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2章 文化祭までのいろいろ
違う。緊張してるんだ
しおりを挟む猿野達がいなくなった後、残されたメンバーを見て思う。俺達何でこのメンバーで猿野の家で紅茶飲んでんだ?
良く考えたら異様な光景だ。
「貴哉、そろそろ帰るか?」
「ん?ああそうだな」
隣にいた伊織に聞かれた。すると、みんなも帰る雰囲気になっていた。
ふと俺は何かを思い付いて一人で立ち上がった。
「ちょっと猿野と話して来る」
「何を話すんだ?」
「良い機会だし、ケリつけて来るわ」
俺のセリフにみんなはキョトンとしていた。
正直ほっとけばいいとは思うけど、毎回飛び付かれたり、追い掛けられたりしてるのもどうかと思うんだ。こうしてボディガードなんか連れて歩かなくてもいいように猿野と話し合うつもりだ。もちろん二人で。
「それなら俺も行くわ」
「いや、伊織はここで待っててくれ」
当たり前のように伊織も立ち上がったから、俺は断った。すると、険しい顔をし出した。
「ダメだ。猿野と二人きりになんてさせねぇよ」
「大丈夫だって。ここにはお前もいるし、猿野の母ちゃんもいるじゃん。悪い事なんて出来ねぇだろ」
「貴ちゃん、何を話すって言うの?それ次第では俺も止めるよー?」
紘夢がニコニコ笑顔でそう言った。
「猿野にはハッキリ付き合えねぇって言うつもりだ」
「そんなの言っても無駄だと思うけど?」
「付き合えねぇけど、友達にはなれるだろ?猿野を説得して、普通に友達として接してくれねぇから頼んでみるんだ」
「友達ね~。貴ちゃんがどうしてもって言うならいいんじゃない?後はいーくん次第だね」
紘夢に話を振られて伊織は俺を見て来た。
俺は真っ直ぐに伊織を見て答えを待った。
「……はぁ、行って来い。その代わり何かされたら叫べよ?いや、される前に叫べ」
「分かった!んじゃ行ってくる!」
俺は猿野の所へ行く事を許してくれた伊織の肩をポンッと叩いて、一人で客間を出た。
猿野達どこ行った?家の外には行ってねぇと思うけど……
初めて来た家だから猿野の部屋も分からねぇし、俺は廊下でキョロキョロしてると、雉岡が一人で戻って来た。
「あれ、秋山どした?トイレか?」
「ううん。猿野どこ行ったんだ?」
「トモなら今誠也が落ち着かせてるよ。あいつ薗田さんの前なのにあんな事言いやがって……なんでトモを探してるんだ?」
「二人で話がしたいんだ。連れてってくれ」
「トモと?ふーん。いいけど、良く桐原が許してくれたな」
「まぁな!あいつはあと一週間は俺のパシリだからな♪」
「?トモの部屋まで案内するよ」
俺の言葉に頭にハテナを浮かべていたけど、雉岡は歩きだして、階段を登って行った。
にしても綺麗な家だなぁ~。なんか伊織んちと近いんだ。紘夢んち程の豪邸じゃないけど、広くて大きい部屋がたくさんある家。デザインなんかがお洒落で高そうな感じ。
雉岡は二階の廊下の先にある部屋の前で止まった。部屋のドアには「とものり」と平仮名で名前が書いてあった。猿野の名前ってとものりって言うんだ……
「おーい?トモー、誠也ー?開けるぞー?」
雉岡は一言声を掛けてドアを開けた。
中には正座している猿野と、それを仁王立ちで見下ろす犬飼がいた。
「って、秋山!?何でここにいるんだ?」
「秋山ぁ♡」
「ちょっと猿野と二人にしてくんね?話そうぜ猿野」
「え!秋山と二人になれるのか!?ひゃっほー♡」
「お、おい正気か?お前トモに追い掛け回されて嫌がってるじゃねぇか」
「だからだよ。今日それを辞めさせるんだ」
「なるほどねー。誠也行こうよ。秋山なら大丈夫だろ」
「あーもう!知らねぇぞ!俺は止めたからな!」
そして犬飼と雉岡は猿野の部屋から出て行った。
猿野と二人きりになり、俺は改めて部屋を見渡す。猿野の部屋は広かった。そして汚かった。床には服や物が散乱していて、部屋の真ん中にあるベッドの上にはノートパソコンとゲームのコントローラーなどが置いてあった。勉強机っぽいのもあったけど、上には食べかけのお菓子や、飲みかけの飲み物などでごちゃごちゃしていた。
俺の部屋のがまだマシだぜ。
「猿野の部屋の中は猿野らしいんだな」
「…………」
ここで俺は猿野の様子がおかしい事に気付く。
さっき客間に現れた時はいつものようにうるさかったのに、今は下を向いて俺が話し掛けても答えなかった。
まさか、犬飼に説教されて反省してるのか?いや、そんなタマじゃねぇだろ。
「猿野?具合悪いのか?」
「違う。緊張してるんだ」
「緊張?」
ずっと正座したままの猿野は、顔を少し上げて俺を見て来た。その顔は、眉毛が半分しか無いから分かりにくいけど、照れてるような、困ってるような顔に見えた。何だそれ!?
「何で緊張なんかしてるんだよ!さっきまで騒いでたじゃねぇか!」
「それはみんなもいたからだっ。秋山と二人きりになるとか初めてじゃん……好きな奴と二人でいるのって初めてだから、ほら緊張するじゃん……」
恥ずかしそうにモソモソ喋る猿野は、いつもの猿野じゃなかった。デカい体を丸めて大人しそうにしてる姿をみると、何か可愛いく見えた。
「あはは!何だよお前~!いつもは堂々と突進してくる癖に変な奴だな~♪」
「……可愛い♡」
いつもと違ってポワーンとした顔して俺を見てくる猿野。俺はそんな猿野の目の前にドカッと胡座をかいて座った。
「なぁ、俺は伊織と付き合ってんだ。だからお前とは付き合えねぇ。悪いけど諦めてくれねぇか?」
「俺は秋山と付き合えなくてもいい。このまま好きでいちゃダメなのか?」
「別にいいけど、抱き付いて来たりするのはダメだ。あと変な事言うのもやめろ」
「うう……だって秋山見てるとムラムラするんだもん!」
「だったら諦めるんだな。友達にもなれねぇな」
「な、なぁ、桐原がいなかったら俺の事好きになってくれるのか?」
「んー、多分ならない。俺、伊織の他にも好きな奴いるし、伊織がいなかったらそいつと付き合ってるよ」
「早川か!」
「あ、空の事知ってるんだ?そ♪俺どっちも同じぐらい好きなんだわ。他なんて考えらんないぐらいにな」
「じゃあ早川もいなかったら?俺はそれでも秋山に好きになってもらうのは無理なのか?」
「それはどうだろうなー?まぁそん時にならなきゃ分からねぇかな!でもさ、俺猿野と友達になりてぇって思うんだ。だから嫌いじゃないぜお前の事」
「好きがいい!」
「それはまずは友達になってからだな。一応お前には酷え事されたからな。もう気にしてねぇけど、俺らって出会いが最悪だったろ。好きになるのは友達になって、遊んだりして仲良くなってからじゃダメか?」
「ダメじゃない……それで秋山に好きになってもらえるなら……はぁ」
何とか猿野と話し合う事が出来て、俺の気持ちも分かってもらえた感じだけど、猿野はため息をついて気に入らないと言う顔をしていた。
「何だよその顔はー?言いたい事があるなら聞くぞ」
「俺、誰かをこんなに好きになったの本当に初めてなんだ。だから、好きだって伝えたくて今までやってたけど、ダメだったんだなって思ったら……嫌な気持ちになった」
「そっか。猿野と俺似てるかもな♪俺も思い通りにいかないとムカつくぜ?」
「だよな!何で言う事聞かねぇんだってなる!」
「あはは!分かるわー♪なぁ、猿野ってとものりって言うんだろ?」
「そうだ。猿野友則。誠也達からはトモって呼ばれてるぞ」
「知ってるっての。俺もこれからはトモって呼ぶわ。よろしくなトモ!」
「お、おう!よろしく!……貴哉!」
その後俺とトモは笑い合った。
しばらくいろんな話をして連絡先も交換した。
その間、トモはたまにエロい事言ったりしてたけど、俺に触れる事はなかった。
少しずつでもいいから友達になろうと思った。
話終わって廊下に出ると、伊織と空と犬飼がいて俺は三人に怒った。どうやら心配だったらしく、盗み聞きしてたらしい。
他の奴らは既に帰っていた。
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