どうしたのかと心配する彼に、一緒に寝てほしいと頼めばあからさまに彼は気を動転させていた。そして、言い聞かせるように色々と教えて来た。
『リリアーナ。いいかい? 大人の男女が一緒に寝るということは、子作りをするということだ。それは基本的には夫婦がする行為で、夫婦以外ではしてはいけないんだ。だから、他の男には一緒に寝てくださいなんて言ってはいけないよ。それに、裸だって他の男には見せてはいけないんだ。いいね?』
それはここに来るまで誰も教えてくれることがなかったことだった。だから、リリアーナは凄まじく驚いてしまった。そして、次の日、侍女に頼んで書庫にあるそういったマナーが書いてある本を取って来てもらった。本を開けば、顔が真っ赤になるようなことばかり書いてあって、最初はぱたんと本を閉じてしまった。しかし、これも花嫁修行だと言い聞かせて、再度マナー本に目を通すことにした。
本来であれば、夫となるべきイヴァンが湯浴みを終えて帰って来るまでは起きていなくてはならなかったが、環境が激変しそれに適応するのにだいぶ体力を使ったせいか、ついうとうとしてしまい、眠りに落ちてしまった。
「セレーナ……」
微かに聞こえた女性の名前。ぼんやりとした頭で、見たこともない叔母の名前だということをリリアーナは思い出した。あの日、リリアーナを迎えに来た伯爵も先王も、彼女を見た瞬間にセレーナと名前を呼んでしまったぐらいだ。そのぐらい、叔母のセレーナと容貌が酷似しているということなのだろう。それに、兄のように慕っているウィルソンが昔話してくれたことがあった。
『君のことを最初に見つけたのは、セレーナ様なんだよ。きっとあいつが誰も愛せなくなるだろうと思って、君のことを先王様に教えたんだ……』
セレーナも、きっとイヴァンのことを心の底から愛していたのだろう。だから、彼女に容姿が瓜二つなリリアーナを先王に見つけさせ、イヴァンの妻にするように命じた。けれども、それでよかったのだろうかとリリアーナは思う。
(私はセレーナ様にはなれないもの。見た目は同じでも……)
だから、イヴァンのことは自分なりに大切にしようとリリアーナは決意した。冷酷な将軍だろうが、人の心をもっている。だから、自分が大切にすれば、いつかは心を開いてくれるはずだ。そうリリアーナは思っている。
ぱちりと瞼をあげれば、自分の顔を覗き込んでいるイヴァンと目が合った。
「すまない、起こしてしまったか?」
「いいえ……大丈夫です。ありがとうございます、旦那様」
「そうか。ならば、夕食にしようか」
イヴァンは廊下に控えているメイドたちにいくつか指示を出しに行った。
『リリアーナ。いいかい? 大人の男女が一緒に寝るということは、子作りをするということだ。それは基本的には夫婦がする行為で、夫婦以外ではしてはいけないんだ。だから、他の男には一緒に寝てくださいなんて言ってはいけないよ。それに、裸だって他の男には見せてはいけないんだ。いいね?』
それはここに来るまで誰も教えてくれることがなかったことだった。だから、リリアーナは凄まじく驚いてしまった。そして、次の日、侍女に頼んで書庫にあるそういったマナーが書いてある本を取って来てもらった。本を開けば、顔が真っ赤になるようなことばかり書いてあって、最初はぱたんと本を閉じてしまった。しかし、これも花嫁修行だと言い聞かせて、再度マナー本に目を通すことにした。
本来であれば、夫となるべきイヴァンが湯浴みを終えて帰って来るまでは起きていなくてはならなかったが、環境が激変しそれに適応するのにだいぶ体力を使ったせいか、ついうとうとしてしまい、眠りに落ちてしまった。
「セレーナ……」
微かに聞こえた女性の名前。ぼんやりとした頭で、見たこともない叔母の名前だということをリリアーナは思い出した。あの日、リリアーナを迎えに来た伯爵も先王も、彼女を見た瞬間にセレーナと名前を呼んでしまったぐらいだ。そのぐらい、叔母のセレーナと容貌が酷似しているということなのだろう。それに、兄のように慕っているウィルソンが昔話してくれたことがあった。
『君のことを最初に見つけたのは、セレーナ様なんだよ。きっとあいつが誰も愛せなくなるだろうと思って、君のことを先王様に教えたんだ……』
セレーナも、きっとイヴァンのことを心の底から愛していたのだろう。だから、彼女に容姿が瓜二つなリリアーナを先王に見つけさせ、イヴァンの妻にするように命じた。けれども、それでよかったのだろうかとリリアーナは思う。
(私はセレーナ様にはなれないもの。見た目は同じでも……)
だから、イヴァンのことは自分なりに大切にしようとリリアーナは決意した。冷酷な将軍だろうが、人の心をもっている。だから、自分が大切にすれば、いつかは心を開いてくれるはずだ。そうリリアーナは思っている。
ぱちりと瞼をあげれば、自分の顔を覗き込んでいるイヴァンと目が合った。
「すまない、起こしてしまったか?」
「いいえ……大丈夫です。ありがとうございます、旦那様」
「そうか。ならば、夕食にしようか」
イヴァンは廊下に控えているメイドたちにいくつか指示を出しに行った。
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