3 / 6
薔薇の遺したモノ
2
しおりを挟む
先日、あまりにも環境が変わりすぎてしまい、ホームシックとなってしまったリリアーナは夜遅くにイヴァンの部屋に行った。どうしたのかと心配する彼に、一緒に寝てほしいと頼めばあからさまに彼は気を動転させていた。そして、言い聞かせるように色々と教えて来た。
『リリアーナ。いいかい? 大人の男女が一緒に寝るということは、子作りをするということだ。それは基本的には夫婦がする行為で、夫婦以外ではしてはいけないんだ。だから、他の男には一緒に寝てくださいなんて言ってはいけないよ。それに、裸だって他の男には見せてはいけないんだ。いいね?』
それはここに来るまで誰も教えてくれることがなかったことだった。だから、リリアーナは凄まじく驚いてしまった。そして、次の日、侍女に頼んで書庫にあるそういったマナーが書いてある本を取って来てもらった。本を開けば、顔が真っ赤になるようなことばかり書いてあって、最初はぱたんと本を閉じてしまった。しかし、これも花嫁修行だと言い聞かせて、再度マナー本に目を通すことにした。
本来であれば、夫となるべきイヴァンが湯浴みを終えて帰って来るまでは起きていなくてはならなかったが、環境が激変しそれに適応するのにだいぶ体力を使ったせいか、ついうとうとしてしまい、眠りに落ちてしまった。
「セレーナ……」
微かに聞こえた女性の名前。ぼんやりとした頭で、見たこともない叔母の名前だということをリリアーナは思い出した。あの日、リリアーナを迎えに来た伯爵も先王も、彼女を見た瞬間にセレーナと名前を呼んでしまったぐらいだ。そのぐらい、叔母のセレーナと容貌が酷似しているということなのだろう。それに、兄のように慕っているウィルソンが昔話してくれたことがあった。
『君のことを最初に見つけたのは、セレーナ様なんだよ。きっとあいつが誰も愛せなくなるだろうと思って、君のことを先王様に教えたんだ……』
セレーナも、きっとイヴァンのことを心の底から愛していたのだろう。だから、彼女に容姿が瓜二つなリリアーナを先王に見つけさせ、イヴァンの妻にするように命じた。けれども、それでよかったのだろうかとリリアーナは思う。
(私はセレーナ様にはなれないもの。見た目は同じでも……)
だから、イヴァンのことは自分なりに大切にしようとリリアーナは決意した。冷酷な将軍だろうが、人の心をもっている。だから、自分が大切にすれば、いつかは心を開いてくれるはずだ。そうリリアーナは思っている。
ぱちりと瞼をあげれば、自分の顔を覗き込んでいるイヴァンと目が合った。
「すまない、起こしてしまったか?」
「いいえ……大丈夫です。ありがとうございます、旦那様」
「そうか。ならば、夕食にしようか」
イヴァンは廊下に控えているメイドたちにいくつか指示を出しに行った。
『リリアーナ。いいかい? 大人の男女が一緒に寝るということは、子作りをするということだ。それは基本的には夫婦がする行為で、夫婦以外ではしてはいけないんだ。だから、他の男には一緒に寝てくださいなんて言ってはいけないよ。それに、裸だって他の男には見せてはいけないんだ。いいね?』
それはここに来るまで誰も教えてくれることがなかったことだった。だから、リリアーナは凄まじく驚いてしまった。そして、次の日、侍女に頼んで書庫にあるそういったマナーが書いてある本を取って来てもらった。本を開けば、顔が真っ赤になるようなことばかり書いてあって、最初はぱたんと本を閉じてしまった。しかし、これも花嫁修行だと言い聞かせて、再度マナー本に目を通すことにした。
本来であれば、夫となるべきイヴァンが湯浴みを終えて帰って来るまでは起きていなくてはならなかったが、環境が激変しそれに適応するのにだいぶ体力を使ったせいか、ついうとうとしてしまい、眠りに落ちてしまった。
「セレーナ……」
微かに聞こえた女性の名前。ぼんやりとした頭で、見たこともない叔母の名前だということをリリアーナは思い出した。あの日、リリアーナを迎えに来た伯爵も先王も、彼女を見た瞬間にセレーナと名前を呼んでしまったぐらいだ。そのぐらい、叔母のセレーナと容貌が酷似しているということなのだろう。それに、兄のように慕っているウィルソンが昔話してくれたことがあった。
『君のことを最初に見つけたのは、セレーナ様なんだよ。きっとあいつが誰も愛せなくなるだろうと思って、君のことを先王様に教えたんだ……』
セレーナも、きっとイヴァンのことを心の底から愛していたのだろう。だから、彼女に容姿が瓜二つなリリアーナを先王に見つけさせ、イヴァンの妻にするように命じた。けれども、それでよかったのだろうかとリリアーナは思う。
(私はセレーナ様にはなれないもの。見た目は同じでも……)
だから、イヴァンのことは自分なりに大切にしようとリリアーナは決意した。冷酷な将軍だろうが、人の心をもっている。だから、自分が大切にすれば、いつかは心を開いてくれるはずだ。そうリリアーナは思っている。
ぱちりと瞼をあげれば、自分の顔を覗き込んでいるイヴァンと目が合った。
「すまない、起こしてしまったか?」
「いいえ……大丈夫です。ありがとうございます、旦那様」
「そうか。ならば、夕食にしようか」
イヴァンは廊下に控えているメイドたちにいくつか指示を出しに行った。
1
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる