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王太子妃様のお名前さえきちんとお伺いしていなかったのです
しおりを挟む華々しい乾杯の音頭で披露宴が始まりました。わたくしはセオドア様の腕に掴まりながら笑顔を振りまきます。
最初はルネライト両陛下、それから帝国の皇帝陛下と第四妃であるお姉様。聖王国の聖女であるプリムちゃんに隣国の代表で第三王子様。何故か第三王子様は「お幸せに!」と言いながら号泣されていました。不思議ですね?
「ねえセディー!もういいでしょ!あっちに行きましょ!私、ダンス踊りたぁい」
挨拶回り途中、わたくしを押し退けて王太子妃様がセオドア様の腕にお胸を押し付けました。
あらあら…まあまあ?ああ、そうでした!わたくし、そういえばとんだ失礼をしておりましたわ。
王太子妃様に向かいゆっくりと、最上級の淑女の礼を取ります。
「ご機嫌麗しく存じます、王太子妃様。わたくしはエマ。エマ・ルネライトにございます」
「………はあ!?」
……えっ?
あら?
だってわたくし、王太子妃様が男爵令嬢だった頃からお名前を伺っておりませんもの。目上の者が声をかけて、下の者から名を明らかにする。それがこのルネライトのお作法だったと思いますが、わたくしが目上の時は声をかけるタイミングさえ掴めませんでした。ですから、少し無作法ですがわたくしからお声をかけさせていただき、名を名乗らせて頂きました。
わたくしは王太子妃様のお名前さえきちんとお伺いしていなかったのです。
「な…な、な……何言ってんのアンタ!?」
王太子妃様が声を荒げますが、わたくしが顔を上げる許可が出ていません。
ひそひそ。ひそひそ。淑女たちの囀りが聞こえます。けれどもお作法ですから。ね?
「ぁ……あ、あ…!アンタ!どこまで私を馬鹿にするの!?私を笑いものにして楽しいの!?男爵家出身の私を笑ってるの!?なんでなんでなんで!なんで名前を知らないとか意地悪いうの!?私の名前なんか覚えてないって言うの!?そうやって私を虐めて楽しいの!?」
わあっ!と泣き出す声がしますが、わたくしの礼を解く許可が出ていません。まだですか?まああと10分くらいは頑張れると思いますが…。
「………エマ、顔を上げて」
「はい」
セオドア様から許可が出ました。
「エマ、私の正妃のシャーロットだ。正式な挨拶はまだだったね」
「………っ…!!~~セッ…セディー!!どうしてぇ!?どうしてエマにっ…」
「シャーロット、君は疲れているんだ。さあ、こちらにおいで。……ああ、エマ。あとは頼んだよ?」
「……承知いたしました」
「セディー!セディー!!私っ、私、エマにいじめられて……」
「ああ、わかった。わかっているよシャーロット」
泣きじゃくるシャーロット様の肩を抱きながら、セオドア様は歩いて行ってしまいました。「花嫁を置いていくなんて…」「ルネライト王国に娘は嫁がせられないな…」「神殿の時はおふたりとも披露宴には…」
そこかしこで招待の高位貴族たちの囁きが聞こえます。でも仕方ありません。
これがわたくしとセオドア様、シャーロット様の立ち位置なのですから。
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