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2章 文化祭までのいろいろ
マイブームが散歩ってジジイかよ!
しおりを挟む空と伊織が作ってくれた朝飯をみんなで食った後、なっちは予定があると帰って行った。飯食った後に紘夢と少し話してた空も、今日は予定があるらしく俺達より先に帰る事になった。
「空~。朝飯美味かったぞ♪気を付けて帰れよ」
「ほとんど桐原さんがやってくれたんだけどな。貴哉、昨日と今日って楽しかったよ。ありがとう。また明日な」
「俺も楽しかったぜ~♪」
「あ」
「どうした?忘れもんか?」
玄関で見送ろうとしていていたら、靴を履いていた空が何かを思い出したようにこちらを見た。
こっち来てと手招きされたから、近付くと手を握られてクイっと引っ張られた。
「は?何?……んっ!」
俺は突然の事で訳が分からずにいると、チュッとキスをされた。こ、こいつ!伊織がいないからってなんて堂々と!
さっきの一件があるから伊織に見られてたらまた喧嘩になるとこだったじゃねぇか!
「おまっ!時と場合考えろ!」
「えへへ♡じゃあな~」
満足そうに笑って空は帰って行った。
残された俺はしばらくその場に固まってたけど、空の笑顔を思い出して怒りよりも喜びが勝った。
「ったく、あいつは……」
「おい」
「ヒィィ!?」
やれやれと微笑んでいたのも束の間、直後に背後から低い声がして心臓が飛び跳ねた!まさか伊織か!?いや、この低い声は違う……鉄仮面だ!
「戸塚ぁ!?ビックリさせんなよぉ!」
「俺も帰るぞ」
「あ、そなの?気を付けて帰れよ~」
俺の横を通り過ぎて靴を履き始める戸塚。服装は紘夢に借りたのか、カジュアルな物で、昨日着ていたスーツ類は持っている紙袋に入ってるみてぇだった。
絶対さっきの見られたと思うけど、相変わらずの無表情で何考えてるのか分からなかった。
立ち上がった戸塚は俺に謎の言葉を放った。
「二兎追うものは一兎も得ず」
「はい?なんて?」
「先に言うが俺は秋山の事は嫌いじゃない。むしろ今では好感を抱いている」
「そうですか……」
「昨日はああ言ったが、秋山が傷付く前に忠告……いや、助言してやろうと思ってな。そういう言葉もあると言う事を頭に入れておけ。きっと役に立つぞ」
戸塚はフッと笑って玄関のドアに手を掛ける。え、ちょっと待って?助言って何!?てかさっきの呪文みたいなのが助言だったのか?
「待てよ!さっき何て言ったんだ?」
「虻蜂取らず」
「あ!?また呪文!!」
そして戸塚は「あはは!」と今までに無いぐらい無邪気に笑って玄関から外へ出て行った。
何今の鉄仮面?悪魔にでも取り憑かれた?
呪文は良く分からなかったし、もう忘れたけど、きっとさっきの戸塚の笑顔は二度と見れないもんだろうな。
すげぇレアなもんを見て軽く怖くなった俺は急いでリビングに戻った。
そこでは伊織と紘夢が二人でテーブルに並んで座ってiPadを見ていた。
「二人で何見てんだ?」
「あ、貴ちゃん♪今ね、いーくんにオススメの散歩コース教えてもらってたの♪」
「散歩ぉ?」
iPadを覗くと、地図みてぇな画面だった。
え、二人ともそんな爺さんみてぇな話してんの?
「今の時期だとこの河川敷とかオススメ。そのまま北に歩いて行くとコスモス畑があるんだ。少し歩けば街も近いから食う物にも買い物にも困らねぇよ」
「楽しそ~♪いーくんはいろんな場所知ってるね~」
「出掛けるの好きだからな」
「ふーん。紘夢そこ行くの?」
「行こうと思ってるよ~♪俺のマイブーム散歩なんだ♪貴ちゃんも一緒にどう!?」
「マイブームが散歩ってジジイかよ!」
「えー、楽しいよ?歩いてなきゃ見れない景色がたくさんあるんだ。いーくんは今日予定あるのー?」
「いや、特にないけど。付き合ってやろうか?」
「やったー♪いつも吉乃と行くんだけど、すぐに帰りたがるからちょっと遠慮してたんだよね~♪いーくんが一緒なら心強いや」
「貴哉はどうする?」
二人で盛り上がりながら、伊織が俺に聞いて来た。てか俺はてっきり今日は伊織と過ごすものだと勝手に思ってたよ。だからこの伊織の質問に少しムッとしちまった。
「暇だし行くよ」
「貴ちゃんもいるなんて最高~♪早速出発しよう!」
子供のようにはしゃぐ紘夢に、機嫌良さそうにiPadで何かを検索してる伊織。
何だろうこの気持ちは?
別に二人と散歩するのが嫌な訳じゃない。でも、伊織が俺と過ごすよりも先に紘夢と出掛けるって決めた事が心に引っ掛かっていた。
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