【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

文字の大きさ
上 下
41 / 219
1章 二学期中間テスト

ちょっと待ってよ貴哉!

しおりを挟む
 
 テスト最終日。俺は朝から教室で家から持って来た中間テスト対策ノートを開いて頭に叩き込んでいた。
 そんな俺が珍しいのか、やっぱりと言わんばかりに直登が茶化して来た。


「うわぁ~!今日雪でも降るんじゃない?」

「今集中してっから!」

「いいね~♡貴哉が自分から勉強とかギャップ最高♡……ん?ねぇ貴哉それって……」

「だから話かけんなって!」

「左の薬指とか、もしかしてペアリング!?」

「あ!ネックレスに付けるの忘れてた!」


 失くすとやだから昨日からずっと付けっ放しにしてた指輪を指摘されて、慌てて隠すけど直登のニヤつく顔を見てもう遅いと分かって俺は開き直る事にした。


「すごーい♪ねぇ見せて見せて~」

「やめろ!触るんじゃねぇ!伊織に殺されるぞ!」


 俺の手を取って指輪を見たがる直登を虫を払うようにしっしっとやって追い払う。と、ここで数馬がいないのに気付く。こいつらいつも一緒なのに珍しいな。


「おい数馬どうした?」

「数馬くんならトイレ行くって~。俺は先に来たんだよ」

「あいつ一人で行けるようになったのか!?」

「数馬くんの事何歳だと思ってんの?あの子結構一人で行動出来るようになったんだよ。大人数の所だと口数は減るけど、もうパニック起こしたりはしてないよ」

「へー、そっか~。それなら良かったな」

「で、それ桐原さんからのプレゼント?やっぱ年上っていいなぁ♪どこのブランドのやつ~?桐原さんだから安いのくれたりしないでしょ」

「ブランドは分からねぇ。でも値段は知ってる。言わねぇけどな」

「一緒に見に行ったの!?ますます羨ま~!」

「てかあんま騒ぐなよ!これ結構恥ずかしいんだからな!」

「だろうね。貴哉がアクセ付けるとか違和感凄いもん。失くさないようにね~」


 それな。俺だからすぐに失くしそうだ。こんな高級品をコンビニ行く感覚で買っちまうぐれぇだから伊織は怒ったりしねぇだろうけど、俺は一生後悔すると思う。
 この指輪は伊織だと思って大事にするぞ!

 直登も自分の席で大人しくなった頃、空が教室に入って来たのが目に入った。あ、数馬と一緒じゃん。笑い合いながら入って来る二人を見てホッとしていた。
 そして、空はリュックを机に置いて俺のところまでやってきた。


「おはよう貴哉♡」

「はよ。お前勉強したか?」


 昨日の別れ際微妙な感じだったから少し心配だったけど、今日もいつもの空みたいだった。


「さすがに少しした。貴哉は朝から自主勉とかやる気満々だな」

「空くーん。貴哉の左手見てよー」

「あ!テメェ余計な事言ってんじゃねぇ!」


 何となく見つからないようにしてたのに、直登が教えるから空が覗き込んで来て、指輪を見られた。別に隠さなくても良い事だけど、空に見付かるのはちょっと嫌だった。
 空は驚いた顔して、俺の左手を手に取ってまじまじと見ていた。


「やば!あの人マジで買ったのかよ!?」

「そうだよ……俺も嘘を本当にするしかねぇと思って欲しいって言ったらあの後すぐに買ってくれたんだ……」

「ちょっと待ってよ貴哉!」


 ここで一度大人しくなった直登が立ち上がって俺に猛抗議をして来た。今度は何だよ!


「何で空くんには手を触らせるの!?俺が触ろうとしたら嫌そうに払ったじゃん!」

「え♡そうなの?♡」


 直登に言われて慌てて空の手を払う。
 やべ。無意識に行動に出てたか。
 それに対して空は嬉しそうに笑った。
 

「うるせぇなぁ!たまたまだ!てかいい加減黙れ!俺がテストで赤取ったらお前のせいだからな!」

「自分が頭悪いの人のせいにするなー!」


 こいつは本当に変わらねぇなぁ!
 俺と直登のやり取りを見て笑う空と数馬。
 二人が笑ってくれるならそれでいっか。

 そして俺は運命の中間テスト最終日、きちんと名前を書いてなるべく空欄は埋めるように心掛けて挑んでやった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...