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2章 文化祭までのいろいろ

伊織~!トランプだって♪

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 紘夢とのゴロゴロ鬼ごっこでヘトヘトになった俺は隅っこの布団でダウンしていた。
 てか途中でなっちが乱入して来たんだけどよぉ!なっちが鬼はマジでヤバイ!俺轢き殺されるかと思ったからな!誰よりもデカいなっちが俺に乗っかった瞬間、一瞬息出来なかったんだ!
 そんななっちは一人でさっさと寝てるしよぉ!


「たーかや♡」


 俺の隣にニコニコ笑顔の伊織がピッタリくっ付いて来た。え、こんなに布団あるのに一緒の布団で寝る気か?


「おう伊織~。機嫌良さそうだな」

「んー?貴哉は何で今日一条んちに泊まるって言い出したのかなぁって思って」

「……あれ?機嫌良いんだよな?」


 笑顔だけど、何か機嫌が良いのとは違うような?
 気のせいか?


「たまには大勢で過ごすのもいいじゃん。紘夢んち広いし」

「早川とも過ごせるから?」

「…………」


 あ、やっぱり機嫌が良い訳じゃねぇのか。
 喧嘩にならないように笑顔で落ち着いて話してるだけか。
 どうやら俺が泊まりを提案したのを気にしてるみてぇだな。
 ここで下手に誤魔化してもバレた時面倒だから正直に言う事にした。


「そうだよ。みんなと一緒ならいいだろ?」

「よく考えたな。どっちが考えたんだ?」

「俺」

「……そっか」


 伊織は笑顔のまま一言だけ言って、俺の髪を触り始めた。今伊織は何を考えてるんだろう?それが分からなくて、俺は伊織をただ見ていた。
 そんな俺に気付いてクスッと笑った。


「なぁ、早川に何買ってもらったんだ?」

「えっと、財布!俺のボロボロだからって」

「へー、意外なもん買って貰ったな?今度見せてよ」

「いいぜ♪伊織は今日どこに行って来たんだ?」

「いつも行く店見て回ってた。貴哉に似合いそうな服いっぱいあったんだ。何着か買ったから今度家で着てみてよ。全部郵送したから」

「お前また俺に服買ったのかよ~?俺の部屋そんな広くねぇんだからクローゼットに入り切らなくなるって」

「だって貴哉の事ばっか考えちゃうんだもん。これ似合いそーとか、あれ着て欲しいーとか。何で今隣に貴哉いないんだろうとか」


 ここで伊織の声が低くなった。でも、怒ってる訳じゃなく、その表情は寂しそうだった。
 

「伊織……」

「今頃早川と一緒なのかなーって思うとすげぇモヤモヤした。何度も電話して会いに行こうと思った」

「でもしなかったな」

「……ああ。我慢したよ。貴哉が嫌がるからな」

「別に嫌がったりはしねぇよ」

「じゃあ、早川といるのに俺が電話したら会ってくれてたか?」

「それは……会ってたよ」

「ふーん」

「何だよ?」

「別に~?」


 伊織はもう寂しそうな顔じゃなかった。いつものような余裕ある顔で、腕を頭に回して仰向けに寝転がった。
 そして少し離れた布団から空と何かをしていた紘夢が俺達を呼んだ。


「貴ちゃんといーくんも一緒にやらなーい?楽しいよ~?トランプ~♪」


 何?トランプだと?めちゃくちゃ楽しそうじゃねぇか♪俺は起き上がって、隣にいる伊織を誘った。


「伊織~!トランプだって♪俺達も行こうぜ♪」

「うし!行くか!」


 伊織はニコッと笑って起き上がり、俺の頭を撫でた。良かった。いつもの伊織だ。

 俺と伊織で二人の近くに行くと、既に二人でやっていたのか、空が元気無さそうに散らばったトランプを集めていた。


「空どうしたんだ?楽しくねぇの?」

「だって一条さんめちゃくちゃつえーんだもん。俺もトランプ得意なのにぃ」

「トランプって誰かと初めてやったけど、面白いね!俺こういうの好きみたい♪」

「初めて!?お前そんな奴に負けたのか!?」

「初めてって言うから余裕とか思ってたからショックがデケェの!」

「あ、四人でやるならさ、何か罰ゲームとかやらない?負けた人は明日の朝ごはん作るとか~♪」

「おっいいね~!」

「そりゃ負けられねぇな」

「待って!この人マジ強いからな!?俺はやりたくねぇ!」

「何ビビってんの早川くーん?」

「ビビってなんかないですっ!」

「なぁ、トランプで何やんの?俺ババ抜きぐらいしか知らねぇけど?」

「じゃあババ抜きでいいんじゃない?俺も空くんに教わったババ抜きしか分からないし」

「いや、ババ抜きはやめましょ!?今度は七並べにしましょう!貴哉と一条さんにはやりながら教えますんで」

「七並べ~?面白そ~♪」

「え、貴哉七並べ知らねぇの?」

「知らねぇ。どうやるんだ?」


 トランプはガキの頃に少しやった程度だ。ババ抜きを良くやった気がする。最後までジョーカーを持ってた奴が負けっていうルールだろ?
 七並べってのは初めて聞いたな!でもトランプって遊びだし、面白いんなら何でも良かった。

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