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2章 文化祭までのいろいろ

はぁ、何やってんだ俺……

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 放課後、俺は演劇部を途中で抜け出して帰ろうと玄関に向かっていた。
 理由は茜のスパルタ指導に耐えられなくなったからだ。くそう!毎日毎日俺に怒鳴りやがって!茜だからってこの四日間我慢してたけど、もう限界だ!二人で練習してた時はあんなに優しくて楽しかったのに、今では他人みたいに怒鳴って来やがる!化けの皮が剥がれたか!?
 怒られるのは俺だけじゃねぇけど、それでも茜にあんな態度取られるのはもう我慢出来ねぇ!

 怒りに身を任せて廊下を歩いていたけど、ふと鞄を食堂に置いて来た事を思い出す。スマホと財布はズボンのポケットにある。悩んだけど、どうせ空っぽだしと思ってそのまま帰る事にした。

 俺は小休憩になった時を狙って抜け出して来たんだ。誰にもバレないようにこっそりと。だからまだ誰も気付いてねぇと思うけど、今の内に帰らねぇと、伊織辺りが探しに来ちまうからな。一応ボラ部だし。


「はぁ、何やってんだ俺……」


 一人になって少し冷静になって、ちょっと後悔。
 部活で友達に怒られたからって逃げ出すとかこれじゃ一学期までの俺じゃねぇか。
 面倒くせぇからって朝起きずに昼に登校したり、勉強なんかやってられっかってテストでは名前すら書かなかったり。
 それを見直す意味で神凪や玉山が俺の為に用意してくれたミッションなのに……

 もしここで逃げ出したら俺どうなるんだ?
 ミッション失敗で、退学になるのか?
 前だったら母ちゃんに怒られるのが嫌で我慢して戻ってたけど、今は違う。母ちゃんじゃなくて、他の奴らに呆れられるのが怖かった。

「貴哉~、また逃げ出したんだって?茜さんに謝って戻りなよ」
 空ならこう言うか?

「秋山は根性だけはあると思ってたんだがな」
 そして茜はこう言う。

「ギャハハ!貴哉だってサボりたい時もあるよな~♪一緒に遊びに行こぜ~♪」
 桃山は喜びそうだな。

「サボりぃ?そんな半端な気持ちで演劇部に来てたの?ちょっとうちらの事舐め過ぎじゃない?」
 チワワの甲高い声が俺の脳みそを突き刺す。

「まぁまぁ、貴ちゃんだって頑張って来たし、たまには立ち止まってもいいじゃん♪」
 紘夢はこの後どうすれば正解か教えてくれそうだな。

「いつまで立ち止まってるつもりだ?進む気がないなら邪魔だから道を開けろ」
 久しぶりに鉄仮面に睨まれる。

「えー、辞めちゃうの~?貴哉が演劇部とかギャップ凄くて良かったのにぃ」
 直登は相変わらずの意味不だ。

「大丈夫?貴哉、無理しないで」
 いつでも優しい数馬。

「貴哉、おいで♡一緒に帰ろう」
 いつもの優しい笑顔で俺に手を伸ばす伊織……

 他にもいろいろな声が聞こえて来た。
 なっち、怜ちん、ボラ部元部長、元副部長、詩音、神凪、玉山、教頭、裏方三人衆、楓、母ちゃん、父ちゃん、その他大勢……
 どいつもこいつもこんな俺を助けてくれて、応援してくれてる奴らばかりだった。
 こうして振り返ると俺、すげぇたくさんの人に支えられてたんだな。

 立ち止まってスマホを見ると、茜から不在着信があった。みんなの事振り返ってる間にスマホが震えてたのは分かってたんだ。そしてメッセージを受信する。
『秋山ー!小休憩中にどこまで行ったんだ!練習再開してるから早く戻れ!』って茜から来てて、俺は思わず笑っちまった。

 そうだよな。茜はこういう奴だ。クソ真面目で真っ直ぐで、いつでも俺の事を心配してくれる良い先輩。
 俺が逃げ出してもこうやって無理矢理連れ戻すよな。俺が演劇部に初めて来た時もそうだったんだ。茜は俺の事ずっと睨んでて、お互い気に入らない仲だった。でも、茜は俺の事をちゃんと見てくれて、後輩として真剣に接してくれた。そしたらいつの間にか夜遅くまでゲームで繋がる仲にまでなっててよ。

 はぁ、やっぱり茜には敵わねぇわ!
 茜がいろんな奴からモテる理由がやっと分かった気がするわ。

 俺はクルッと振り返り、来た道を早足で歩く。
 仕方ねぇから演劇部副部長の茜にとことん説教されてやらぁ!


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