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4章 文化祭
お前いちいち近ぇんだよ
しおりを挟むそして感動のクライマックスに差し掛かり、ドラゴンと魔女が和解するシーンだ。そして人間の姿でいる事を選んだドラゴンと、姫さまのラブシーン。俺の嫌いなシーンね。ここで魔女がサービスで二人にとびきりの魔法を掛けてあげる。
二人を一瞬で綺麗な服に着替えさせてやるんだ。
勿論現実では無理だから、主役の二人は急いで裏に戻って来てパーティー用の衣装に着替える。
その間は魔女がパーティー会場を作る魔法を掛ける素振りをしながら、それに合わせて裏方が背景などを変えて、街の人達の演出で時間を繋ぐ事になっている。
「ドラゴンとプリンセス戻ったぞー!」
「プリンセスの衣装急いで!」
二人に数人が駆け寄って急いで衣装替えが始まった。
ドラゴン役の伊織はここでも堂々としていて自分で着替えていた。
そしてそれを隅で見ていた俺を見付けて近寄って来てニコッと笑う。
「よう、金髪姉ちゃん。この後デートしない?」
「軽口叩いてねぇで早く準備しろよ」
「軽口じゃねぇよ。本気だって。てか泣いた?」
まるで漫画とかに出てくる王子様みてぇな豪華な格好した伊織が俺の顔に手を当てて目の下を触って聞いてくる。大分落ち着いたけど、伊織にはバレたか。
「んー、これで最後なんだなって思ったらちょっと泣けただけ」
「はは、可愛いなぁ♡デート楽しみにしてるからな♡」
「おう。早く行って来い」
伊織は俺の頭を撫でて、ドラゴンに戻って行った。
その伊織が向かう先にはプリンセス役の七海が青いドレスを着て立っていた。
練習の時にも見たけど、やっぱり似合うよなぁ。小柄で華奢。女みてぇな七海はドレス姿で緊張したような顔をしていた。
それを隣に立った伊織が何かを言って、七海を笑わせている。
はー、あの二人があの格好で並ぶとマジでお似合いだわ。
「おっす秋山~」
「あ、犬飼」
裏方リーダーの犬飼。ステージの方での仕事があらかた終わったようで俺に声を掛けて来た。
「てかまだ着替えてなかったんだ。何気に気に入ってんの?デシーノ」
「衣装は別に。金髪は気に入ってる」
「はは!マジ可愛いもんな~。金髪似合ってるよ」
「はぁ、そろそろ着替えよ」
なんだかんだ余韻に浸っていた俺は、主役の二人がステージに行くのを見届けて、そろそろ着替えようとカツラを取ると犬飼が手伝ってくれた。
「お疲れ様♪」
「サンキュー。犬飼もな」
「なぁ、今日文化祭終わったら打ち上げあるんだけど、来れるか?」
「え、そんなんあるの?行きたい」
「秋山参加な。でもボラ部の方はいいのか?やるんだろ?打ち上げ」
「知らねぇ。何も聞いてねぇよ?」
「知らねぇって。てかボラ部も合同でやりゃいいじゃん。薗田さんもいいって言うと思うし」
「それいいな。みんな誘っとくわ」
俺は衣装を全て脱ぎ捨ててパンツ一枚になる。キョロキョロと自分の着替えを探してると、犬飼が取って来てくれた。
「おっ、気が効くな~」
「自分で用意してから着替えろっての。てか早く服着ろって、そんなとこトモが見たらヤバいだろ」
「トモどこ行ったの?」
「ステージで一番デカい背景支えてるよ」
「あいつも頑張ってんな~」
「トモは祭り事が大好きだからな。張り切ってんだ。ところでよ、秋山に頼みがあるんだけどさ」
俺がズボンを履いていると、俺に更に近寄ってコソコソとし出した。何か面倒くさそうな事言いそうだな。
聞く前に断るか?
「お前いちいち近ぇんだよ」
「こんな事大きな声で話せねぇからよ」
「とりあえず聞くだけ聞いてやる。何だよ?」
「打ち上げの時にさ、茜ちゃんと二人になれるように協力してくんね?」
お願いっと両手を合わせて頼み込んで来る犬飼。
やっぱりな。茜関係だと思ったわ。
「別にいいけど、打ち上げだろ?みんないるから二人きりってのは無理じゃね?」
「大丈夫!茜ちゃんと二人で楽しめるプランを完璧に練ってあるんだ♪」
「へー」
「まず茜ちゃんを隅っこに座らせるだろ?そんでその隣を俺がキープする!そしたら秋山が俺の隣に座って誰もこっちに入らせないようにすればいい♪どうだ!?」
「どうだって、どういう席か知らねぇけど、対面して座られたらどうすんだよ?」
「そこには大人しそうな一年座らせる。桃山がいないからチャンスなんだ!」
「んー、まぁ上手くいくかは知らねぇよ?協力するぐらいならいいけどさ」
「よっしゃー♪茜ちゃんは秋山の事好きだから近くにいて協力してくれるとやりやすいなーって思ってたんだ♪」
「そうかよ。まぁ頑張れよ」
演劇部の打ち上げなら桃山はいないし、確かにチャンスかもな。てかこいつはまだ茜の事を好きなのか。
でも、茜って今日までだし、隅っこなんかに座ってられるのか?同じように茜と話したい奴もっといるんじゃないのか?
まぁ俺はそれぐらいなら出来るし何でもいいけどよ。
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