73 / 157
2章 文化祭までのいろいろ
用事って何?お前怪し過ぎるぞ
しおりを挟む空と自転車置き場まで来てやっと腕を離すと、俺が握ってた所を気まずそうに撫でてた。
「おい、それもっかい見せろよ」
「やだっ」
「やっぱりブレスを外し忘れたとか嘘じゃねぇか」
「……本当だもん」
「だったら見せられるだろ!俺に言えない事なのか?」
「…………」
「空」
「言ったら貴哉怒るし」
「隠されて既にイライラしてっけど?」
「それに、言ったら俺の事嫌いになる」
「ならねぇだろ。それどんな理由で痣作ったんだよ。俺が嫌いになるとか逆に気になるわ」
「……ちょっと兄貴と喧嘩したんだよ。それで、その時に掴まれて跡付いちゃったんだ。それだけ!」
「雪兄と喧嘩ぁ?何で喧嘩なんかしたんだよ?」
理由を聞いて驚いた。確かに雪兄って説教臭ぇとこあるからしてもおかしくはねぇけど、雪兄は暴力振るう男には見えなかったけどな。あんなに大事にしてる弟にそんな跡を付けるような事すっかなぁ?
「テストで酷い点取ったからだよっもういいだろ?俺用事思い出したから先に帰る!」
「あ!待て逃げるな!」
自分の自転車を転がしながらさっさと帰ろうとする空の腕を掴んで止める。空は困ったように見て来た。
「何だよぉ?」
「用事って何?お前怪し過ぎるぞ」
「……それ、貴哉に言う必要ある?」
「ある!」
「なっ!何で言い切れるんだよ!貴哉は桐原さんと付き合ってんじゃん!」
「テメェそれを今出すんじゃねぇ!ズリィぞ!」
「ズルいのはどっちだよっ!そう言う時ばっか彼氏面して!」
彼氏面……空に言われてふと考える。
え、俺って空からそんな風に思われてたのか?
確かに空とはもう別れてるから、彼氏じゃない。ただ友達として心配してるつもりなのに。
俺はこのまま空の腕を離して一人で帰すべきなのか?
「とりあえず離せよ……上見てみ」
「あ?上?」
気まずそうに空が言って上を見上げる。
この駐輪場は校舎の裏側にあって、裏校舎側の廊下の窓が見えるんだけど、その三階から窓を開けてこちらを覗く三人が見えた。
げ!伊織と怜ちんとなっちじゃねぇか!
あそこはボラ部部室を出た廊下か。伊織にバッチリ見つかってんじゃねぇか!
俺が三人に気付くと、伊織が上から声を掛けて来た。
「貴哉ー、喧嘩してんのー?」
「してねぇよ!大丈夫だから!」
「秋山~!早川をいじめんな~」
「てか空くん行っちゃったよ~」
「んあ!?ああ!空テメェ何勝手に!」
三人に気を取られてつい空の腕を離した隙にさっさとチャラ男号に乗って帰って行く空。
あいつ!調子乗りやがって!
「伊織!帰ったら連絡する!じゃあな!」
「おう。ほどほどに頑張れ~」
珍しく俺を素直に見送る伊織。空があんな感じだったから気を使ってくれてるのかもしれないな。
俺は走って自転車に追い付こうとしたけど、もう少しってとこで空が加速して離されて、そしてまた追い付きそうになって、加速されてって……あいつ!俺で遊んでねぇか!?
「おい!チャラ男!いい加減止まりやがれ!」
「…………」
学校を出て結構進んだ所でやっと空が止まって自転車を降りた。もう限界だ……身も心も……体育でもこんなに全力で走らねぇのに、俺を殺す気か!
よろよろと今度こそ空に追い付く。力無く空の腕を掴むと、空はクスクスと笑っていた。
「あ?笑ってんのか?」
「あは♪だって、貴哉が追い掛けてくれるから嬉しくて」
やっと笑ったか。空のいつもの笑顔を見れて俺の心は少し落ち着く事が出来た。演劇部で茜にスパルタ指導されたのと、全力疾走したので身はボロボロだけどな!
「貴哉って足速いよな。久しぶりに走ってるとこ見たわ」
「俺はやらないだけで、やれば出来るんだっ」
「面倒くさがりだもんな」
「そうだよ!その面倒くさがりがこんなに必死で追い掛けて来たんだ。ちゃんと話せよな」
「分かったよ。歩きながら話そう」
最後は困ったように笑って言った。
やっと観念したか~。俺は空の隣を歩きながら息を整えて話を聞く準備をした。
「はぁ、足ダル……」
「頑張ったもんな。マッサージしてやろっか?」
「おう頼むわ~。話聞いた後にな」
「うーん。絶対怒らないで聞いてよな?」
「一応うんって言っておく」
「……実はさ、またハッテン場行っちゃったんだ。この痣はその時会った人に掴まれて出来たやつ」
ハッテン場!!男と男が出会い目的で使う場所の事だよな!?
「はぁ!?空テメェ約束破ったのか!」
「ほら怒った!」
「もうやらないって言ったじゃねぇか!」
「言ったけど、つい……」
空は悲しそうに笑って話していた。
ついじゃねぇだろ!もう危ない事はしねぇって約束したのに!また知らないおっさんと会ったってのかよ!
俺は心配よりもまた空がそういう事をしてるってのに怒りが込み上げて来た。だけど、とりあえず話を聞こうと思ってグッと堪えた。
10
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる