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4章 文化祭

お前すげぇ人気だったな。さすがヒロインだわ

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 演劇部の演目が全て終わった後、俺と伊織は着替えて片付けを手伝っていた。伊織は卯月と先に部室へ行き、俺は七海と一緒に自分で着た衣装を大事に抱えて歩いていた。


「はー終わったな~。俺最後ウルっと来たよ~」

「お疲れ。お前すげぇ人気だったな。さすがヒロインだわ」

「女の子を演じるのは得意だからな~♪衣装もとても可愛いく仕上がってたし、デザイン部にも感謝だけど~」


 へへっと自慢そうに笑う七海は確かに可愛い。男だけど、小柄ってのもあるけど、女みたいに目が大きくて可愛い顔してるんだ。声も声変わりしてんのかしてないのか高い。俺は七海がたまに出す甲高い声が苦手だけど。
 前は良くぶりっ子していろんな奴に媚び売ってたけど、今じゃそういうとこ見なくなったな。
 
 七海は俺に対して初めから本性剥き出しで接していた。伊織がいて、伊織に対してはぶりっ子してたけど、俺には敵意剥き出しだったからな。
 俺が茜と仲良かったから七海から折れてこうして話すようになったけど、マジで面倒くさかったからなコイツ。
 でもさ、話してると悪い奴じゃないって分かるんだ。
 あちこちに良い顔ばかりしてるのはどうかと思うけど、てか俺は絶対無理。疲れるし面倒いし、何で周りに愛想振り撒かなきゃなんねぇの?って感じ。
 だから俺は敵ばっかり作っちまうんだ。その点ぶりっ子出来て、愛想振り撒ける七海は上手く生きていける人種だ。
 そこは俺には無い部分で、すげぇなって思うよ。

 ま、こいつの本性はめっちゃ強気でワガママで少し口悪い事に変わりはねぇけどな。俺はそっちの方がやり易い訳だ。


「茜もいなくなるし、お前が副部長なら演劇部は安泰だな」

「二之宮か……あのさ!秋山も打ち上げ来るか?」

「行く予定だけど」

「だよな♪みんなも秋山が来ると喜ぶよ!」

「みんなの為に行くんじゃねぇぞ。俺はタダ飯食う為に行くんだ」

「俺からしたら何でもいいよ♪なぁ、打ち上げ始まったらさ、俺と二之宮を二人きりにしてくれない?」

「あ?」


 こいつもかよっ!!
 七海は普段俺にはしないウルウルした目して、持ってた衣装を顎に当てて可愛こぶってきやがった。
 はー、犬飼に続いて七海もかよ。
 まぁ二人が茜の事を好きなのは知ってるから驚かねぇけど、正直面倒くせぇ。
 二人には世話になったからやってやるつもりだけど、何で俺に頼んで来るかな?
 俺はどうせ伊織も行くだろうし、伊織に任せればいいやとか思って適当に返事しておくつもりだ。


「いいぜ。でも他の奴らも茜と話してぇだろ。最後なんだし」

「最後だから二人で過ごしたいのっ!みんなの事なんてどーでもいいから!桃山がいない今日がチャンスなんだから!」


 犬飼と同じ事言ってるし。
 本当に茜はモテるよな~。猛犬がいないからチャンスね~。俺もあいつだけは敵に回したくねぇわ。いろいろめちゃくちゃ過ぎて勝てる気がしねぇ。

 でもまぁ、茜が好かれるのは俺からしても嬉しい事だ。
 茜は自分の不器用な性格のせいで今まで周りと上手くやれて来なかった事を気にしてるんだ。
 あいつ自身は上手くやろうと努力してる。ただ自分にも厳しくて、それを周りにも押し付けてしまう癖があるだけ。頑固だからなあいつは。
 
 でも、茜は変わろうとしてるんだ。
 俺には分かる。あいつなりに、頑固なりに、ずっと上手く馴染めなかった部活も頑張って参加して来たのに、今回辞める事を選んだのはそう言う事なんだろ。

 これからは好きな奴と過ごして、好きな事をして、たくさんの好きに出会いてぇんだあいつは。

 茜が笑って喜ぶなら俺はそれでいいと思っている。
 副部長で部の中心的な存在の二之宮茜がいなくなるのは演劇部にとって痛ぇ事だろうけど、俺は茜を応援するぜ。

 てかそう言う奴の方が俺は好きだ。

 
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