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2章 文化祭までのいろいろ

戸塚ぁ!頑張れよ~♪目指せ生徒会長~!

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 体育館の中に全校生徒がぶっ詰まっていた。そんな中俺は立ちながら睡魔と戦っていた。
 初めに現生徒会長である神凪の挨拶があったんだけど、そこまでは普通にしていられた。その後からは誰が何を話していたのか覚えてないぐらいぼんやりとしていた。
 新しく生徒会役員になる奴らの自己紹介やら意気込みやらを聞かされてたんだけど、正直興味が無いからどうでもいい。神凪の後は侑士がいたのは覚えている。その後からはみんな同じ奴に見えて頭をこっくりこっくりしていた。


「おい秋山、玉ちゃんが睨んでるぞ」
 

 隣にいた奴に小声で言われて教師がいる方を見ると、玉山が鬼の形相でこちらを見ていた。
 整列する時は名前順で二人ずつ並んでいる。だから、俺は大抵一番前になる。今も一番前にいるんだけど、どうやら眠そうにしてるのがバレたらしい。あーこりゃ呼び出されるなぁ……
 眠い目を擦って少し頑張ってみる。今壇上にはやっぱり知らない奴がマイクを使って自分の事をアピールしていた。そしてそいつが喋り終わって次の奴が指名される。俺はまだいるのかよと心の中で舌打ちをして次に壇上に上がる奴を見た。

 ここで俺の目は一気に覚めた。


「次は書記です。一年A組戸塚春樹くんお願いします」


 正に今壇上に上がっているのは俺の知る鉄仮面だった。あいついつの間に!?え!?書記!?何であいつがあんなとこにいんの!?


「お、おい!あれってうちのクラスの戸塚だよな!?」

「そうだよ。てか目立つから話掛けるなよ」


 隣の奴に確認すると、やっぱりあの戸塚だった。
 えー!あいつ生徒会やるのかよ!
 まぁ似合わなくはねぇけど、こりゃ驚いたなぁ。

 戸塚はステージの上にある教卓のデカイ版の上にあるマイクを使って普通に話始めた。


「一年A組、戸塚春樹です。この度生徒会書記に推薦されたので、自ら立候補する事にしました。分からない事が多々ありますが、先輩達の指導の元精一杯頑張っていくつもりですのでよろしくお願いします。そして、僕が書記に任命された際には……」


 ふへー、さすが戸塚だなぁ!しっかりした挨拶してやがる。知ってる奴の登場で俺は少しワクワクしていた。
 戸塚は最後までキッチリ話し終えると、一礼して壇上から降りた。
 よし、同じクラスだし俺からエールを送ってやるか♪


「戸塚ぁ!頑張れよ~♪目指せ生徒会長~!」

「っ!!」


 誰一人喋る事なく静まり返っていた体育館に、俺が列の先頭から野次を飛ばした事によって体育館中がざわつき始めた。
 当の戸塚はめちゃくちゃ驚いた顔をした後、フイッと顔を背けてそのまま立ち去った。
 何だよあいつ!シカトかよ!せっかく応援してやってるのに!

 そして俺に近付く一人の男。それに俺が気付いたのはその男に腕をグイッと引かれた後だった。


「この馬鹿者が!お前は何で大人しくしていられないんだ!こっちへ来い!」

「た、玉山ぁ!?いきなりなんだよっ!」


 そして俺はそのまま玉山に腕を引っ張られて体育館の外へ連れて行かれた。
 途中でヒソヒソ話す声や笑う声などが聞こえて、他の教師達もそれを静める為に生徒達に声を掛けていた。

 玉山に連れて来られたのは体育館の入口の玄関だった。掴まれていた腕をやっと解放されて、俺がさすっていると、玉山はまた怒鳴って来た。


「ちゃんと全校集会に参加したと思ったら何だあれは!俺に恥をかかせやがって!それにその前から眠そうにしたり怠そうにしたり!そんなのお前だけだぞ!」

「眠そうにしてたのは悪かったよ!でも何でクラスメイトを応援しちゃダメなんだ?戸塚が生徒会入りしたら玉ちゃんも鼻が高いだろ?」

「あの場であんな風に応援する奴があるか!せっかく戸塚も立派にやり遂げたのに、お前の行動のせいで笑い者じゃないか!最近頑張っていると思っていたのにお前と言う奴は……」


 ああ、また長い説教が始まった。久しぶりのこの感じに、俺はまた睡魔に襲われた。
 そんな俺にぐちぐち言ってる玉山の後ろからひょこっと教頭が現れた。


「あ、教頭!」

「は?教頭先生だと?……ってうわっ!教頭!どうしてここに!?」


 振り返ってニコニコ笑顔の教頭にビックリしてる玉山。教頭まで俺を説教しに来たっての?


「おはよう秋山くん。君は本当に面白い!」


 え?褒められた?


「きょ、教頭!今私の方からしっかり言い聞かせますので!」

「もう良いでしょ。それに秋山くんは戸塚くんが喋り終えてステージが降りてる最中に野次を飛ばしてたよね?戸塚くんの邪魔をした訳じゃないから僕は問題無いと思うよ」

「で、ですが、あれじゃ場の雰囲気を壊す事に……」

「正式な式とかにやられたら僕もつまみ出すけど、あれは新しい生徒会役員になる子達の紹介です。彼らが話してる最中に割って入るような行為は罰するべきですが、あれは戸塚くんを応援する発言でしたし、問題ないでしょう。むしろ僕は友人を応援する秋山くんは偉いと思うよ」

「そ、そうですか……」


 教頭は俺じゃなくて玉山に向かって説教していた。何この状況!俺何て言えばいいんだよ!?


「ですが、それはあくまでも僕の意見です。秋山くんの最も近しい指導者は玉山先生です。よって、秋山くんは玉山先生に従うべきですよ」

「へ?ちょっと待って?て事は俺やっぱ怒られんの?」

「玉山先生が怒るなら怒られるでしょうね~♪あはは」


 あははじゃねぇよ!何だよさっきまで味方してたくせに今度は玉山の味方かよ!ほんと読めねーなこの人!


「いや~、玉山先生、僕も秋山くんと話がしたくてでしゃばってしまいました。指導中にすみませんでした。じゃあ秋山くん、来週の月曜日ね♪」

「いえ、私も勉強になりましたっ」

「お、おう」


 そしてほっほっほーと高らかに笑って教頭は再び体育館の中へ消えて行った。何だったんだあの人?
 残された俺と玉山は何となく気まずかった。


「なぁ玉ちゃんよ、騒いだりして悪かったよ。今度からは玉ちゃんの言う事聞くよ」

「そ、そうか。分かればいいんだよ。俺も頭ごなしに叱ったりして悪かった。戸塚の事、応援してやろうな」


 あれ?何か玉ちゃんと仲良くなっちゃった?
 その後俺は列に戻される事はなく、ずっと玉山の隣に居させられた。これはこれで酷い罰だ……
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