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2章 文化祭までのいろいろ
なっち!勝てるぞ!
しおりを挟む空と一緒に布団が敷き詰められてる部屋に戻ると、伊織、紘夢、戸塚の三人と、さっきまで寝てた筈のなっちも起きてて、部屋の中央で何かを囲うようにして布団の上に座っていた。
あいつらまだ起きてたのか。
「お前らそんなとこに固まって何やってんだ?」
俺が声を掛けると、戸塚以外の三人が振り向いた。
「貴ちゃーん♪今待っててね~♪那智くんの全裸ショーが始まるから~♪」
「はぁ?何だそりゃ?」
「秋山ぁ!助けてくれよぉ!三人で俺をいじめるんだ!」
どういう事だ?あのいつでも笑顔で元気な筈のなっちがこんなに弱って、俺に助けを求めてくるなんて。とりあえず何をやってるのか四人に近付いてみると、まさかのトランプをやっていた。
うわー、こりゃ酷ぇいじめだわ。
今度はトランプがバラバラに布団の上に置かれて全部裏にされていた。
「あ、今度は真剣衰弱ですかー?」
「真剣衰弱って?」
「カードを二枚引いて同じ数字だったらそれが自分の点数になって、最終的に多く持ってた人の勝ちってゲームだよ」
「ふーん。分かりやすいルールだな。で、今度の罰ゲームは何なんだ?」
俺が伊織となっちの間に座って聞くと、伊織がニヤリと笑った。
「負けたら真っ裸になって一発芸だよ♪貴哉は絶対参加するなよ♡」
「空の罰ゲームより最悪じゃねぇか!てか戸塚もやってんのかよ!」
「ふん。俺は今暫定一位だ」
そう言って無表情のまま大量のカードを見せる戸塚。さすが優等生!トランプとかのゲームも得意なのか!
「二位は俺~♪真剣衰弱は知ってたけど、やるのは初めて!記憶力が試されるゲームだね♪」
「て事は伊織が三位?」
「ああ。ちなみに那智は0枚。ほぼ負け確だ」
そう言えばなっちは俺と同じぐらい勉強出来ないとか言ってたな。そうか、なっちもトランプ苦手か~。なんか可哀想になって来たな。
「なっち頑張れ!まだ諦めるな!」
「いや、もう無理でしょ。いーくんが既に8枚持ってるからこの後全部取れなきゃアウトだよ」
残りの枚数は十数枚。いや、いけるんじゃね?
「なっち!俺も見ててやるから頑張れ!」
「俺の味方をしてくれるのは秋山だけだ!二人で頑張ろう!」
「そんじゃあ特別になっちの回は貴ちゃんも引いていいよ♪勿論揃ったら那智の分って事で」
「本当か!?なっち!勝てるぞ!」
「うおー!まだ終わってねぇ!」
途中からだからどれが既に引かれていて何のカードか何か分からねぇけど、俺が二枚引いてもし違ってても、それを覚えておいて次になっちが上手く引きゃいけるだろ。
「はい貴ちゃんどうぞ~♪」
急遽特別参加する事になった俺は、なっちの為に選りすぐりのカードを二枚捲った。もちろん揃う事はなかった。だけど、この二枚は覚えたぞ!この枚数なら俺でも覚えてられる!
すると、なっちがボソッと言った。
「あれ?さっき秋山が引いたのってどこかにあったな?」
「うん。二枚とも出てるね~♪」
「本当か!?思い出せなっち!それを引くんだ!」
「んんー!確かここら辺だったような?」
なっちが手を伸ばして一枚ペラッと捲る。が、それは全く違うカードだった。
「あー!これじゃねぇ!」
「何やってんだなっち!やべーよ!さっき俺が引いたやつ以外を引け!運が良けりゃ揃うから!」
「え?秋山が引いたやつを引け?そうすれば揃うから?」
「バッ!どんな聞き間違えだ!あ!」
なっちは俺の言葉を聞いているのか聞いていないのか、さっき俺が引いた内の一枚を捲っていた。勿論揃わず……
待て待て待て。なっちって俺より酷いのか?
「ちげぇじゃねぇか!さては秋山俺をハメたな!?」
「俺の言う事聞いてねぇのが悪いんだろうが!今のは完全なっちが悪いだろ!」
「あはは!本当面白い!ねぇ、那智くんは本気なんだよね?ふざけてないんでしょ?ヤバーい♡」
「本当、那智を起こしてまで参加させて良かったぜ」
「下らん。さっさと終わらせるぞ」
なっちのターンがあっさり終わり、次に引くのは戸塚で、一枚目に捲ったのはなっちがさっき引いたのと同じやつ。そこだったのか!
そして当たり前のように同じのを捲って、その後もどんどんカードでペアを作って行った。
「ありゃー、戸塚の圧勝だな」
「春樹の番になると俺らに回って来なくなるよね。あー面白かった♪」
伊織と紘夢は勝負が付いたと各々感想を言っていた。
そして戸塚が最後のペアを引き終わり、真剣衰弱は終わった。なっち、ドンマイ。
「だー!もう!俺こういうの苦手ー!」
「俺も苦手だけど、さすがにさっきのは覚えてられたぞ」
「那智はスポーツ以外はてんでダメなんだ。こんな性格だから本人はあまり気にしてないけどな」
「那智くん、それじゃあ罰ゲームの方お願いしまーす♪」
あ、そういや敗者は真っ裸になって一発芸だったな。あー、俺やらなくて良かった~。
でも、なっちは勝負に負けたのは悔しそうだったけど、罰ゲームってなったらあっさり服を脱ぎ始めた。
「仕方ねぇ。俺の自慢の筋肉を披露してやるか♪」
むしろノリノリ?あ、そっか、見せても羨ましがられる体してるからか。
上半身裸になったなっちは、ドヤッと腕を横にくの字にさせて筋肉を自慢するポーズを取った。
うおー!すげぇ!めちゃくちゃいい体してんじゃん!男として羨まし過ぎる!てか腹の筋肉割れてんじゃん!
「なっち!かっこよすぎ!これ罰ゲームじゃねぇだろ!」
「ふふん♪秋山も頑張ればこうなれるぞ♪」
「貴哉はこのままでいいの」
「同じく。貴哉が香山さんみたいにゴツくなったら嫌だ」
伊織に抱き抱えられて、グイッと後ろに引かれた。空も俺の隣に座って言った。
紘夢は色んなポーズを決めているなっちに更に言った。
「那智くん、下はいつ脱ぐの?」
「……え?」
「だって全裸って約束でしょ?」
「ハッ!そうだった!全身の筋肉披露するんだった!」
なっちはまたもやノリノリでズボンをパンツごと脱ぎだした。その瞬間、俺の目線は伊織の手で塞がれた。えっ!何で!?一瞬なっちの見えたけど、何かとてつもないの見えたような?もっと見たい!
「貴哉は見ちゃダーメ♡」
「何でだよっ!俺もなっちの筋肉が見たい!」
「貴哉が見て良いのは俺のだけだ♡」
後ろで俺を抱き抱えてる伊織に耳元で言われてドキッとした。あ、やきもちか!
俺が目隠しをされてる中、なっちの全身への感想が次々と上がっていった。
「那智くんのやばー!さすがにそこは鍛えられないよな!?」
「計算されたかのように綺麗に付いた筋肉……に連動するかのような……これは凄い」
「香山さん、それ勃ってませんよね?」
ますます気になるじゃねぇか!!
「勃ったらもっと凄えぞ♪見るか?」
「馬鹿野郎!もういいから服着ろ!」
「あはは~♪見たかったな~」
呆れた伊織がそう言うと、なっちがゴソゴソ服を着るような音が聞こえて来た。俺も見たかった~!他の奴のなんて見る機会ねぇじゃん。
「なんだよ、一発芸やらなくて良かったのか?」
「もう十分一発芸でしょ」
ここで伊織の手が離れてやっと視界が戻り、既にズボンを履いているなっちがそこにいた。
みんなの会話だと、デケェって事だよな?それってあの戸塚よりもか?俺が今まで見たので一番って戸塚なんだけど、あれを越えるぐらいなのか?んー、気になる!
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