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偽神編
閑話・特等席から見る景色 1
しおりを挟む(アンティエーヌ視点)
「覚えとけ。お前は俺のものだ」
リオ様がティグレ様にそうおっしゃいました。
なんてこと…!
あまりのことにわたくしの体温が急上昇し、目の前が涙で歪みます。
なんという……なんという感情でしょう。嬉しくて。恥ずかしくて。叫び出してしまいそうな幸福感…!!挑むような、勝ち誇るようなリオ様に、ティグレ様のお顔が一瞬ですが縋るように歪みました。
もっ…萌え…!これが『萌え』でございますね、王妃殿下!!
わたくしは心の師を思い出し、神に感謝の祈りを捧げます。ありがとうございます神様!ありがとうございます世界!!
わたくしがリオ様と出会ったのは15歳の時。何があったかは存じ上げておりませんでしたが、リオ様はとても怒っておいででした。そうして騎士団長に瀕死の重傷を負わせては笑顔で「治してくれ」とおっしゃい……延々とそれが続きました。静かな怒りに燃えるリオ様はそれはそれは恐ろしく、けれど今まで目にしてきた何よりも美しい少年でした。後に聞いたのは、あれは『騎士団の性根を正す稽古』らしいです。そのお稽古が終わり、騎士団長様も騎士団の隊長格の方々もとても澄んだ目をして神殿へ喜捨をくださいました。
『お稽古』が終わり、リオ様は年相応の幼さで笑い、侍従の少年に食事の給仕をされていました。
キュン…!とわたくしの心が跳ね上がりました。
えっ……な、なんでしょう、これ…。神殿でわたくしの世話をしてくださる側仕えにそれとなく聞いてみると、「それは恋でございますよ!」と頬を染めて祝福されました。
……これが、恋…?
確かに書物で見たように、リオ様を思い出すと鼓動が速くなります。侍従の少年に向けた笑顔を思い出すと、何故か恥ずかしくなって走り出したくなります。わたくし、あの笑顔を守りたい。ずっと見ていたい。
わたくし、リオ様のお嫁さんになりたい……!
そう、お嫁さんです。お嫁さんは、そのお方の一番近くにいることにできる地位です。リオ様のお嫁さんになりたい、と言うと、『神殿のお父様』の神官長はうれしそうに、でも困ったような顔をして。『公爵家のお父様』は「まだ嫁にはやらぬ」と臍を曲げてしまわれました。
そんなことはできない。ええ、わかっています。わたくしは第一王子殿下の『婚約者』。18歳になれば白紙になる契約ですが、それからすぐに…というわけにはまいりません。わたくしの『説得』に当たったのは、同じ女性の王妃殿下でした。けれど、王妃殿下は何度かわたくしに聞き取りをした後に嬉しそうに鼻息を荒くして
「アンティエーヌ、貴女には才能があるわ!」
そうおっしゃったのです。
才能?なんのことでしょう?なんの『才能』なのでしょう?
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