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4章 文化祭
※ ワタルさんは早川雪って知ってます?
しおりを挟む※空side
演劇部もそろそろ終わりそうな時間、ボラ部での出し物の主役達、野菜とおもちゃも完売していた。
臨時で借りていた演劇部の部室にあった大量の段ボール箱達も見事に片付いて、余る事無く終わった。
まだ15時前だけど、こんなに早く終わるとは思わなかったな~。
中西と数馬が戻って来て今は一条さんと怜ちんが休憩に行っている。
三人で片付け始めようとしていた。
その時、一人の男の人が来て俺に声を掛けて来た。
「こんにちは♪」
「あ、すみません。もう終わっちゃったんで……す……あ!ワタルさん!」
「やあ空くん。覚えててくれたんだー♪嬉しい~」
俺はまさかの人物に驚いて声を上げてしまった。
さっき芽依ちゃんといた男はやっぱりワタルさんだったんだ……
東郷ワタル。大学生で、俺の元客。唯一俺を性的な目で見て来なかった人で、最後に会った時に友達になった人だ。
兄貴と光ちゃんの会話を聞いていて、二人とワタルさんは知り合いっぽいんだけど、詳しい事を聞いてないからそのままにしておいた。
午前中、兄貴いたけど会ったのかな?何か兄貴の元恋人っぽい事聞いたけど、大丈夫だったのかなってちょっと心配だったんだよな。
「覚えてますよ。ワタルさん目立ちますもん。さっき女の子といましたよね?デートですか?」
「うん。デート~ってか、ボディガード?」
俺とワタルさんが軽く世間話してると、中西が入って来た。
「空くん、知り合い~?後は片付けだけだし、座ってお話すれば~?」
「あ、でもワタルさんは連れがいるから……」
「それじゃあお言葉に甘えて♪」
「あ」
中西が差し出した椅子に堂々と座るワタルさん。あまり長く話すつもりはないんだけどなぁ。
仕方なく俺も座って少し話す事にした。
「僕もさっき空くんを見掛けたんだ。一緒にいた子が好きな子?」
ワタルさんはニコニコ笑って聞いて来た。
貴哉といるのを見られたのか。本当の事だし、隠す事もなかったから正直に答える事にした。
「はい。そうですよ」
「いいね~。同じ高校で仲良く出来て。若いっていいな~」
爽やかに笑うワタルさんは最後に会った時と変わらなかった。明るくて少し大人っぽい綺麗な感じの男。身に付けてる物が高そうな物ってだけで他は普通の大学生って感じだ。
この際だから兄貴との関係聞いちゃおうかな?
「あの、ワタルさんは早川雪って知ってます?俺の兄貴なんですけど」
「知ってるよ~♪だって僕の大好きな人だもん♪」
やっぱり二人が話してた「ワタル」と同一人物だ!
俺は少し戸惑ったけど、話を続けた。
「兄貴達の会話聞いててもしかしてって思ってたんです。昔付き合ってたって本当なんですか?」
「あ、そこまで知ってるんだ?付き合ってたよ。てか僕は今でもゆっきーの事好きなんだけどね」
「そうなんですか……詳しくは知りませんけど、偶然ってあるんですね。俺、ワタルさんと何もなくて良かったです」
兄貴の元彼と関係を持ったりしたら何か複雑な気分だ。
俺がそう言うと、ワタルさんは楽しそうに笑った。
「本当偶然だよね~。でも、空くんと会って話してて何か似てるなぁとは思ってたんだよ。容姿もだけど、話した感じも二人共似てるよね」
「顔は似てるとは言われますけど、まぁワタルさんが言うならそうなんでしょうね。ところで芽依ちゃんはどうしたんですか?」
「演劇観てるよ~。何でも今日は会いたい人がいるから付き合ってくれって言われて城山高校に来たんだ。僕がいれば家の人もうるさく言わないからってね」
「お嬢様は大変ですね。てか離れてたらボディガードの意味無くないですか?」
「相変わらず言うね~♪そういう所本当ゆっきーに似てて好きだよ。大丈夫でしょ。あの子は強い子だから大丈夫だよ」
「まぁ芽依ちゃんなら……否定はしませんけど」
「芽依ちゃんの事随分知ってるみたいだけど、親しいお友達なの?」
「そんな感じです」
詳しく話す事は無いと思って適当に誤魔化しておいた。
そして話題を戻す事に。
「あの、午前中兄貴来てましたけど、会いました?」
「会ったよ~♪相変わらずかっこよかった~♪」
兄貴の事を聞くとパァッと嬉しそうに笑った。
なんとなくだけど、本当に兄貴の事が好きなんだなって分かる気がする。
でも、芽依ちゃんの言う通りならワタルさんは芽依ちゃんの婚約者だ。二人共本当に好きな人がいるのにその人とは結ばれないなんて、少し可哀想な気もした。
芽依ちゃんは開き直ってたけど、ワタルさんも同じなのかな?
「それなら良かったです。あの、兄貴には俺達の事話さない方がいいですよね?」
「どうして?話してもいいんじゃないかな。と言うか、空くんの事はゆっきーとまだ仲が良かった頃に良く聞いてたんだよね。可愛い弟がいるって。凄く心配してたよ」
「兄貴と何が原因で別れたんですか?今でも好きって、もしかして芽依ちゃんとの結婚が原因ですか?」
「そんな感じ。僕はずっとゆっきーといたかったから親を説得しようと思ってたんだけど、ゆっきーに半同棲していたマンションから出てけって言われちゃってさ~。それからはどんなに好きって伝えても門前払いで話すら聞いてもらえなくてね。僕が親の言う事なんか聞かずに家を出れば良かったんだけれどね」
「最後に会った時に振られたって言ってましたけど、それって……」
「ゆっきーにだよ~。光ちゃんはたまに連絡くれるんだけど、どうにもゆっきーは僕を嫌ってるみたいで」
「兄貴って頑固ですからね」
「……僕が他の人と婚約しなかったらもう少し違ったのかな」
ワタルさんは寂しそうに笑った。
そこまで兄貴の事を好きな人がいるのは弟としては悪い気はしない。兄貴のそう言う話は聞いた事がなかったから尚更だ。
兄貴の方はワタルさんの事をどう思ってるんだろう。
他に付き合ってる人もいないみたいだし、もしかしたらまだワタルさんを好きなんじゃないか?
そしたらお互い好き同士なのに結ばれないなんて、今の俺と重ねてしまってもどかしかった。
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