上 下
69 / 108
一章

領主さまと

しおりを挟む
 呼ばれて出てみれば、ドットたち。
 みんないつもよりほんのちょっと小綺麗になってる。
 ふむ。普段の俺のが綺麗(自意識過剰じゃないぞ)。

「お、髪だけ粧し込んだのか」
「髪だけ言うな」
 そしてまとめてある頭を撫でようとするな。

 玄関ホールに執事服の男と制服姿の騎士?らしいのが礼をとって待ってた。

「皆様、主人のもとにお連れいたします」
 うー、かなり賢かった場に連れて行かれる感。

 外に出れば、豪華な馬車が三台と騎兵??
 なんて言うかほんとアニメの中みたいなんだなぁ。

「何回乗っても慣れん」

 馬車一台に四人で乗ったので〈鋼鉄の拳〉と一緒だ。救助のお礼と王都行きのことで呼ばれてるからランガたちも呼ばれてる。

「あ、ランガたちはもうカナンに戻るんだろ?」
「おう」
「煙草と酒渡しておこうか」
「「「お!?」」」

 まぁタダでくれとか言う奴らじゃないので金貨をたっぷり頂きました。はいー。

「やったなぁ!これでしばらく楽しめる」
「無くなったらジェイル追っかけて買いに行くか!!」
 来ないでくれ。美人のお姉さんならともかくゴツいおっさんに追いかけれれるってどんな罰ゲームだよ。

「ま、気が向いたらギルド経由でも連絡くれや」
「そーそー、配達もやってくれるから注文するぞ」
 配達って、いくらかかるんだよ。冒険者に依頼するやつだろ?

「気が向いたらな」
「えー」
 商売はしてないんだよ。
 
 馬車が停まって外を見ると街を抜けてたらしい。

「ん?」
「あー、領主の屋敷に着いたな」
 は?

 どうやら警備上の問題を心配して、ラシャドル家の子供達をポルドスの領主リューラス侯爵が保護してるらしい。

「領主と昼餐?」
「そだぞー」
 
 馬車の扉が開いて、執事がどうぞと外に誘導する。

 小高い丘に立つどデカい洋館の一角に俺たちは降り立つ。
 執事に先導され、屋敷の中を進み、食堂に案内された。

「ようこそ」
「皆様、私の従姉妹の子供達を無事に連れ帰ってくださってありがとう」

 アンドレ・リューラス侯爵とマリアン夫人が名乗って、俺たちも順番に名乗る。
 マリア夫人は従姉妹であるラシャドル侯爵夫人をご家族で避暑に誘った立場だったので今回のことに心を痛めていたらしい。

「我がポルドスの子供たちも全員は叶わなかったが救出し、悪党どもを捕獲してくれたことを感謝する」

 悪党、シルスファンとミシェル狙いを撹乱したくて他の子も攫ったのか、欲をかいて一気に稼ごうとした結果の馬鹿なのかさっぱりわからないな。
 密かに一人二人と消えただけだったら、逃げ切れただろうに。
 しかも弱かったし。

「正直ドラン経由で国外にか、アトス経由で国内で密かに売買するかと予想していて、まさかポルドスの分岐までの森を使って遠回りするとは」
 警戒されてるんだから分岐狙うのありありのありだろう?
 そう思ったら、街からそれなりに離れている森の中は街道に比べて危険だってヴァロがコソッと教えてくれた。

 街道沿いに通常に出てくる魔物程度なら、Dランクが護衛で行けるとしたら、街から遠い森の奥はCランクでギリギリの魔物がバンバン出て来るみたいな。
 連携も出来ないような冒険者崩れが奥に入るのは無謀らしい。
 野盗なんかはよほど強くないと奥までいかないんだと。

 俺たちが子供達を発見した場所はそれなりに奥。街道に近い道を行ってるつもりが奥に向かう方向に向かっていたんではないかと。

 ドットやランガたちはBランクだし、俺はチートな武器があるから一気に済ませたけど、普通はビビってる場所らしい。
 悪党たちが利用していた道?は昔最短ルートを作ろうとして放棄したような場所なんだと。
 
「ともかくシルスファンとミシェルが戻った祝いだ。堅苦しく思わず気楽に飲み食いしてほしい」
 リューラス侯爵はそう言うが、めっちゃ煌びやかな部屋で、高級な椅子で、カトラリーも手入れの行き届いた銀器で。
 場違いだなぁって思うぞ。
 高級フレンチの店だってここまで緊張しない。

 ドットたちは貴族に呼ばれるのも慣れてるっぽいけど、俺は初めてだし。
 
 ちなみにシルスファンとミシェルはこの席にいない。正式な席には子供は呼ばれないんだそう。

「こちらはパルムスターツ領のワインだ」
「「「おお」」」
 有名なやつらしい。

「「「「乾杯」」」」
 さすがお貴族さまのお勧めワインと言ったところか。ちゃんと透き通った味がする。
 香りも良い微炭酸の白ワイン。

 料理は魚尽くし。
 カルパッチョ、海鮮のトマトスープ?
 ヒラメのポワレやマグロのソテーのようなのが少しずつ出てくる。
 
 胡椒もちょっと使われてるし、柑橘のソースもあった。
 なるほど。
 
 でもちょっと薄味なのは確かだ。素材の味をと言えば良いのか。
 パンは焼きたてなので多少柔らかいかな。

 最後はリンゴの甘煮がパイみたいな生地に載って出てきた。
 砂糖菓子も高級品。
 カスタードクリームのないアップルパイ?上品な味わいだった。

 ドットたちもさすがにワイワイ話すととはなく、侯爵や夫人から時折される質問に答えてる。
 俺にもチラリと他国の貴族かと探りが入ったけど、ドットもランガもやんわり否定してくれた。

 

_________________________


 〈新月の雷光〉
 ドット
 クレイバー
 ドレイク 
 シャート 
 〈鋼鉄の拳〉
 ランガ
 ヴァロ
 ヤン

 ポルドス領
  アンドレ・リューラス侯爵
  マリアン・リューラス夫人

 ギルマス アントス


 シルスァン・ラシャドル
 ミシェル・ラシャドル
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼
ファンタジー
 5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。  やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。  悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!  でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。  成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!  絶対お近づきになりたくない。  気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。  普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。  ブラコンとシスコンの二人の物語。  偏った価値観の世界です。  戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。  主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。  ふんわり設定、見切り発車です。  カクヨム様にも掲載しています。 24話まで少し改稿、誤字修正しました。 大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...