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ゆっくりと振り返ったレイチェルは、声を掛けて来たライラの姿と、その後ろに控えているミハエルの姿を見て顔を歪めた。
「な、なんの話かしら!? そ、それと誰の許可を得て私の部屋に入って来ているのよ!?」
「惚けても無駄ですよ。ほら、見て下さい」
そう言ってライラは、バルコニーの下の辺りを指差した。
「くっ!」
レイチェルが悔しそうに呻く。そこには王宮の近衛騎士団に捕縛された、レイチェルの配下の女の姿があったからだ。
もうこれまでかとばかりに、大きく肩を落としたレイチェルは、
「...いつから私を疑っていたの?」
絞り出すようにそれだけを言った。
「最初からです」
「最初から!? 私、どんなヘマをしたのかしら!?」
「簡単な推理ですよ。ドロシーさんが主催したお茶会で事件が起こった。犯人が誰であれ、そんな騒ぎがあったお茶会を主催したというだけで、ドロシーさんは確実に株を落とすことになる。そうなったら一番得をするのは誰か? ドロシーさんの次に高位にあたるレイチェルさん、あなたですよね?」
「...それは結果論でしかないでしょう...ソニアさん個人が誰かに恨みを買っていたとは考えなかったの?」
「もちろん、その可能性も考えましたよ。ただその場合は、合宿で候補者達がお茶会を持ち回りで開くという情報を事前に知っていないと毒なんて用意できません。ミハエル殿下に聞いたところ、合宿の内容は秘匿扱いになっていて外部には漏れないようにしているそうです。でもレイチェルさん、高位貴族であるあなたなら、なんらかのコネを使って知ることが出来たんじゃないですか?」
「......」
レイチェルは黙秘したが、逆にそれが雄弁に語っているとも言えるだろう。
「あなたはお茶会が開催されることを事前に知っていた。だから予め毒を用意することが出来た。後はターゲットを決めるだけ。ねぇ、レイチェルさん。ドロシーさん以外だったらターゲットは誰でも良かったんですよね?」
「...なんでそう思うの?」
「毒が致死量じゃなかったからです。もっとも、ある毒に対する致死量は人によって異なりますから、一概に安全だとは言えませんけどね。ともあれ、あなたとしては殺人まで犯す気はなかった。だからターゲットは誰でも良かったとはいえ、選ぶのにちょっと手間暇掛けたんですよね? あなたは後宮にも自分の配下の侍女を忍ばせていた。そして上手い具合にその侍女がソニアさん付きになった。その結果、ソニアさんが花粉症で苦しんでいることを知ったあなたは、ターゲットをソニアさんに絞った。花粉症の薬だと偽って飲ませていたのは、恐らく毒を中和するような何かですよね? 間違っても毒で命を落とすことがないようにと」
「......」
レイチェルはまたもや黙秘した。
「な、なんの話かしら!? そ、それと誰の許可を得て私の部屋に入って来ているのよ!?」
「惚けても無駄ですよ。ほら、見て下さい」
そう言ってライラは、バルコニーの下の辺りを指差した。
「くっ!」
レイチェルが悔しそうに呻く。そこには王宮の近衛騎士団に捕縛された、レイチェルの配下の女の姿があったからだ。
もうこれまでかとばかりに、大きく肩を落としたレイチェルは、
「...いつから私を疑っていたの?」
絞り出すようにそれだけを言った。
「最初からです」
「最初から!? 私、どんなヘマをしたのかしら!?」
「簡単な推理ですよ。ドロシーさんが主催したお茶会で事件が起こった。犯人が誰であれ、そんな騒ぎがあったお茶会を主催したというだけで、ドロシーさんは確実に株を落とすことになる。そうなったら一番得をするのは誰か? ドロシーさんの次に高位にあたるレイチェルさん、あなたですよね?」
「...それは結果論でしかないでしょう...ソニアさん個人が誰かに恨みを買っていたとは考えなかったの?」
「もちろん、その可能性も考えましたよ。ただその場合は、合宿で候補者達がお茶会を持ち回りで開くという情報を事前に知っていないと毒なんて用意できません。ミハエル殿下に聞いたところ、合宿の内容は秘匿扱いになっていて外部には漏れないようにしているそうです。でもレイチェルさん、高位貴族であるあなたなら、なんらかのコネを使って知ることが出来たんじゃないですか?」
「......」
レイチェルは黙秘したが、逆にそれが雄弁に語っているとも言えるだろう。
「あなたはお茶会が開催されることを事前に知っていた。だから予め毒を用意することが出来た。後はターゲットを決めるだけ。ねぇ、レイチェルさん。ドロシーさん以外だったらターゲットは誰でも良かったんですよね?」
「...なんでそう思うの?」
「毒が致死量じゃなかったからです。もっとも、ある毒に対する致死量は人によって異なりますから、一概に安全だとは言えませんけどね。ともあれ、あなたとしては殺人まで犯す気はなかった。だからターゲットは誰でも良かったとはいえ、選ぶのにちょっと手間暇掛けたんですよね? あなたは後宮にも自分の配下の侍女を忍ばせていた。そして上手い具合にその侍女がソニアさん付きになった。その結果、ソニアさんが花粉症で苦しんでいることを知ったあなたは、ターゲットをソニアさんに絞った。花粉症の薬だと偽って飲ませていたのは、恐らく毒を中和するような何かですよね? 間違っても毒で命を落とすことがないようにと」
「......」
レイチェルはまたもや黙秘した。
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