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2章 文化祭までのいろいろ
俺の邪魔してたのはてめぇか!
しおりを挟む空が丁寧に集めたトランプを切って右隣にいる紘夢、その隣にいる俺、そして伊織の順にトランプを配りながらルールの説明を始めた。
「初めにカードを配ります。自分の手札の中に7があったら出して下さい」
「あ、二枚あったよー?普通に出しちゃっていいのー?」
「俺も二枚あったぞ」
「はい。出して下さい。そしてその7をこうして縦に並べて、時計回りに7の前後の数字を出して行きます」
俺と紘夢は言われた通りに持っていた7をペラっと出すと、空がそれを縦に並べていた。なるほどな。聞いててなんとなく分かったぞ。
「じゃあ桐原さんから時計回りに出していきましょうか」
「オーケー」
伊織はスペードの8を出した。そして次の空はハートの6。思った通りだ。でもこれって最初に7が二枚ずつあった俺と紘夢が勝つんじゃね?次は紘夢の番だけど、これでカード出したらもう三枚出してる事になるじゃん。
「なぁ、これどうなったら勝ちで負けなんだ?」
「最後までカードを持ってた人の負けだよ。ちなみにパスは3回まで」
「へー、面白いじゃん七並べ♪」
紘夢は楽しそうに笑いながらスペードの9を出した。俺はまだ何が楽しいのか分からないから、言われた通り持っていたハートの8を出した。
そして二巡目、三巡目と行ってここである事に気付く。俺はスペードのA、2、3を連番で持ってるんだけど、間の4、5、6が出てないからなかなか出せずにいた。さっさと出してくれねぇかな?
「なぁ、スペードの4、5、6持ってんの誰?」
「どしたの貴哉?」
「いや、俺それ待ちなんだよ。早く出してくんね?」
「ぷっあはは~!貴ちゃんらしい~♪」
「貴哉、それ言わない方が良かったかもな」
俺は普通に言ったのに、俺の様子を伺う空に、いきなり笑い出す紘夢。そして伊織に呆れたように言われた。
「えっ!何で!?どう言う事だ!?」
三人の反応を見て俺はミスをしたのかと焦っていると、同じく七並べ初心者の紘夢が笑いながら説明してくれた。
「貴ちゃん、今の発言で貴ちゃんはスペードの3、もしくはAか2を持ってるって事が周りにバレたのは分かる?」
「当たり前だろ!だからさっさと4、5、6を出して欲しいんだって」
「例えば、その三つを持ってる人達が貴ちゃんのその発言を聞いてわざと出さなかったら?」
「あ?そんなの俺がずっと出せねぇじゃん」
「つまり?」
「つまり??」
「貴ちゃんが出せって言ってもその持ってる人が意地悪してずっと出さないでいたら、最後までカードが残ってた貴ちゃんの負けって事♪それかスペードのAか2を持ってる人の負け~」
「あー!汚ねぇぞ!」
「汚くないよ。そういうゲームでしょ?七並べって」
俺はやっと意味が分かったから、反論すると紘夢が空に確認していた。
「そうですね。出せるカードを持ってるのにワザと出さずにいたり、パスを使って他の人の邪魔をするのも戦略です」
「ドンマイ貴哉~。朝食楽しみにしてるわ♪」
ちょっと待て!バッチリスペードのAまで持ってる俺ってヤバくねぇか!?このままそいつが俺の邪魔をし続けたら俺の負け!?
俺飯なんか作った事ねぇよー!
このままじゃマズイ!せっかく豪邸に来てんだから美味い飯が食いたい!
何が何でも俺の前の数字持ってる奴に出させなきゃならねぇ!てか誰が持ってんだ!?一人とは限らねぇよな?三枚もあるんだから空、伊織、紘夢のそれぞれが一枚ずつって可能性もある。
何かいい方法はねぇか?
俺が焦っている中、ゲームはどんどん進み、スペードの前半部分以外はほとんど埋まっていった。俺は後半になり出せるカードが無くて、パスも三回フルで使っちまった。
いい加減誰が持ってんだよクソ!
「なぁ、提案がある」
「何?提案って」
「貴ちゃんどしたの?」
空がカードを出しながら聞いて来た。そして次の紘夢は自分のカードを見ながらニッコリ笑った。
「スペードの4、5、6持ってる奴に言う。もしそのカードを出してくれたら学食を一週間奢る!好きなメニューでいいぞ!ただし!俺がこの勝負に勝てた時だけだ!」
俺のこの提案に、伊織と空は黙って様子を伺っていた。もうみんなも残り少ないから慎重になってんだろ。てかこの提案は伊織と紘夢にはあまり意味がねぇからな。俺が奢らなくても自分達で好きなの食えるしな。だから今一番カードを多く持ってる空狙いだった。きっと空が持ってるに違いない。俺はそこを狙っていた。
が、一番最初に反応したのは紘夢だった。
「あはは~♡貴ちゃんのその話乗った~♡俺達手を組もうか♡」
そう言って自分の手札の内の三枚をペラっと俺達に向けて楽しそうに笑った。
んなっ!?スペードの4、5、6を持ってたのって紘夢だったのか!?しかも三枚全部だと!?確かにたまにパスしてたけど、こいつまさかずっと演技してたのか!?
「俺の邪魔してたのはてめぇか!」
「貴ちゃんの焦る顔面白かった~♪」
「ちょ、全部一条さんだったんですか?」
「俺以外のどっちかだとは思ってたけど、やっぱ怖ぇな一条は」
ずっとニコニコ笑顔のまま三枚とも隠し持ってたって事かよ!?ひでぇな!そりゃ俺の反応楽しかっただろうよ!
何はともあれ紘夢が俺と手を組んでくれる事になったからこれで俺の負けはないだろ。
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