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「それで? この後はどうする? すぐ彼女の部屋に向かうか?」
ミハエルがライラにそう問い掛けた。ライラはちょっと考えてから、
「いえ、少し時間を置きましょう。焦ってなにか行動に移ろうとしてボロを出すのを待ちましょう」
「証拠隠滅される恐れはないか?」
「部屋の中を家捜ししても毒は見付からなかったんでしょう? だったら最初っから自分では持っていなかったと思われますから、そこのところは大丈夫だと思いますよ?」
「なるほど...分かった。少し時間を置いてから向かうとしよう」
「ねぇ、私も一緒に行っていい?」
そこでソニアが尋ねた。
「あなたはまず着替えが先です。上から下まで血糊塗れですよ?」
「あ、そうだった...」
ソニアは自分の体を見下ろしてため息を吐いた。
◇◇◇
彼女は焦っていた。そして怯えてもいた。
「なによ! なんなのよあれ! 私じゃない! 今回は私じゃないわ!」
そう、彼女が言う通りである。今回、彼女はなんら手を下していない。あくまでも今回はだが...
それがなにを意味するのかというと...血に飢えた殺人鬼が一人、この場に一緒に居るということになる。
「冗談じゃないわよ! 殺されて堪るもんですか! こんな候補者レース辞退してやるわ! でもその前に...」
彼女はクローゼットを開けて真っ黒なチョーカーを取り出した。一見すると普通のチョーカーのように見えるが、実は一本はみ出ている糸を引っ張るとあっという間に解け、黒くて長い一本の紐状に変化するのだった。
彼女は急いで手紙を認めた。王宮内に潜ませた自分の配下に撤退を促すためだ。自分が辞退する前に先に逃がしておかないと、いつまでも残って自分からの指示待ちの状態のままになってしまう。
もし仮になにかボロでも出して捕まったりしたら非常にマズい。さっさと逃がさないと。手紙を書き終えた彼女は、それを小さく丸めて紐の先に括り付けた。
そしてバルコニーに出て、隅の方にある雨樋に近付いた。彼女は雨樋の一部をコンコンと軽く叩いた。すると叩いた箇所が音も無く外れた。
彼女は手紙を括り付けた紐を、雨樋の中にスルスルと慎重に垂らして行った。やがて紐が地面に達した手応えを感じたところで、彼女はホッと息を吐き出した。
後は手紙を受け取った配下が迅速に行動してくれるのを待つだけだ。彼女は雨樋に慎重に蓋をして部屋に戻ろうとしたが、
「なあるほど~ そんな方法で外部と連絡を取っていたんですね~」
そんな声が肩越しから聞こえた彼女は、雨樋に蓋をした姿勢のまま固まってしまった。
「ここじゃなんですから、部屋に戻って色々とお話ししましょうか」
その声は冷静にこう続けた。
「ねぇ、レイチェルさん」
ミハエルがライラにそう問い掛けた。ライラはちょっと考えてから、
「いえ、少し時間を置きましょう。焦ってなにか行動に移ろうとしてボロを出すのを待ちましょう」
「証拠隠滅される恐れはないか?」
「部屋の中を家捜ししても毒は見付からなかったんでしょう? だったら最初っから自分では持っていなかったと思われますから、そこのところは大丈夫だと思いますよ?」
「なるほど...分かった。少し時間を置いてから向かうとしよう」
「ねぇ、私も一緒に行っていい?」
そこでソニアが尋ねた。
「あなたはまず着替えが先です。上から下まで血糊塗れですよ?」
「あ、そうだった...」
ソニアは自分の体を見下ろしてため息を吐いた。
◇◇◇
彼女は焦っていた。そして怯えてもいた。
「なによ! なんなのよあれ! 私じゃない! 今回は私じゃないわ!」
そう、彼女が言う通りである。今回、彼女はなんら手を下していない。あくまでも今回はだが...
それがなにを意味するのかというと...血に飢えた殺人鬼が一人、この場に一緒に居るということになる。
「冗談じゃないわよ! 殺されて堪るもんですか! こんな候補者レース辞退してやるわ! でもその前に...」
彼女はクローゼットを開けて真っ黒なチョーカーを取り出した。一見すると普通のチョーカーのように見えるが、実は一本はみ出ている糸を引っ張るとあっという間に解け、黒くて長い一本の紐状に変化するのだった。
彼女は急いで手紙を認めた。王宮内に潜ませた自分の配下に撤退を促すためだ。自分が辞退する前に先に逃がしておかないと、いつまでも残って自分からの指示待ちの状態のままになってしまう。
もし仮になにかボロでも出して捕まったりしたら非常にマズい。さっさと逃がさないと。手紙を書き終えた彼女は、それを小さく丸めて紐の先に括り付けた。
そしてバルコニーに出て、隅の方にある雨樋に近付いた。彼女は雨樋の一部をコンコンと軽く叩いた。すると叩いた箇所が音も無く外れた。
彼女は手紙を括り付けた紐を、雨樋の中にスルスルと慎重に垂らして行った。やがて紐が地面に達した手応えを感じたところで、彼女はホッと息を吐き出した。
後は手紙を受け取った配下が迅速に行動してくれるのを待つだけだ。彼女は雨樋に慎重に蓋をして部屋に戻ろうとしたが、
「なあるほど~ そんな方法で外部と連絡を取っていたんですね~」
そんな声が肩越しから聞こえた彼女は、雨樋に蓋をした姿勢のまま固まってしまった。
「ここじゃなんですから、部屋に戻って色々とお話ししましょうか」
その声は冷静にこう続けた。
「ねぇ、レイチェルさん」
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