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2章 文化祭までのいろいろ

そうしろ。全力で止めてやる

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 俺は自転車を押す空と並んで歩いて、その間に何で空がまたハッテン場に行ったのかを聞いていた。
 

「学校では貴哉と会えるからいいけど、帰ったら一人じゃん?貴哉は桐原さんいるから気軽に連絡も取れないし、だから寂しくなってつい……今回は金が欲しくてやった訳じゃないから、今までの人とは違ったんだけど、若くて俺とあんま年変わらない人だった」

「寂しいから知らない男と会ったのか?ちなみに最後までヤッたのかよ?」

「ホテルに行ったけど、途中で気分じゃなくなったから断ったら腕を掴まれて縛られたらこうなった」


 今度はちゃんとカーディガンを捲ってくっきり付いた手首の痣を見せてくれた。縛られたって、めちゃくちゃ危ないじゃねぇか!良く無事で帰って来れたな!
 そんな痛々しい空の手首を優しく触ってやった。


「無理矢理やられたのか?」

「そんな感じにはなるかな?まぁヤるの前提で会ったから仕方ないって思ってるよ。でもさ、寂しさは無くならなかった。むしろ金が絡んでないから目的も分からなくなって余計に虚しくなったよ」

「空……頼むよ。もうこんなのやめてくれよ」

「じゃあ貴哉が側にいてよ。出来ないだろ?」


 小さな声で言う空は少し震えてるようだった。
 俺は空の手首を触ったまま考えていた。側にいるってハッキリ言ってやりたいけど、伊織がいるから断言は出来ない。なら伊織と別れて空の側にいてやるか?てか伊織とだってそんな簡単に別れられねぇよ……
 でも空を何とかしてやりたい。せめてもうそんなとこに行かなくてもいいようにしてやりてぇんだ。


「空、俺頭悪いからどうしたらいいかなんて分からないんだ」

「……うん」

「だからさ、もしまた寂しいとか他の男に会いたくなったらまず俺に言ってくれよ。絶対電話出れるようにしとくから。何よりも優先して会いに行くから」

「そんなの出来ないだろ」

「出来ないじゃねぇ!やるんだよ!今日だって空が変なの気付いて伊織がすんなり空んとこ行かせてくれただろ?それと一緒だ。伊織が何と言おうが俺は俺の好きにやる」

「貴哉ぁ……そんな事言われたら俺……」


 空は泣きそうな嬉しそうな辛そうな、いろんな感情が混じったような顔をして俺の手をぎゅーっと握って来た。
 俺もそれを握り返して、笑ってやった。


「また貴哉を欲しくなっちゃうよ」

「んー、それは難しいなぁ。でも俺からしたら空も伊織も同じなんだよな~。ただ付き合ってるか付き合ってないかってだけで、同じぐらい好きだし大事なんだ」

「それなら付き合ってる方がいい」

「まぁ聞こえはそっちのがいいよな」

「貴哉と付き合いたい!」

「うおっ!そうか!でも無理だ!」

「そんなハッキリ断らなくてもいいじゃん!」


 あれ?何かいつもの空に戻った?
 また無茶な事言ってるけど、そんな空に俺は嬉しくていつも通りに返していた。
 てか本当に分かってくれたのか?


「こういうのは曖昧にしとくと良くねぇんだ。俺は伊織と付き合ってる。だから俺は空とは付き合えねぇ」

「知ってるよ。早く別れてよ」

「何その俺と伊織が別れるの前提みたいな言い方!まぁ今の方が空らしくて好きだけど」

「俺は桐原さんと違って迂闊に手出さねぇの!だからちゃんと別れてくれよな!」

「チャラ男の癖にぃ?」

「もうチャラ男じゃねぇ!」

「チャラ男じゃねぇか。また髪なんか伸ばしやがって。邪魔じゃねぇのかよ」

「髪切ったら別れてくれるー!?」

「それとこれとは別だ!髪はお前の好きにしろ!長いのが好きなんだろ?」

「まぁね。お洒落出来るし」

「なら伸ばせ!てかお前本当に分かったのか?もうハッテン場とか行くなよ!」

「分かったよ~。もし行くなら貴哉に連絡してからにするよ~」

「そうしろ。全力で止めてやる」


 その後空はずっと笑顔でいてくれた。
 目を離したらまたフラフラと危ない事しそうだけど、なるべく俺が止めてやる。
 一人になるとって言ってたか?なら一人にしなきゃいいんだな。そんな気も起きないぐらい何かに夢中にさせればいい。
 そう言えば空はバイトしたがってたな。まだ紘夢に話してなかったから、次会ったら聞いてみるか。バイトでもすりゃ忙しくなるし、知らない男と会うのもなくなるだろ。
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