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偽神編
閑話・特等席から見る景色 2
しおりを挟む(アンティエーヌ視点)
わたくしは王妃殿下にさまざまな聞き取りをされました。
『想像でリオ様とキスができるか』
『結婚したら侍従を排除したいか』
『侍従に向けた笑顔と同等、またはそれ以上の笑顔を独占したいか』
答えは『いいえ』です。そして次に
『リオ様と侍従が愛し合っているとして、許せるか』
あい、し……
わたくしの顔に熱が溜まっていくのがわかります。
『リオ様と侍従がキスしていても気持ち悪くないか。憎くないか』
『リオ様と侍従が同衾していてもショックを受けないか』
『リオ様が侍従を正妻にしても怒りを感じないか』
答えは ーーー 『はい』でした。
『むしろお願いします!!』と叫んでいました。
「……腐…腐腐腐………アンティエーヌ、まあ…なんて……なんて罪深い…」
王妃殿下が妖艶に微笑みます。
「つ…罪、なのですか?王妃殿下…」
「いいえ、アンティエーヌ。罪ではないわ。でも…神様はお許しにならないかもしれない」
「そんな…!?」
わたくしはなんという罪を…!?
「でもね、大丈夫よアンティエーヌ」
王妃殿下が震えるわたくしの手を握ってくださいます。ああ…あたたかい……。
「神様がお許しにならなくても、わたくしが、わたくしたちが許します」
「王妃殿下…!」
「アンティエーヌ、わたくしが主催する『薔薇を愛でる会』においでなさい。貴女と同じ境遇、貴女と同じ心、貴女と同じ性癖、貴女と同じ罪……それらを共有する同志が集い、薔薇を論じ、愛で、創作し、互いに助け合う会なの」
「薔薇、の……?」
「ウ腐腐……アンティエーヌ、まずは『薔薇』の定義について教えてあげるわ」
「薔薇の、定義…」
そうしてわたくしは『薔薇を愛でる会』の会員になったのです。
それはとても甘美でとても優しく、神様の知らない秘密の花園。爵位などの立場は違えど、会員の中にはわたくしと同じ、お慕いするお方と他の殿方との関係にときめいてしまう罪深い淑女たちが多くいました。わたくしたちはお茶や葡萄酒を頂きながらおしゃべりをします。『薔薇愛でる会』の皆様とおしゃべりしている時だけ、わたくしは『聖女』でも『公爵令嬢』でもなく、『ただの薔薇を愛でる女、アンティエーヌ』になれるのです。
ああ、なんて罪深い ーーー 。
わたくしは祈ります。父なる創神ではなく、『薔薇の女神』に。
ティグレ様とリオ様が早く仲直りしますように、と…。
出会って、仲を深めて、喧嘩して、仲直りして、そしてさらに仲良しに。『定番』ではありませんか!しかもティグレ様は本気で嫌気がさしてお逃げになったのではない。きっと性別とか、身分とか……そんな恋のスパイスにしかならない些細なことでリオ様の元を離れたのでしょう。ならば、わたくしのなすべきことはただひとつ!
ティグレ様が負い目に感じることをひとつずつ取り除き、おふたりを『らぶらぶかっぷる』にすることです!!
そうしてわたくしは、その麗しく寄り添う二輪の薔薇を特等席で愛でるのです!!
幸い、目の前のリオ様は覚悟をお決めになったように感じます。『もだもだ』も『萌え』ますが、やっぱり強引に獲物を追うリオ様は素敵です。
わたくしはうっそりと微笑みます。
ティグレ様、リオ様からお逃げになるのは絶対に無理ですわよ?
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