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2章 文化祭までのいろいろ
見舞いってこんな大勢で行って良いものなのかよ!?
しおりを挟む俺は今、電車に乗って猿野宅へ向かっていた。
愉快な仲間達と共に。
「吉乃~♪肉まん食べたい肉まん~♪」
「またかよっ!お前毎日食ってるじゃん!」
紘夢、雉岡に。
「今日は人数多くて賑やかで楽しいね♪」
「そうだな怜ちん~!たまにはこういう大勢もいいよな!」
怜ちん、なっち。
「大勢なのは楽しいけど、何で早川くんがいるのかなぁ?君、猿野と関係ないんじゃないのかなぁ?」
「貴哉が心配だからに決まってるでしょ。それよりもそのキャラまだ続けてたんですか?」
伊織と空。
「てか何で薗田さんまでいるんですか?来るなんて聞いてねぇっすよ?」
「演劇部OBとして見舞うのは当然だろう?猿野くんは裏方の縁の下の力持ちだからね~」
犬飼に詩音。
てかよ~!
「見舞いってこんな大勢で行って良いものなのかよ!?」
「猿野だし問題ないっしょ」
伊織は軽く言って、俺の隣に来る。
そして雉岡と歩いていた紘夢が笑いながら言った。
「にしても詩音さんまでいるなんて、葵くんも誘えば良かったかなぁ♪あはは♪」
「やめろ!ただでさえ濃いのが集まってんだ!これ以上面倒な奴を呼ぶな!」
ツッコミどころ満載なこのメンツにそんな爆弾投下してみろ!猿野の見舞いどころじゃなくなるだろ!
「ところで貴哉くん、二之宮くんとは和解したのかい?」
「和解?何の事だ?」
「彼が悩んでいたからだよ。貴哉くんに厳しくし過ぎて嫌われないか心配だってね」
「あはは!あいつ詩音にもそんな事言ってたのかよ!ほんと可愛い奴だな~」
「可愛い!?なぁ貴哉!二之宮ってどんな感じだったんだ!?」
「おわっなんだよ伊織、押すなよ」
「そう言えば今日のいーくん、やたら七海ちゃんのとこ行ってたよね?茜ちゃんの事も気にしてるし、何かあるのー?」
「チワワんとこだぁ?そうなのか?伊織」
「行ったけど、別に世間話してただけだよ?」
「だよ?だってー!いーくんどーしたんだよ!キャラじゃねぇだろ!」
「そうなんですよ!桐原さんの頭のネジが取れたみたいなんです!だから早く帰って休んで下さい!」
「早川くんひどーい。貴哉ぁ?早川がいじめるよー」
「いじめダメだぞ空」
「だから貴哉は何で普通にしてられるの!?桐原さんがおかしくなっちゃったんだぞ!?」
「おい、吉乃、こいつらが行く事、トモは知ってるのか?」
「んーん。俺と誠也が行くって言ってあるだけ」
「……トモ可哀想に」
「知らない間に人増えてて言うの面倒になったんだよ」
そんなこんなで電車を降りた後、しばらく歩いて雉岡のナビで猿野んちに到着した。
はぁ、既に帰りたいぜ。
猿野んちはまぁまぁデカかった。庭が広くて綺麗に生え揃った芝生に、大きな池。そしてシャッター付きの車庫には、高級車が停まっていた。
「猿野ってばなかなか良い家住んでんじゃん。金持ちなのか?」
「トモお坊ちゃんは金持ちよ。三兄弟の末っ子よ」
俺が大きな家を見上げて聞くと、雉岡が答えながら慣れたように門の横にあるインターフォンを押した。
すると、すぐに女の声がした。
『はい?どちら様?』
「トモくんの友達の吉乃……と、その御一行です。トモくんの様子見に来ましたー」
『あら、吉乃くん♪朝も来てくれたのにありがとう。今開けるから入って♪』
ガチャンと音がして雉岡が黒い門をカラカラと開けた。そして俺達は雉岡の後をついて中に入る。
玄関のとこにはさっきの声の女の人か、ニコニコ笑顔の綺麗な女の人が立っていた。フワッとした綺麗なライトブラウンの長い髪はパーマか何かで巻かれていて、たまに空がやるようなお洒落な感じだった。
「まぁ、こんなにたくさんお友達が♪友ちゃんも喜ぶわ~。上がってちょうだい」
「あ、こんなに大勢ですみません。迷惑じゃないですか?」
「迷惑だなんてとんでもない!友ちゃんも体調良くなったから。客間にお茶の用意するから待っていてちょうだい♪今友ちゃんも呼ぶわね」
俺達は綺麗な女の人に案内されて客間とやらに通された。家の中は洋風な作りで、紘夢んちほどのデカさじゃないけど、あの豪邸の現代版って感じ!客間も俺達男だらけ9人が入ってもまだ余裕があるぐらいの広さだった。
あの猿野がこんなに良い家に住んでたなんてな~!人って分からないもんだな。
俺は雉岡に気になった事を聞いてみた。
「なぁ、さっきのって猿野の姉ちゃん?似てないのな」
「あいつは三兄弟の末っ子だって言っただろ。さっきのはトモのお母さんだよ」
「え!あれ母ちゃん!?若くね!?」
「何言ってるの~、貴ちゃんママも若いでしょ」
「いやいや、俺の母ちゃんは若くてもあんなに女っぽく綺麗にしてねぇもん!」
同じ母親でもこうも違うとはなー!母ちゃんもお洒落すりゃ綺麗だとは思うけど、あんなに柔らかい雰囲気を出すのは絶対無理だ。
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