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2章 文化祭までのいろいろ

ちょっと頑張って楽しんでみるか?

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 晴れた青空に前を歩く背の高い赤い髪の男とふわふわした黒髪の男が二人。俺達三人はポカポカ陽気の中、散歩をしていた。
 そう、ただの散歩だ。
 紘夢は歩きながら何かを見付けては指を指して笑い、伊織はそれを機嫌良く相手していた。
 何この呑気な雰囲気は?てか散歩って何だよ?
 俺達まだ高校生だよな?こんな事してて良い訳?いや、別に良いんだろうけど、俺は紘夢との散歩を選んだ伊織に対して思う所があったから素直に楽しめずにいるんだ。


「貴ちゃーん!見てー!一面コスモスだらけだよー!一緒に写真撮ろうよ~♪」

「俺が撮ってやるよ。ほら並んで」

「ほんとー?わーい♪貴ちゃんこっち来て~」

「…………」


 紘夢に腕を引かれて、興味もない花の前に並ばされて、やりたくもないのにピースなんかさせられて、写真を撮られる。
 そんな俺にも二人はニコニコ楽しそうに笑っていた。


「ねぇいーくん、俺たこ焼きが食べたい♪」

「いいね~。それじゃ少ししたら街の方行ってみるか」

「貴ちゃんもたこ焼き食べたいよね~♪」

「…………」


 食いたくねぇよ。さっき朝飯食ったばっかだろ。
 どうして二人はこんなに楽しそうなんだ?
 いや、二人みたいに楽しめない俺がおかしいのか?

 ちょっと頑張って楽しんでみるか?


「紘夢!さっき通って来た川で遊ぼうぜ!お前やった事ねぇだろ!?」


 俺は精一杯の笑顔を作って、唯一見つけた遊びを提案すると、二人はピタッと止まって真顔で見て来た。


「えー、川って……さすがにちょっとねぇ?」

「貴哉、季節を考えろ。風邪引くぞ」


 あれ?二人共呆れてる?
 確かに今は10月のケツだ。寒いけど、そんなに冷たく言うかね?
 いつもと違う二人の反応に、俺は何が起きたのか分からずにいた。


「てか今時の子供でも川で遊ばなくない?さすがに笑えないよね~」

「……ああまぁな」

「そ、そうかよっ!ならもう俺は何も言わねぇよ!さっさとたこ焼き食って帰ろうぜ!」


 まだ文句を言う紘夢に、伊織何かは呆れて物も言えないのかそっぽ向いてた。
 我慢だ俺。キレるな俺。相手は伊織と紘夢だぞ?普段良くしてくれる二人にブチギレるなんてすんなよ?

 俺はさっさと終わらせて帰ろうと思って紘夢が食いたがってたたこ焼きの話を出して次の目的地へ行かせようとした。
 すると、二人にパァッと笑顔が戻っていつもの雰囲気になった。


「たこ焼き~♪貴ちゃんも一緒に食べようね~♪」

「美味いたこ焼き屋あるからそこに行こう」

「…………」


 二人の謎の行動に、俺は黙って耐える事にした。
 はぁ、俺も成長したよな~。前だったらその場でキレて帰ってる所を二人がやりたい事優先して、空気読んで一緒にいてやるんだもんな~。
 ほんっと、大人になるって疲れるぜ!!

 次の目的地は少し歩いて賑やかな街中にあるたこ焼き屋。近くまで来て美味そうな匂いに、さっきまでは全く食いたく無かったのに、今ではたこ焼きの胃袋になっていた。
 美味そう~♪


「たこ焼きだぁ♪学校の近くにたこ焼き屋さんって無いからちょー感動~!」

「え、まさか初めて?」

「初めてだよー♡何かくるくるしてるー♡可愛いー♡」


 店の人が器用に小さい丸がいくつも出来た鉄板の上をクルックルと回しながらたこ焼きを作ってる所を見て紘夢は食い入るように見ながら感動していた。
 周りから見たら変人に思われるだろうな。


「あはは、一条って素直で面白いな♪」

「そう?いーくんも優しくて頼りになるね♪」

「おじさん!たこ焼き三つ!お前ら後がつっかえてんだよ!んなとこでくっちゃべってんな!」


 俺は無理矢理二人の会話に割って入るように注文してやった。何なんだよこいつら!今日はやけにイライラするな~。

 てか伊織が変なんだよ!いつもならもっと俺に声掛けるだろ!何で紘夢にばっかなんだ?これじゃまるで紘夢の彼氏じゃねぇか!


「あ、いくらですか?」

「えー♡いーくんが奢ってくれるのー?かっこいい~♡」

「これぐらい普通だって」

「…………」


 当たり前のように伊織が支払いをしてそれを紘夢が褒める。
 もう勝手にやってろ。俺はたこ焼き食ったら一人で帰ろ。帰って寝てゲームでもしよ~。

 もう二人はいないものと思って、伊織から自分の分のたこ焼きをぶん取って近くにあったベンチに座ってやけ食いしてやった。
 二人は当たり前のように俺の真ん前のベンチに座って食い始めた。

 俺がこんな態度取ってもそう来るか。伊織のヤロー、喧嘩売ってんな?買ってやるよ。
 俺がたこ焼きをもぐもぐしながらそんな事考えていると、たこ焼きを初めて食うらしい紘夢が騒ぎ出した。


「熱っ!え、これ食べるの難しくない!?貴ちゃん良くそんながっつけるね!」

「うるせー、温室育ちが。黙って食え」

「ぷぷっ♪」

「くくっ♪」

「あ?」


 二人が同時に顔を背けて笑いやがった。
 あーダメだ。俺そろそろ限界です。俺が熱々たこ焼き爆弾を二人に投げ付けようとした時、また二人の茶番劇が始まった。


「ねぇ、いーくん!ふーふーして食べさせてー?」

「えっ!それはさすがに……」

「…………」

「ほら早く!あーん♡」

「はぁ、分かった分かった」


 紘夢、お前も敵だったのか。
 甘える紘夢の言う事を聞いて、丁寧にたこ焼きを半分に割ってふーふーと自分の息を吹きかけてそしてそれを紘夢の口元に運ぶ伊織。
 
 やってられっかー!!!!


「だぁ!テメェらいい加減にしろ!!文句があるなら言えばいいだろうが!!クソ気分悪ぃ!!テメェらとはもう口聞かねぇ!!」

「あ」

「やべ」


 二人はポカンとした顔して俺を見ていた。
 俺は人目も気にせずに二人に向かって怒鳴ってから、一人で来た道を戻った。食いかけのたこ焼きを持って。
 
 あークソ!今日の朝までは楽しかったのに、もう最悪な気分だぜ!

 何なんだよあの二人はよぉ!嫌がらせかってぐらいイチャつきやがって!次会ったらシカトしてやる!!
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