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2章 文化祭までのいろいろ
※ はぁ、やっぱこうなる……
しおりを挟む※伊織side
俺と一条はキレて一人でどっかへ行く貴哉をボーッと見ていた。
ってボーッとしてる場合じゃねぇ!
「はぁ、やっぱこうなる……」
「あはは~♪貴ちゃんめちゃくちゃ怒ってたね~」
「笑ってる場合かよ。とにかく散歩はここまでだ。俺は貴哉を追うから、一人で帰れるな?」
ニコニコ笑いながらたこ焼きを食べてる一条に言うと、機嫌良さそうに頷いた。
「いーくんの言った通りだね。貴ちゃんは怒るって」
「そりゃ、俺と一条が貴哉を除け者にして目の前でイチャついたら怒るに決まってんだろ」
「でもさ、これでいーくんの気持ちも少しは分かるんじゃない?自分のものなのに他に手を出される気持ち。貴ちゃんの場合、みんなから可愛い可愛いで甘やかされてるから、実際自分がそう言う目に遭わないと分からないんだよ。たまには雷落としてあげるのも良いと思うよ~?」
「…………」
実は俺と一条は貴哉のいない所で、貴哉をヤキモキさせてみようって話し合っていたんだ。
これは一条からの提案で、俺は勿論反対した。そんなの貴哉を怒らせるだけだからな。
でも少しだけ困らせてもみたかった。
最近俺は貴哉がしたいという事を極力否定せずにやらせて来た。自分の許せる範囲でな。
貴哉は満足そうで、嬉しそうにしてるのを見てたら良かったのかなとも思ったけど、俺の心はやっぱりモヤモヤしていた。
本当は昨日の夜から二人きりで過ごしたかった。昼間は早川と遊びに行かせたから夜を楽しみにしてたのに、いきなり一条んちに泊まると言われて「何で?」ってなった。
俺と約束してたのに。しかも早川もいるとか、絶対二人で企んだ事じゃん。一条んちなら怪しまれねぇとでも思ったんだろうな。
俺は込み上げる怒りの感情をグッと堪えて二人に接した。二人に土産を買ったのも怒ってないと思わせる為だ。
二人はそんな俺に気付かないようで楽しそうにしていたな。
多分一条は気付いてたんだろうな。それで俺に貴哉を騙そうだなんて言い出したんだ。
「ほら早く行きなよ。貴ちゃんはいーくんが来てくれるって思ってるよ」
「行くけど……」
「大丈夫だよ。いーくんならね」
一条にそう言われて俺は貴哉が歩いて行った方へと走り出した。
大丈夫か。一条に言われると不思議とそうなのかと思っちまうわ。
ここで一条を置いて一人で貴哉を探す。貴哉はここら辺の土地勘ないだろうから、来た道を戻るだろう。それか駅に行って電車で帰るか。
俺は怒らせてしまった恋人の事を考えて来た道を戻っていた。
しばらく小走りに進んでいたけど、街の外れにあるカフェのテラス席に、一人でグレーのキャップを被って、やさぐれながらたこ焼きを頬張る綺麗な顔の男を見つけた。
その姿を見て俺は自然と笑みが溢れた。
やっぱ好きだわあいつ。
俺が近付くと、愛しいやさぐれヤンキーはハッとした顔をしてアイスコーヒーで口に入れてたたこ焼きを流し込んでた。
「ねぇ、お兄さん一人~?良かったらデートしない?」
「…………」
「俺さー、すげぇ愛してる恋人を傷付けちゃってブルーなんだわ。慰めてくんね?」
「ハッ!テメェで嫌がらせしといてブルーになってるとかザマァだな!生憎俺は落ち込んでる奴を慰めてやるなんてスキル持ち合わせてねぇんだよ。他当たれ」
そう言ってしっしっと手で追い払う仕草をした。
それでも俺は目の前の貴哉が愛おしくて仕方なかった。さっきは口聞かねぇとか言っていなくなった癖に、バッチリ聞いてんじゃん。
「もー、俺の負け。ごめんっ!悪ノリが過ぎました!何でも言う事聞くから機嫌直してくれよ」
「あ?悪ノリだぁ?誰に向かってんな事やってると思ってんだ?クソ共が」
めっちゃ柄悪!でも何でだろうな。とても可愛いく思うんだ。だって、俺があげたキャップ被って、俺が買ってあげたたこ焼き残さず食って、あんま離れてない所でそれも目立つとこに座って、それって俺に見付けてくれって言ってんだろ?俺を待っててくれたんだろ?
そんなの可愛い過ぎるじゃん♡
俺はかっこ良くとかを忘れて素で笑顔になっていた。
「貴哉♡大好き♡」
「っ……黙れ!そんなんで俺は騙さねぇぞ!」
「いいよ♡機嫌直してくれるまでずっと側にいて好きって言い続けるから♡」
「それはそれでウザイからやめろ!」
「あー貴哉にウザイって言われても嬉しいや♡」
「変態め!……てか、俺も伊織に悪かったなって思ってんだ」
「いや、今回のは完全に俺と一条が悪いだろ。貴哉が悪いと思う要素はねぇだろ」
「ううん。きっと今まで伊織もこんな気持ちだったんだって思ったら、俺ひでぇ事してたなって。そりゃ怒りたくもなるわ」
嘘だろ?あの貴哉が反省してるだと?
え、これも一条の読み通り?いや、一条は自分が楽しめれば良い感じだったよな。
「おいおい、やめてくれ。俺は平気だ。貴哉は貴哉の好きにしてくれれば……」
「良くねぇんだって!そうやって甘やかすから俺はこんな風に自分勝手にキレるんじゃねぇか!」
「…………」
「あ、悪い。またキレちまった」
「いや、俺が否定したからだろ。聞くよ。貴哉の話。言って?」
またいつもの貴哉のように大声を出したけど、すぐにハッとしてシュンとなる姿を見て、俺は冷静に話を聞く事にした。
貴哉の思ってる事を全て聞いて全て受け入れる気持ちでいた。
きっと貴哉なりに考えて思った事だから。
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