女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる

紫楼

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一章

報告

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 ギルドはそれなりに混雑していたが、ドットが受付のプティさんに二階を示して、そのまま二階に向かった。

「開けるぜー」
「返事してから開けろ」
 ギルマスの部屋はまたもモクモク!
 はぁ、もう人の煙でも落ち着く。

「で、どうだった?」
「あー、ジェイルが襲われた近くには特に何もなくってな。巣を探しに奥に向かった。巣を見つける前にエイプに襲われて、斥候かと思ったら、そいつらは生き残ってただけの連中だった」
 斥候って言うからまだ出てくると思ったもんな。

「エイプがゴブリンの出来立ての巣を襲って相打ちで全滅ってとこだ」
 あれ、出来立ての巣だったのか。結構な惨状だったけど。
「最初の五頭は生き残っていたエイプが餌を探して出ていて運悪く、ジェイルに当たったってな」
 運が悪いのは俺じゃないか?
 
「ゴブリンがまだ少なかったんだな」
 エイプがいなかったら、ゴブリン繁殖して増えていたって考えるとちょっと気持ち悪いよな。

「あー、悪い報告が一つ。冒険者一名死んでいた」
「あん?行方不明届なんぞ出てないぞ」
 ドットがギルマスに持ち帰った冒険者タグを投げる。
「あー・・・隣のドランで出てた名前だな」
 繁々とタグを眺めて溜め息を吐いた。
 ドランは森を挟んで向こうの町で、大きな森は隣接する領地の共同管理地らしい。

「確かにあの辺りならドランからも来るだろうが一人で入ったのか?」
 巣があったのは結構な奥の方だから女一人はかなり無茶だった気がする。
「向こう側で依頼中に逸れてって話だが不明届は一ヶ月前だったはずだ。向こうの捜索隊が洞窟なんかを気付かないでいたならちょっときな臭いな」
 なぜか火サスのオープニングが頭に響く。

「だが死亡の確認は取れたし、向こうに知らせて終わりだ」
 ギルマスが吸っていたシガリロ挟んだ指でトントンと机を叩く。
「向こうに行く仕事があった時にちょっと情報仕入れてくるわ」
 あ、チャンネル変えられた気分。
 隣町のギルドって言うならあまり口出せなくても仕方ないかな。

 話は終わったと下に降りて、依頼調査中に倒した魔獣を解体場に運んでいく。
 大型用は今日は使われていない。
 解体場の雑用係ボックが出て来て笑顔で走って来た。
「ドットさん!大きいのですか?」
「そうでもないけど数がそれなり」
 彼の指示した場所にシャートがアイテムボックスか?からニュルンニュルンと出して行く。

「わぁ~。キモ!ドットさん、クレイバーさん、顔潰しちゃうのやめてってば!!」
「俺は殴る専門だからな」
「いやぁ、だって向こうが盾に突撃するじゃんな」
 頭以外だと内臓潰れて骨が砕けて食用肉に被害が出るから、食べるなら一番支障がない頭で良いんじゃないか?
 
「こら!ボック!コイツらは一番やり良いやり方で狩ってくるんだ、文句言うんじゃねぇ」
 面の解体場からジョズさんが入って来た。

「だってぇ!これ目とか爆発してんですよ?」
 おっとグロ禁止!!
「命懸けでやってんだ。使えるとこがあるだけマシと思え」

 ほとんど〈新月の雷光〉がぶっ飛ばした獲物なので、鹿だの猪だのの分け前は要らないって言ったらデコピンされた。おい!拳士にデコピンは殺しにかかってるよな?
 調査参加代だけでいいと思っていたのにきっちり五等分だった。優しすぎる。

 前回のロック鳥の代金と肉も受け取った。
 結構な金額になったよ。
 
 依頼達成の代金受け取りとポイント付与にために受付のプティさんのところで〈新月の雷光〉と並んだ。
 俺が〈新月の雷光〉と一緒にいるのを羨ましげだったりする視線が痛い。Bランクパーティはさすが人気が高いな。

「あら、ジェイド。ドットさんとお出かけはお勉強になったでしょう」
 ん?俺は撲殺系じゃないのでドットには「豪快だな」って思ったけど、勉強はシャートの魔法の使い方の方だな。
「・・・ソウデスネ?」
 俺が微妙な顔をしたのでドットが俺の後頭部を鷲掴んでギリギリしやがった。

 調査参加費はドットたちが金貨五枚で、俺が金貨二枚だった。依頼料はランク差があるので仕方なし。
 サルもどきや猪の討伐代と素材代で色が付くので調査代が低くても良いのかな?

 夕食時間までまだ少しあったのでギルド前で解散して、俺はぶらり買い物に行くことに。 
 真っ先にタバコ吸いに戻りたかったけど、前に開いてなかった道具屋とか見たいなと。

 ついでに食材も何かないかと覗いておく。
 果物屋で葡萄?と桃?があったのでいくつか買ってみた。こっそり柱の影には行ってマジックバッグに仕舞った。
 今夜はシャンパンか白ワインでも開けようか?

 薬屋の通りに入って道具屋の前に行けば今日は開いてた!!

 明かりが弱い感じで薄暗いのがちょっとドキドキしちゃうんだが、そろーっと扉を開く。
「ごめんくださぁ~い」
 顔だけ先行で店内を覗くと棚にごちゃっと道具が並べられてる。

「客か?」
「はい。どんな物があるか見たいんですけど」
「好きにせい」
 声はするけど姿が見えない。
 許可は得たので店内に入ると明かりが強くなった。

 おお~。自動??

 パッと見、何の道具かわからないものが並んでて、手に取ってみると頭に言葉が浮かんでくる。
 鑑定って便利だね。

 魔導コンロ、タイマーもどきを見つけたので買った。
 自分で作っても良いけど、この世界基準を知りたかったんだ。

 装身具には、毒無効と魔法反射みたいなのがあって目玉が飛び出る値段だった。俺は買えないことはないけど、駆け出し冒険者が持つ物じゃないな。
 会計でやっと店主の爺さまを見れた。
 いやずっといたらしいんだけど、道具の影で見えなかった。一瞬ビクッとしたわ。
「ご贔屓に~」

 夕暮れ迫った町には、呼び込みが始まった。酒場と女の子のお店らしき前にちらほら。
 この世界で初めてセクシーな格好のオネエチャンを見た。(女神除く)

 中堅冒険者や裕福な商人夫婦の男が声をかけられている間に俺はフードを被って足早に宿に戻った。

 夜のお店は何となく苦手だ。





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