上 下
179 / 219
4章 文化祭

※ 空くん、貴ちゃんと付き合ってた時にさ

しおりを挟む

 ※紘夢side

 貴ちゃんの知り合いだという中学生二人組を見送った後、俺達は再び椅子に座り直して雑談タイムに入る。


「俺でも知らなかったな~。貴ちゃんにあんな知り合いがいるの」

「俺もですよ。中学生に知り合いいるなんて一度も聞いた事ありません」

「親同士が知り合いみたいだし、本人達は数えるぐらいしか会った事ないのかもよ?」

「いーくんの事かっこいいって言ってたけど、会った事があるって事だよね?」

「みたいですね」

「いーくんは本当にモテるよね~。まず第一印象が良過ぎるんだよ。誰にでも当たり障りない態度だからさ~」

「分かるー。しっかりしてて頼もしいもんね。顔も良いし」

「否定はしません。悔しいですけど、桐原さんは良い男ですよ」

「もしかしてあの類って子、いーくん狙いかな?」


 ここで怜ちんが首を捻って言った。
 それは俺も思ったよ。いーくんの事も探してるって言ってたし、気に入ってる感じがした。
 

「だとしたら貴ちゃんのライバルになるのか」

「なんなら奪ってくれないかな。そしたら俺嬉しいです♪」


 満面の笑みでそう言うのは勿論空くんだ。
 確かに、いーくんが類くんを選べば貴ちゃんはフリーになる。そしたら空くんからしたら万々歳だろう。
 でもいーくんが貴ちゃん以外に靡くとは思えないよな。類くんがどんな子なのかまだ良く分からないけど、もし類くんがいーくんの事を好きで貴ちゃんの邪魔をしたとしたら、貴ちゃんはどうするんだろう?
 

「ねぇ、空くん、貴ちゃんと付き合ってた時にさ」

「はい。何ですか?」


 貴ちゃんがやきもち焼いた事があるか聞こうとしたけど、あったわ。貴ちゃんが葵くんから出されたペーパーテストやった後に、俺が中庭で空くんが他の男とイチャついてるって嘘言ったら有無を言わさず二階の窓から飛び降りてたわ。
 あれは面白かったなぁ~。まさか飛び降りるとは思わなくて笑ったな~。

 俺が思い出して笑っていると、変な顔をされた。


「一条さん、言い掛けといてやめないで下さいって。気になるじゃないですか」

「紘夢~、何を聞こうとしたのー?」

「いや、貴ちゃんもやきもち焼くのかって聞こうとしたんだ。そしたら二階から中庭に飛び降りたのあったな~って」

「アレですか。マジビビりましたからね!後ろに何か落ちて来たような音したと思ったら貴哉だったから焦りましたよ」

「俺もそれ見たかったなぁ~!だって、詩音さんがそれを見て脚本を書き換えたんでしょ?よっぽど凄かったんだろうなぁ」

「そう言えばそうだったね。ジャンルもファンタジーに変えたんだったね」

「貴哉の影響力やば」

「本当に貴ちゃんは凄いよ~。初めてボラ部に来た時面白い子が来たなって思ってたけど、想像の何倍も上を行っててビックリしたよ~」

「そうでしょー?貴ちゃんはヒーローなんだからぁ♪」

「ヒーローねぇ、確かにそうかも♪詩音さんの事もだし、あの茜ちゃんも貴ちゃんが仮入部してから凄く話し易くなったよね~♪演劇部って体育会系かってぐらい厳しそうな部活だったけど、今ではみんな楽しそうだよね~♪」

「……貴哉が入る前ってそんな感じだったんだ」

「結構辞める子多かったよ。前の性格の茜ちゃんだけが原因じゃなくて、裏方も悪さしてたからね~。あれだけの大所帯を詩音さんや副部長だけでまとめるのは大変だから行き届かない部分もあったんだろうね」

「この後、貴ちゃんといーくんが抜けたらどうなるかだよね~。あと茜ちゃんか」


 予定では臨時部員である貴ちゃんといーくんは今日までだ。あと、茜ちゃんも文化祭が終わったら退部するって言ってるから今日までの筈。
 それと、進路を変えた事によって時間に余裕が出来た詩音さんの協力もあったけど、それもなくなるだろう。
 今の演劇部にとって大きな存在が四人もいなくなるんだから傾かない訳ないよね。
 あとは演者チームの七海ちゃん、裏方リーダーの犬飼、そして部長である卯月がどう考えてどう行動するかだ。

 今の三人なら、任せても大丈夫な気もするけど、俺としては傾いてくれた方が面白くなっていいんだけどね♪

 俺は再び卯月からSOSが出るまでは黙って見ているつもりだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...