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2章 文化祭までのいろいろ
俺は学校の壁壊したりしねぇよ
しおりを挟む全校集会の後、俺はみんなの前で戸塚に頭を下げて謝った。
俺達より少し遅れて戻って来た戸塚を待ってましたと言わんばかりに、ドアを開けた戸塚に駆け寄って今頭を下げている。
「さっきはごめん!戸塚の気持ちも考えずに舞い上がってお前の晴れ舞台にあんな事したの反省してる!本当にごめんなさい!」
と言うのも、空や直登に「俺らは面白かったけど、真面目な戸塚はどう思うだろうな」と言われたからだ。確かに、戸塚はあまり目立つ事は好きそうじゃない。教室でもいつも一人で本読んでるし、騒いでるのを見た事なんて一度もない。
そんな男が全校生徒の前であんな風に応援されて喜ぶはずがない。
きっと数馬だったら倒れて病院行きだろう。
頭を下げつつ、何も言わない戸塚が気になりチラッと見てみると、ジッと俺を見ていた。
怖っ!無言で見てるだけとか一番辞めて欲しいんだけどっ!
てか俺はいつ頭を上げていいんだ!?早く何か言ってくれ!
心の中で悲鳴を上げていると、戸塚のため息が聞こえて来た。
「もういい。頭を上げろ秋山」
「えっいいの!?」
許しを得て真っ先に頭を上げると、今度は薄く笑っていた。あの鉄仮面が笑ってるー!
これにはクラスの奴らもどよめいていた。
「あの時はとんでも無い事をしてくれたと怒りしかなかったが、今では感謝している。声を掛けてくれてありがとう秋山」
「いや、俺が悪かった!もうあんな事はしな……い?えー!?ありがとう!?何でぇ!?」
「あの後、神凪さんに呼ばれて少し話をしたんだ。良い友を持ったなと楽しそうに笑っていたよ」
「神凪がそんな事言ってたのか?」
「ああ。神凪さんが対等である生徒の上に立つには人望、人脈も大切だと教えてくれた。今日の俺の挨拶が他の人と同じく終わる所に秋山が華を添えてくれたと。俺は恥をかいただけだと思ったが、神凪さんにそう言われて普通じゃないのも悪くないなと思えたよ。今回は前向きに捉えて秋山に感謝する事にしたんだ。だから気にするな」
「そ、そうかぁ!戸塚怒ってないなら何でもいいや♪」
相変わらず戸塚と神凪の言い方は難しくて半分は分からなかったけど、半分は分かった。とにかく戸塚は喜んでくれたって事だ♪
俺はホッとして、自分の席に戻ると直登が驚いた顔して見てたから俺は勝ったと言わんばかりにピースしてやった。
「へへーんだ♪戸塚にお礼言われちまったぜ♪」
「信じられなーい!春くんてほんと変わったよね~!前だったら絶対あんなの嫌がるのにさ」
「最近俺と戸塚仲良いからよ~」
「貴哉といると元気になれるよね。きっと戸塚も貴哉といて明るくなれたんだよ」
「数馬良い事言うじゃねぇか♪とにかく俺は間違ってなかったんだ」
「確かに盛り上がったよ?でも学年主任とかめちゃくちゃ怒ってたし、玉山先生が貴哉を連れ出さなかったら学年主任に捕まってまだ怒られてたんじゃない?」
「げっ!そうだったのかよ!まさか玉山の奴、学年主任から俺を守る為に!?俺の事大好きじゃねぇか!」
「何だかんだ玉山先生は貴哉の事想ってるよね。手のかかる子ほど可愛いってやつぅ?」
「それならお前もだろ。俺は学校の壁壊したりしねぇよ」
「あれはたまたま壁が脆かっただけだもん!」
「直登、そんな事したの?」
「ちょっと壁ドンしただけだって!」
「壁ドンして壁ぶち破るとか数馬気を付けろ。迂闊に壁ドンされたらお前潰されるぞ」
「もー!過去の話だろー!」
そんな話をしてたら玉山が入って来てホームルームが始まった。一限目はほぼ全校集会で潰れたから何か変な感じだった。
そして玉山は俺達にプリントを配りながら言った。
「今から投票用紙を配るから、それぞれ丸を付けて提出する事ー!委員長集めて昼前までに届けてくれ」
あー、さっきみんなの前で話してた人達に投票するのね。てか侑士と戸塚ぐらいしか覚えてねぇよ。
配られたプリントを見てみると、縦書きで役職と名前があって、その下に丸を付けるであろう空欄があった。
役職は会長、副会長、書記二名、会計二名……ん?会長んとこは侑士しかいねぇぞ?てか副会長も、書記も会計も、定員分の名前しかなくね?
「なぁ、直登ー、これどゆ事?会長の立候補は侑士だけって事だよな?これ、全員侑士に投票しろって事?」
「ううん。支持したくないなら丸付けなくていいんだよ。もう会長になるのは前田さんだけど、この投票で支持率が分かるんだよ。ちなみに春くんが立候補してる書記も二人に丸してもいいし、どちらにも丸しなくてもいいんだよ」
「え、投票って何人かいて、その中から一人を選ぶんじゃねぇの?」
「うちの学校の場合はちょっと変わってるかもね。まず、次期生徒会長は現生徒会長が任命するんだよ。だから前田さんの事も神凪さんが任命したんだよ。それだけだと他の生徒達からどれだけ支持されていて、期待されてるか分からないからこうして俺らに投票させるって訳」
「へー、じゃあ俺がやりたいって言ってもダメなんだ」
「貴哉の場合、門前払いだろうね」
「やらねぇけどな」
なるほどな~。直登の説明で何となく分かったけど、俺からしたらどっちにしろ知らない奴らばっかだし、会長の侑士と、書記の戸塚にだけ丸しておいた。
にしても戸塚が生徒会ね~。あ、もしかして最近良くいなくなるのって生徒会絡みか?それぐらいしか戸塚に予定なんてねぇよな~。
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