【完結】リオ・プレンダーガストはラスボスである

とうや

文字の大きさ
上 下
96 / 160
学園編

奉仕刑は性奴隷含む

しおりを挟む
「……」「え? なに?」

「武智君って、安川さんみたいな子が好みなの?」「へ? なんで?」

「だってジロジロ見てるよ」

 ずっとジト目の疋田さんが何だか膨れながら俺の隣を歩く。前には雄介の腕に絡みながら明らかにイチャイチャしている安川さん。って、いやいや疋田さん、それは壮大な勘違いだ!

「違う違う。雄介があんな風に女の子と一緒に歩くの、初めて見るから驚いてただけだよ」

「……ふ~ん」「いや、ほんとだって!」

 って、なんで俺言い訳してんの? 疋田さんが何だかご機嫌斜めだから? というか、なんでご機嫌斜めなの?

「ああいう事してほしい?」「ひょへぃ?」

「アハハ! 何その返事」そして笑い出す疋田さん。突然とんでもない事言うから変な声出ちゃった。さっきの電車の中でもそうだけど、時々大胆な事したり言ったりするんだよね? きっと経験皆無の俺をからかってんだろうけど。

 ……ん? そういや疋田さんって、恋愛経験ってどうなんだろ? 聞いた事ないや。まあ俺チキンだし? 聞けるわけないんだけどね。いやそこは頑張れよって? ……はい、仰る通りです。

 そして疋田さんに腕を組まれるってのをちょっと妄想してみる俺。こんな可愛い子が俺に縋り付く訳だろ? やばいな。色々やばいよな。よく知らないけど、確か気持ちいいのが当たるんだろ? ……ああ、是非お願いしたい。正直、雄介が相当羨ましい。あれがカップルっていう関係なんだなあ。こうやってじっくり見る機会ないから知らなかったけど。

 そんな妄想してたら、ふと、前を歩く雄介と安川さんとの話し声が聞こえてきた。

「分かってるよね? 今日は明歩って下の名前で呼ぶの」「わぁーってるよ」

「あいつのためにな。お前のためじゃねー」「そこ! いちいち言わなくていいじゃん! ほら、呼んでみ呼んでみ?」

「……明歩」「キャー! もう一回もう一回!」

「うっせぇ。もう終わりだ」「ちぇー、ケチ。でも今日は嬉しい! 雄介とデートデート!」

 明らかにイチャイチャしてんなあ。声が丸聞こえなの気付いてなさそう。てか、普段はあの二人、上の名前で呼びあうんだ。カップルってそういうものなん?

 で、二人の様子を後ろから見つつついて行ってたら、雄介が首だけこっちに向けて声かけてきた。

「おい悠斗。どうするよ?」「え? ああ、そうだな。何か乗るか」

 そうだった。俺達遊園地に来てんだ。何か乗らないとな。何にするかなあ。女の子と一緒に遊園地で遊ぶってどうすればいいのか。そうやって悩んでると、安川さんの一声。

「はーい! アタシは雄介とウォータースプラッシュ乗りまーす!」「おい、勝手に決めんな」

 雄介の反応に、えー、いいじゃん、とむくれる安川さんだが、いいんじゃない? 最初の乗り物としては。

「じゃあそれにするか」「え? でも服濡れない?」

「この遊園地、濡れ防止用のポンチョ貸してくれるんだって」疋田さんが気になってたので説明する俺。なんで来た事ないくせにそんな事知ってるんだって? ふふん、実は事前にネットで調べておいたのだ! 女の子と一緒に遊ぶ方法は雄介に任せるとしても、それくらいなら俺でも出来るからね。 

「じゃあ、乗ってみようかな」それを聞いた疋田さんも興味ありげに答える。

「悠斗が行くなら行くか」「ちょっとー? アタシが提案したの!」

 あーうっせー、とか文句言いながらも遊園地の地図を広げ場所を探し、安川さんをエスコートする雄介。つか、あいつ何だか俺といる時と雰囲気違うな。男らしい? それもちょっと違うな。寧ろ何だか偉そうだ。

「どうしたの?」「うーん、雄介が俺の知ってる雄介じゃない」

 そうなの? と不思議そうな顔をする疋田さん。そういや疋田さん、雄介とは余り面識なかったな。こないだバイト先に来たのが初対面だもんな。

 とりあえず俺達は、ウォータースプラッシュがある場所へ向かう事にした。

 ※※※

「結構乗り物好きなんだね」「ごめんね。あんなに楽しいとは思わなくて」

 手を合わせてごめんねポーズをする疋田さん。そんな可愛い仕草、どうやって身につけたんですかね? しかし言う通り、確かに疋田さんは珍しくキャッキャ騒いでた。普段おとなしいのにあんなはしゃぐんだな。ウォータースプラッシュに乗ったその後も、定番のジェットコースター、まあこれは本格的な縦横二回転とかするのはさすがに怖いって言うんで、ミニコースターだったけど、それでもキャッキャ言いながら乗ってた疋田さん。他にこれも定番のコーヒーカップ。あれ、あんな速く回るの? ちょっと酔っちゃって気持ち悪くなったよ。疋田さんは平気っぽかったけど。

 とにかく、あんな無邪気にはしゃぐ疋田さん、初めて見た。とてもキラキラしてて、でもとても可愛くて、本当楽しそうで。普段のおとなしい雰囲気もいいけど。素の疋田さんを見てるみたいで……惚れ直しちゃった。

 そして今は昼時なので、遊園地内にある、外に席が沢山あるフードコートみたいなところで、皆で昼食を食べ終わったところ。

「ねえねえ。写メ撮ってよ」「え? あ、了解」

 突如向かいに雄介と並んで座る安川さんに声を掛けられ、スマホを受け取る俺。当然雄介とのツーショットだ。

「おい雄介。態度悪いぞ」「え? そうか?」

 なんでかふんぞり返ってる雄介。俺といる時はこんな格好しないのに。なんでだ?

「つーかお前、なんでそんな偉そうなん?」「いや、まあ……」

「そーそー! 武智君もっと言ってよー!」そう叫ぶ安川さんと、面倒臭そうな顔をする雄介を見る。ははーん、分かったぞ、こいつ。

「安川さん、こいつ照れてんだよ」「え? そうなの?」

 びっくり顔の安川さん。対象的に俺に指摘され顔を真っ赤にするイケメン三浦君。やっぱり図星だったか。

「おい悠斗。お前余計な事言うなよ」「おー怖っ。俺にそんな突っかかる雄介初めて見たぞ」

 チッ、と舌打ちする雄介。普段はこんな風に俺に突っかかって来る事ないんだけどな。もし喧嘩になったとしても俺に勝てないの分かってるからね。まあならないけど。だからこんな態度取るのは、雄介が恥ずかしがり屋のカッコつけだからだとすぐに分かった。俺も今日初めて知ったけど。こいつ、女の子いるとこんな態度取るんだな。女慣れしてるから、ていう訳じゃなさそう。

 雄介の新しい一面を見れて、ちょっと面白いと思った俺。でも、照れ隠しとは言え、なんでこんな態度取るんだろ?

「とりあえず写メ撮ってしまえば?」横で様子を見ていた疋田さんが、そこで声を掛けた。それを聞いた雄介は仕方なさそうに安川さんに寄る。安川さんも嬉しそうに顔を寄せる。パシャリと数枚写メを撮ってから、

「んじゃ武智君、スマホ貸して」「え?」

「え? じゃないでしょ。二人も撮ってあげる」

 え? え? いや、疋田さんと俺? つい驚いて見合わせる俺達。そこでイケメン三浦君がニヤリ。

「ほら悠斗。疋田さんに恥かかせる気かよ。もっと寄れよ」

 いいからほら、と立ち上がり俺達のところまでやってきてグイ、と寄せる雄介。しまった、つい狼狽えてしまい隙だらけで抵抗できなかった。疋田さんと距離が近くなってしまう。そんな状況になっちゃったので、疋田さんも恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いてる。

「雄介やめろよ。疋田さんに迷惑だろ」「え? 疋田さん、迷惑か?」

「……迷惑、じゃないよ」ポツリと小さな声で返事する疋田さん。迷惑じゃないって言ってくれた。良かった。嫌じゃないんだ。

 ほぉら見ろ、とニヤニヤしやがる雄介。その笑顔が無性に腹立つが正直心の中では感謝してるから言い返せない。今度は安川さんが、はい撮るよー、と声を掛け、俺のスマホでパシャリと撮った。

 ※※※

「やっぱこうなるよなあ」「アハハ……」

 やや諦め顔な俺と疋田さん。。雄介と安川さんは観覧車のゴンドラの前で並んでいるので、俺達はその後ろで順番待ち。

 もう閉園間近なので、遊園地デートの定番中の定番、観覧車に乗ろうとなって並んでいる最中。今日は遊園地で散々遊んだ。も一つ定番のお化け屋敷も行った。疋田さんが俺にくっついて離れなかったんだ。きっと無意識だったんだろうけど、俺はそうじゃない。意識しまくりで心臓バクバクでお化けどころじゃなかった。まあ、お化け屋敷、怖いと思った事ないんだけどね。あれが嫌なのは不意打ちでびっくりさせるとこなだけだし。

 ゴーカートも乗ったけど、助手席には疋田さん。そりゃそうだ。だって雄介は安川さんとずっと一緒で離れないし。そしたら俺達が自然にペアになるわけだ。更に俺達に遠慮せずイチャイチャする安川さん。よくもまあ、俺達これだけ無視できるよな、と感心したけど、そのおかげで、疋田さんとも相当距離が近くなったと思う。

 何にせよ至福の時間だった。それがもう終わろうとしてる。

「綺麗……」うっとりした表情で、遠く山あいの奥に落ちていく夕日を眺める疋田さん。そうだね、と答えながら俺も同じ場所を見つめる。辺りは徐々にオレンジ色に染まっていく。

「んじゃ、お先にー」と嬉しそうに安川さんが、相変わらず雄介の腕に絡みつきつつ観覧車のゴンドラに乗っていった。安川さんは雄介と二人きりになりたいからってそう提案した。まあ言われなくてもそうなるだろうと思ってたけどね。て事は、当然俺は、疋田さんと二人きりでゴンドラに乗る事になる。あの狭い空間に疋田さんと二人切。今日最も緊張してしまう俺。


「き、緊張しちゃう」「ハハ、実は俺も」

 疋田さんも緊張してるのか。俺だけかと思った。そしてすぐに観覧車のゴンドラがやってくる。後ろには他のお客さんもいるから、グズグズするわけには行かないし、二人して照れながらいそいそと乗り込んだ。




しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

処理中です...