【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

文字の大きさ
上 下
73 / 219
2章 文化祭までのいろいろ

用事って何?お前怪し過ぎるぞ

しおりを挟む

 空と自転車置き場まで来てやっと腕を離すと、俺が握ってた所を気まずそうに撫でてた。
 

「おい、それもっかい見せろよ」

「やだっ」

「やっぱりブレスを外し忘れたとか嘘じゃねぇか」

「……本当だもん」

「だったら見せられるだろ!俺に言えない事なのか?」

「…………」

「空」

「言ったら貴哉怒るし」

「隠されて既にイライラしてっけど?」

「それに、言ったら俺の事嫌いになる」

「ならねぇだろ。それどんな理由で痣作ったんだよ。俺が嫌いになるとか逆に気になるわ」

「……ちょっと兄貴と喧嘩したんだよ。それで、その時に掴まれて跡付いちゃったんだ。それだけ!」

「雪兄と喧嘩ぁ?何で喧嘩なんかしたんだよ?」


 理由を聞いて驚いた。確かに雪兄って説教臭ぇとこあるからしてもおかしくはねぇけど、雪兄は暴力振るう男には見えなかったけどな。あんなに大事にしてる弟にそんな跡を付けるような事すっかなぁ?


「テストで酷い点取ったからだよっもういいだろ?俺用事思い出したから先に帰る!」

「あ!待て逃げるな!」


 自分の自転車を転がしながらさっさと帰ろうとする空の腕を掴んで止める。空は困ったように見て来た。


「何だよぉ?」

「用事って何?お前怪し過ぎるぞ」

「……それ、貴哉に言う必要ある?」

「ある!」

「なっ!何で言い切れるんだよ!貴哉は桐原さんと付き合ってんじゃん!」

「テメェそれを今出すんじゃねぇ!ズリィぞ!」

「ズルいのはどっちだよっ!そう言う時ばっか彼氏面して!」


 彼氏面……空に言われてふと考える。
 え、俺って空からそんな風に思われてたのか?
 確かに空とはもう別れてるから、彼氏じゃない。ただ友達として心配してるつもりなのに。
 俺はこのまま空の腕を離して一人で帰すべきなのか?


「とりあえず離せよ……上見てみ」

「あ?上?」


 気まずそうに空が言って上を見上げる。
 この駐輪場は校舎の裏側にあって、裏校舎側の廊下の窓が見えるんだけど、その三階から窓を開けてこちらを覗く三人が見えた。

 げ!伊織と怜ちんとなっちじゃねぇか!
 あそこはボラ部部室を出た廊下か。伊織にバッチリ見つかってんじゃねぇか!
 俺が三人に気付くと、伊織が上から声を掛けて来た。


「貴哉ー、喧嘩してんのー?」

「してねぇよ!大丈夫だから!」

「秋山~!早川をいじめんな~」

「てか空くん行っちゃったよ~」

「んあ!?ああ!空テメェ何勝手に!」


 三人に気を取られてつい空の腕を離した隙にさっさとチャラ男号に乗って帰って行く空。
 あいつ!調子乗りやがって!


「伊織!帰ったら連絡する!じゃあな!」

「おう。ほどほどに頑張れ~」


 珍しく俺を素直に見送る伊織。空があんな感じだったから気を使ってくれてるのかもしれないな。

 俺は走って自転車に追い付こうとしたけど、もう少しってとこで空が加速して離されて、そしてまた追い付きそうになって、加速されてって……あいつ!俺で遊んでねぇか!?


「おい!チャラ男!いい加減止まりやがれ!」

「…………」


 学校を出て結構進んだ所でやっと空が止まって自転車を降りた。もう限界だ……身も心も……体育でもこんなに全力で走らねぇのに、俺を殺す気か!
 よろよろと今度こそ空に追い付く。力無く空の腕を掴むと、空はクスクスと笑っていた。


「あ?笑ってんのか?」

「あは♪だって、貴哉が追い掛けてくれるから嬉しくて」


 やっと笑ったか。空のいつもの笑顔を見れて俺の心は少し落ち着く事が出来た。演劇部で茜にスパルタ指導されたのと、全力疾走したので身はボロボロだけどな!


「貴哉って足速いよな。久しぶりに走ってるとこ見たわ」

「俺はやらないだけで、やれば出来るんだっ」

「面倒くさがりだもんな」

「そうだよ!その面倒くさがりがこんなに必死で追い掛けて来たんだ。ちゃんと話せよな」

「分かったよ。歩きながら話そう」


 最後は困ったように笑って言った。
 やっと観念したか~。俺は空の隣を歩きながら息を整えて話を聞く準備をした。


「はぁ、足ダル……」

「頑張ったもんな。マッサージしてやろっか?」

「おう頼むわ~。話聞いた後にな」

「うーん。絶対怒らないで聞いてよな?」

「一応うんって言っておく」

「……実はさ、またハッテン場行っちゃったんだ。この痣はその時会った人に掴まれて出来たやつ」


 ハッテン場!!男と男が出会い目的で使う場所の事だよな!?


「はぁ!?空テメェ約束破ったのか!」

「ほら怒った!」

「もうやらないって言ったじゃねぇか!」

「言ったけど、つい……」


 空は悲しそうに笑って話していた。
 ついじゃねぇだろ!もう危ない事はしねぇって約束したのに!また知らないおっさんと会ったってのかよ!
 俺は心配よりもまた空がそういう事をしてるってのに怒りが込み上げて来た。だけど、とりあえず話を聞こうと思ってグッと堪えた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...