【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
上 下
97 / 160
学園編

忘れていた瘡蓋を引っ掻かれるような

しおりを挟む


「……おお、リオ。来ていたのか?今この肉便器に情けをくれてやったところだ」


ニヤニヤと笑いながら、さも今気付きましたよ、といったふうに第一王子が笑った。えー、コレって「キィー!くやちい!うわきものぉ~!」とか言わねえといけねえやつ?こいつの絶対の自信はどこから来るんだろう。


「……はー、をお持ちで?」

「ふっふっふ、褒めるな。何も出ぬぞ?」


褒めてねぇわエロガキャア!キメェんだよ!!なんで!俺の名前呼びながらエルマーとホモセックスしてんのかなあああぁぁぁぁ!?!?


「時にリオ…」

「あっ、俺のことはプレンダーガストとお呼びください」

「………(チッ)…プレンダーガスト、其方、この肉便器と友であったらしいな」

「……………は???」

「どうだ?かつての友が、この私の寵愛を受けている。思うところはないか?」

「おもうところ…」


首を傾げる。トモ?トモダチ?友達?どこに?誰が???エルマーが?第一王子の言葉はわかるんだが理解ができない。……いや待て。エルマーで考えるからいけないんだろう。友達、友達……えーと、なんだ?前世の悪友たち…北篠や南里、西ノ宮が、いけすかねえ男に突っ込まれてりゃ………そりゃあブチ切れるだろうけど…。エルマーだしなぁ?


「特にありません」

「なぁっ!?」

「……っ!リオ…!」


よくわかんねえなあ?なんでエルマーが俺の友達だと勘違いしたんだ?そもそもこの世界で友達とかできてねえ。まじで。『友達』として掠るかなー?と思うのは飲んだくれの錬金術師オズワルドと、文通友達の大聖女アンティエーヌくらいか。お…俺、友達少なすぎィ!!


「……りお…リオッ…!なんで?どうして?」

「なんでって言われても…」

「リオ……た、助けて、くれよ……なあ?お、おれ…う、売られてっ……酷い目にあって…」

「ああ。そういうだろ?」

「刑罰って…!俺はっ!冤罪で陥れられたんだッ!あの王兄に!!嵌められたんだ!実家に!!俺は…!俺は悪くないのにッ!!!」

「…………」


はーん?そういう感じ?


こいつ、2年もこんな生活してるってのに反省の『は』の字もないわけね?それどころか、何が悪かったのか。どうしてこうなったかなんて思いつきもしねぇ。『ニホン』って国の道徳はどうなってやがる。


「エルマー・ゲージ」

「……しんじて…信じてくれよ、リオ…!」

「なにを?」

「え……」

「お前、自覚してんの?なんで俺がお前に『リオ』って呼ばせなかったか。なんで試作品サンプル盗んでんのに咎めなかったか。なんで王兄殿下がお前ごとエルマー家とその指示役を嵌めようとしてんのに教えなかったか…とか」

「リ…リオ…?」

「お前の罪状を確認したけど酷ェもんだったよ。器物破損、恐喝、婦女暴行、詐欺に横領、傷害致死。挙げ句の果てに反社会組織と連んで王族への傷害。裁判じゃあ、裁判長に促された謝罪の言葉もなかったってなぁ?」

「あっ…あれ、は!あの婆さんが王族なんて知らなかった!!普通の使用人の婆さんだと思った!嵌められたって言ってんじゃん!!なんでわかってくれねえんだよ、リオ!!」


 ーーー 2年前。手のひらから血を流していたメアリーばあちゃんを思い出す。とっくに忘れていた瘡蓋を引っ掻かれるような。そんな感覚に眉を顰めた。


「物を壊したのもちゃんと家が弁償したって!恐喝っていうのもちょっと口止めしただけだし。詐欺とか横領とか大袈裟にいうけど、そのくらい誰だってやってるズルだし、女の子とエッチしたのは合意で、最初は嫌がって見せるけど、最後にはアクメ顔で 嬌がってたし……し、死んだのは平民か下位貴族じゃん。俺は侯爵家だし、なんの問題があるってんだよ!?」

「………っ」


ブツリ。となにかが切れた気がした。友人でなくても。エルマーを同じとして扱っていた、最後の感情が。


「……な、なあ?助けてくれよリオ!友達だろ!?俺さ、今レンタルなんだ。普段は娼館で変態客の相手をさせられててさ……リオ、稼いでんだろ?俺を買い取ってくれよ。もう限界なんだよ…。お、俺、リオの愛人になってもいいぜ?リオなら美人だし臭くねえし、金持ちだし、こ、侯爵になったんだろ?それなら愛人に……いや、結婚してやってもいい。社交からは少し離れてるけどすぐに勘は取り戻すし。あ…と、でもたまに女は抱きたいかな?リオは美人だけど男だし、やっぱ俺が愛人作って孕ませて、その子供にプレンダーガストを継がせれば……」

「黙れ」

「ぎゃぷ!?」


エルマーの顔を鷲掴みにする。ウッ……なんか汚れててヌルヌルするぅ!!


「ごめんな、エルマー。俺が悪かった。お前は人間じゃなかったんだな。お前が獣以下だとよく理解した。人間の括りに当て嵌めようとした俺の間違いだ。 ーーー 二度と俺の目の前でそのくせぇ息をするんじゃねえ」

「ンン…!あがっ…!?あ、あ……!?!?」


掴んだエルマーをそのまま生徒会室の隅に投げ捨てる。派手な音がして備品が壊れたが、汚ねえモンを見せた詫びとして第一王子が支払ってくれるだろう。汗と唾液と精液で汚れた手が堪らなく不快でブンブン振ってると、慌ててティグレがハンカチで拭きに来てくれた。……が、洗いたい。今すぐ石鹸で3回…いや最低5回は洗いたい!!


「……王子殿下?」

「ふぉっ!?は、ははははは…はいぃっ!!」


第一王子が素っ裸マッパで直立不動。うん、正しい。不快で汚ねえモンを見せられて、手も他人の汚物で汚れて、俺は今非常に機嫌が悪い。


「このような低俗なで遊ぶと逸物が捥げますよ?」

「ヒッ…!?ひぇぇ…」

「王子殿下は私に「思うところはないか」とお聞きになりましたね?確かに今、思いました。 ーーー 次、汚ねぇモン見せやがったらちょん切るから覚悟しとけ?」



しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...