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2章 文化祭までのいろいろ
※ それならさ、どっちも選んじゃえば良くね?
しおりを挟む※伊織side
演劇部の活動後、俺は一人でボラ部部室へ来ていた。貴哉は二之宮と掃除だから食堂に残った。
今日はTシャツのデザインを決める日。既にみんなで話し合いしていて、票も入っていた。後は俺と貴哉だけと言う場面だった。
「一条と中西のがそれぞれ三票ずつか」
部員達を花に例えたデザイン性の高い一条と、真ん中にゆるい文字でボランティア魂と書かれて横にはゆるキャラの猫の絵が描かれたポップな中西の一騎打ちになっているようだった。
俺も一応提出はしたけど、少し手を抜いて持っているTシャツのデザインを真似た。その理由はみんなの作品が選ばれて欲しかったからだ。だからどこにでもありそうなありきたりなデザインをした。
貴哉なんかは桃山に描いてもらうと言う貴哉らしいやり方で、那智のも筋トレ!って殴り書きされた文字だけの那智らしいものだった。
広瀬のデザインはパソコンで書いたのでとても綺麗な線で描けていて、クールなイメージ。
早川は俺と似た感じの普段着にも使えそうなアルファベットが並んだデザイン。
怜ちんは怜ちんで絵が得意なだけあって、絵がメインの、ボラ部部員達を漫画調にしたそれぞれの特徴を捉えた動きのあるデザインでよくこんな短時間で仕上げたなってぐらいの作品だった。
「いーくんはどっちがいいと思うー?」
「後はいーくんと秋山の票だけだぜ~」
「こりゃ迷うなー。どっちも良いもんな~」
「本当どっちも良いですよね。一条さんのは部員を花に例えていて、花言葉もその人に合った物になっているし、中西のも唯一ボラ部の名前が入っているから捨てがたい」
「それならさ、どっちも選んじゃえば良くね?」
俺はどちらを選ぶ事なくそう言うと、みんな目を丸くして見てきた。俺変な事言ったか?
「もし仮に俺が一条に票入れても貴哉が中西のに入れたらまた引き分けだろ?それならどっちも採用すりゃいい」
「二種類作るって事?それだと部員分作るのに倍の値段かかるな~」
「なるべく抑えたいですね。やっぱりどちらかに決めるべきじゃないですか?」
一条と早川が予算の事を考え始めた。そりゃいきなり二枚も作るなんて贅沢だろ。そんな雰囲気の中、俺は一条と中西に質問してみた。
「なぁ、一条と中西はお互いのデザインどう思ってんだ?」
「俺は直登くんのシュールで面白いなと思うよ。学生っぽくて分かりやすいしね」
「俺も一条さんのカッコよくて好きです。お花も自然を連想させてボラ部のイメージアップにも繋がるんじゃないですかね?」
「よし!ならこうしよう!この二つの作品をコラボさせるんだ♪」
俺は二人の意見を聞いて大胆に提案した。
一見ジャンルの違う二つのデザインだけど、みんながどちらも良いと言うなら合体させりゃいい。それなら作るのは一つのデザインだし、コストも抑えられるだろ?
後は今となっちゃボラ部の頭脳兼金庫番である一条が何て言うかだな。
「いーくん、コラボってどう言う事?」
「簡単さ。中西のボランティア魂と一条のみんなのフラワーを同じTシャツにしちゃえばいいんだ♪」
俺の頭の中では既にイメージは出来てるけど、みんなにはまだイマイチ伝わってない感じだった。
ここで一条がパソコンをいじり始めて、画面をみんなに見せて来た。
「いーくんはこう言いたいのかな?即席で作ってみたけど」
一条が作ったのは、ボランティア魂♡のポップな文字を囲うようにそれぞれの花が円を描いていた。一番下の部分の花と花の間にはボランティア魂のユル猫もいた。
「それそれ♪即席でもめちゃくちゃいいじゃん♪」
「うわ!可愛い~♪ちゃんと猫ちゃんもいるー♡」
「すごーい!本当に俺と一条さんのデザインがコラボしちゃった~」
「さすがいーくんだな!俺はこのデザインに投票するぜ♪」
「俺も意義無しだね。これならシンプルかつ華やかさもあるから万人受けするね。数馬くんはどう思う?」
みんなも気に入ったみたいだな。ずっと一人黙っていた。いや、大勢いると話せなくなる広瀬に一条が問い掛けると、ビクッとして目を丸くした。みんなも数馬に注目してる。
「あ、お、俺も……いいと、思います……猫ちゃん可愛い」
「よし!決まりだな!」
「待って、貴ちゃんの意見も聞かないと~」
「あーでもここにいる全員がいいって言ってるんだし、仮に貴哉が反対しても決定じゃないですか?」
「あいつなら何でも良いって言いそうだしな。自分の分を桃山に頼むぐらいだし」
「確かにね~。それじゃあ貴ちゃん抜きだけど、このデザインで決定ね~。直登くん、ちょっとデザインし直すから残って~」
「分かりました~」
そんなこんなで無事まとまったボラ部Tシャツ作り。仕上がりが楽しみだな。一条と中西はパソコンを使って最終的なデザインを仕上げるみたいだ。
これでボラ部の活動も終わったし、俺は食堂の掃除をしてる貴哉を迎えに行こうかとしてると、早川に声を掛けられた。
「さすがですね。桐原さんは」
「ん?何の事だ?」
「二つのデザインを俺達は一時間ぐらい掛けてどちらにするか決めていたのに、ひょいっと来てものの数分で解決しちゃうなんて」
「あー、たまには部長らしく部をまとめねぇとだからな♪何、お前が俺を褒めるなんて珍しいじゃん。いつもそうなら可愛いがってやるのによ」
「別にいりませんよ。俺もちゃんと桐原さんの事は認めてます。最近、貴哉が桐原さんを選んだ理由も分かって来てますし」
「……本当に分かってんのかね?」
早川はそう言うけど、俺はちゃんと分かってるのか疑問だった。貴哉は俺だから選んだんじゃねぇ。そりゃ俺を選んだって形にはなるけど、早川の事をこれ以上傷付けない為に別れを選んだんだ。
そもそも俺が貴哉を好きになったりしなければ今でも二人は付き合ってただろ。
だから早川にそんな事を言われたら素直に喜べなかった。
「さぁ。少なくとも俺は負けた。それはちゃんと分かってますよ」
ニコッと笑う早川。本当、貴哉抜きで普通に出会ってたら愛想も要領も良いから良い後輩として相手してただろうな。
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