女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる

紫楼

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一章

釣り

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 食後にシルスファンが見送りに来てくれて、少し話せた。
 顔色も良くなってたし、良かったなと。

「王都までついて来てくださると聞きました。よろしくお願いします」
 侯爵家の貴公子なのに丁寧な子だな。
「おう、出発まで体力付けておけよ」
 ドットが言うと「はい」と嬉しそうに答えた。

 ランガたちはここまでなので、「助けてくださってありがとうございました」ときちんとお礼を伝えるシルスファン。良い子や。

 リューラス侯爵と夫人にも挨拶をして、馬車に送られて街に戻った。

「いやぁ、美味い酒だった。ジェイルの酒は貴族の酒かそれ以上ってこったな!」
 高位貴族が飲む酒は管理が良いのと手が込んでる感じだった。
 庶民のは所詮は量産品と言うところか?
 
「それにしたってあんな高級品出てくるとはなぁ」
 
 パルムスターツ領のワインと言うのは、この国の最高峰らしい。ドワーフを雇っているとも言われているそうだ。
 近付かないでおこう。酒は欲しい気もするけど、ネットショップがあるんだ。我慢。

 リューラス侯爵は最大限の感謝を込めてくれていたことになる。〈鋼鉄の拳〉と〈新月の雷光〉と今後もよしなにって意味もあるんだろう。

 みんなでギルドに寄って、バーベキューの場所と集合時間だけ確認して、それぞれ用事を済ますことに。
 俺は海の街はどんな依頼があるのか、依頼表を貼ってあるボードを見た。
 薬草類、近場の魔獣討伐は普通にあって、海の魔獣の依頼もあった。船の邪魔をするのを討伐とか、宴用に大物確保を望むとか。
 ダンジョンで採れる素材の依頼もあったのでそれを確認。
 一週間のうち三日潜ると決めて、浅層で確保できる素材・・・は誰でも受けれちゃうやつなので無かった。朝一番に奪い合う依頼だろうか。
 うーむ。どうせなら依頼を受けたかったけど、無いなら無いで高価買い取り品を探す方向で行くか。

 ギルド内の売店でおっちゃんに海のダンジョンならでは必要なものはあるかとか、質問しつつ話を聞いた。

 ダンジョンは入り口で入場登録をする。万が一の時救助は必要かどうか聞かれるんだそう。予定期間に戻らないと救助隊が組まれて、後から請求が出るって。生きてたら自分かパーティの借金で、死んでたらパーティ資金、足りなかったら親族っていう怖いやつ。
 ようは身の丈にあった仕事を選べったこった。

 俺は少し見るだけって言いながら、ピッケルと網袋と傷薬を買った。特別欲しいものはなかったんだけど、何も用具持たないでダンジョン行った人って思われるのもね。

 まだ二、三時間の余裕があったので釣りをしに海に向かった。
 貸し舟(船頭付き)を頼むと少年かゴツいおっさんの二択だった。おっさんはもう食傷気味なので少年を選んだ。
 おっさんはベテランだろうからいい釣り場知ってそうだけど、ちょっとやってみたいだけだったしな。

「ん・・・任せろ」
 少年はルカと名乗って、竿と餌はって聞かれたので一応借りた。
 道具代込みで二時間銀貨六枚だって。安い。

 三十分ほどで岩礁が近くにある場所に着けた。

「この辺りは種類が多い」
 竿はシンプルな竹のようなの。針は手作り感いっぱいので、モリと網も一応ある。
 自分の竿は持ってるけどリールとかルアーとかが絶対やばい代物だと思って出さなかった。
 ルカは撒き餌っぽい細かい餌を投げた。
 そんなサービスもあるんだ。

「・・・今日は集まりがいいな」

 船の近くをバッァーンと大きな蛇?が跳ねた。

「「!?」」

 え、大物でないんじゃなかったの!?

「なんでシーサーペントが」
「ええー」

 どうやら予想外な出来事だ。ルカが慌ててモリを構えた。まぁ!勇ましい。
 だけど、この小さな船だと転覆の危機だ。

 んー、三叉の槍は出せないので〈雷撃〉だよな。
 俺は船に結界のイメージを作り上げて、〈雷撃〉を使った。

 ズガーン!!バリバリ!!

「ギャァアアアア!!?」
 閃光と衝撃にビビってルカを抱きしめちゃった。
「うわ!なんで自分でやってビビってんだよ」
 ルカに激しいツッコミを受けた。
 いや、初めて使ったしさ。

 結構光ったし!音大きいし!

 海面にはさっきの蛇と大きめなタイや太刀魚みたいなの、小魚が浮かんでた。これもう釣りできないやつ。

「・・・」
 ルカが呆れながら魚を回収しようとしてくれたので、まとめて収納に入れた。

「・・・あんた滅茶苦茶だな」

 少年に冷ややかな目で見られたらオッさん悲しい。

「場所変えよう」
 ありがとう。
「陸近くにするぞ。釣果あまり期待するな」
 うん。すでにいっぱい獲ったしいいよ。

 再び竿を下ろすと釣り船にとこにいたもう一人の船頭と他の漁師が船で近付いてきた。

「おい!何があったんだ!?」
 さっきの雷が響いたのを見て飛んできたらしい。

「シーサーペントが出た」
「「「「ハァ!?」」」」
「大変だ!!討伐依頼出さないと!!」
「何呑気に釣り続行してんだぁ!?」
 ルカが淡々と返事したらおっさんたちが大慌てだ。

「もう倒して回収した」
「「「「はぁ!?」」」」
 結局とっとと港に戻れと叱られて、俺とルカはなぜか正座で説教を受けた。

 早急に報告義務がある海魔獣だったらしい。

 「この人が倒したから問題ない」ってルカが言うとおっさんから拳骨が飛んだ。

 ルカ・・・ちょっと俺に似てるかも。


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