【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

文字の大きさ
183 / 219
4章 文化祭

※ ワタルさんは早川雪って知ってます?

しおりを挟む

 ※空side

 演劇部もそろそろ終わりそうな時間、ボラ部での出し物の主役達、野菜とおもちゃも完売していた。
 臨時で借りていた演劇部の部室にあった大量の段ボール箱達も見事に片付いて、余る事無く終わった。
 まだ15時前だけど、こんなに早く終わるとは思わなかったな~。

 中西と数馬が戻って来て今は一条さんと怜ちんが休憩に行っている。
 三人で片付け始めようとしていた。

 その時、一人の男の人が来て俺に声を掛けて来た。


「こんにちは♪」

「あ、すみません。もう終わっちゃったんで……す……あ!ワタルさん!」

「やあ空くん。覚えててくれたんだー♪嬉しい~」


 俺はまさかの人物に驚いて声を上げてしまった。
 さっき芽依ちゃんといた男はやっぱりワタルさんだったんだ……

 東郷ワタル。大学生で、俺の元客。唯一俺を性的な目で見て来なかった人で、最後に会った時に友達になった人だ。
 兄貴と光ちゃんの会話を聞いていて、二人とワタルさんは知り合いっぽいんだけど、詳しい事を聞いてないからそのままにしておいた。
 午前中、兄貴いたけど会ったのかな?何か兄貴の元恋人っぽい事聞いたけど、大丈夫だったのかなってちょっと心配だったんだよな。


「覚えてますよ。ワタルさん目立ちますもん。さっき女の子といましたよね?デートですか?」

「うん。デート~ってか、ボディガード?」


 俺とワタルさんが軽く世間話してると、中西が入って来た。


「空くん、知り合い~?後は片付けだけだし、座ってお話すれば~?」

「あ、でもワタルさんは連れがいるから……」

「それじゃあお言葉に甘えて♪」

「あ」


 中西が差し出した椅子に堂々と座るワタルさん。あまり長く話すつもりはないんだけどなぁ。
 仕方なく俺も座って少し話す事にした。


「僕もさっき空くんを見掛けたんだ。一緒にいた子が好きな子?」


 ワタルさんはニコニコ笑って聞いて来た。
 貴哉といるのを見られたのか。本当の事だし、隠す事もなかったから正直に答える事にした。


「はい。そうですよ」

「いいね~。同じ高校で仲良く出来て。若いっていいな~」


 爽やかに笑うワタルさんは最後に会った時と変わらなかった。明るくて少し大人っぽい綺麗な感じの男。身に付けてる物が高そうな物ってだけで他は普通の大学生って感じだ。
 この際だから兄貴との関係聞いちゃおうかな?


「あの、ワタルさんは早川雪って知ってます?俺の兄貴なんですけど」

「知ってるよ~♪だって僕の大好きな人だもん♪」


 やっぱり二人が話してた「ワタル」と同一人物だ!
 俺は少し戸惑ったけど、話を続けた。


「兄貴達の会話聞いててもしかしてって思ってたんです。昔付き合ってたって本当なんですか?」

「あ、そこまで知ってるんだ?付き合ってたよ。てか僕は今でもゆっきーの事好きなんだけどね」

「そうなんですか……詳しくは知りませんけど、偶然ってあるんですね。俺、ワタルさんと何もなくて良かったです」


 兄貴の元彼と関係を持ったりしたら何か複雑な気分だ。
 俺がそう言うと、ワタルさんは楽しそうに笑った。


「本当偶然だよね~。でも、空くんと会って話してて何か似てるなぁとは思ってたんだよ。容姿もだけど、話した感じも二人共似てるよね」

「顔は似てるとは言われますけど、まぁワタルさんが言うならそうなんでしょうね。ところで芽依ちゃんはどうしたんですか?」

「演劇観てるよ~。何でも今日は会いたい人がいるから付き合ってくれって言われて城山高校に来たんだ。僕がいれば家の人もうるさく言わないからってね」

「お嬢様は大変ですね。てか離れてたらボディガードの意味無くないですか?」

「相変わらず言うね~♪そういう所本当ゆっきーに似てて好きだよ。大丈夫でしょ。あの子は強い子だから大丈夫だよ」

「まぁ芽依ちゃんなら……否定はしませんけど」

「芽依ちゃんの事随分知ってるみたいだけど、親しいお友達なの?」

「そんな感じです」


 詳しく話す事は無いと思って適当に誤魔化しておいた。
 そして話題を戻す事に。


「あの、午前中兄貴来てましたけど、会いました?」

「会ったよ~♪相変わらずかっこよかった~♪」


 兄貴の事を聞くとパァッと嬉しそうに笑った。
 なんとなくだけど、本当に兄貴の事が好きなんだなって分かる気がする。
 でも、芽依ちゃんの言う通りならワタルさんは芽依ちゃんの婚約者だ。二人共本当に好きな人がいるのにその人とは結ばれないなんて、少し可哀想な気もした。
 芽依ちゃんは開き直ってたけど、ワタルさんも同じなのかな?


「それなら良かったです。あの、兄貴には俺達の事話さない方がいいですよね?」

「どうして?話してもいいんじゃないかな。と言うか、空くんの事はゆっきーとまだ仲が良かった頃に良く聞いてたんだよね。可愛い弟がいるって。凄く心配してたよ」

「兄貴と何が原因で別れたんですか?今でも好きって、もしかして芽依ちゃんとの結婚が原因ですか?」

「そんな感じ。僕はずっとゆっきーといたかったから親を説得しようと思ってたんだけど、ゆっきーに半同棲していたマンションから出てけって言われちゃってさ~。それからはどんなに好きって伝えても門前払いで話すら聞いてもらえなくてね。僕が親の言う事なんか聞かずに家を出れば良かったんだけれどね」

「最後に会った時に振られたって言ってましたけど、それって……」

「ゆっきーにだよ~。光ちゃんはたまに連絡くれるんだけど、どうにもゆっきーは僕を嫌ってるみたいで」

「兄貴って頑固ですからね」

「……僕が他の人と婚約しなかったらもう少し違ったのかな」


 ワタルさんは寂しそうに笑った。
 そこまで兄貴の事を好きな人がいるのは弟としては悪い気はしない。兄貴のそう言う話は聞いた事がなかったから尚更だ。

 兄貴の方はワタルさんの事をどう思ってるんだろう。
 他に付き合ってる人もいないみたいだし、もしかしたらまだワタルさんを好きなんじゃないか?
 そしたらお互い好き同士なのに結ばれないなんて、今の俺と重ねてしまってもどかしかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...