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1章 二学期中間テスト
ちょっと待ってよ貴哉!
しおりを挟むテスト最終日。俺は朝から教室で家から持って来た中間テスト対策ノートを開いて頭に叩き込んでいた。
そんな俺が珍しいのか、やっぱりと言わんばかりに直登が茶化して来た。
「うわぁ~!今日雪でも降るんじゃない?」
「今集中してっから!」
「いいね~♡貴哉が自分から勉強とかギャップ最高♡……ん?ねぇ貴哉それって……」
「だから話かけんなって!」
「左の薬指とか、もしかしてペアリング!?」
「あ!ネックレスに付けるの忘れてた!」
失くすとやだから昨日からずっと付けっ放しにしてた指輪を指摘されて、慌てて隠すけど直登のニヤつく顔を見てもう遅いと分かって俺は開き直る事にした。
「すごーい♪ねぇ見せて見せて~」
「やめろ!触るんじゃねぇ!伊織に殺されるぞ!」
俺の手を取って指輪を見たがる直登を虫を払うようにしっしっとやって追い払う。と、ここで数馬がいないのに気付く。こいつらいつも一緒なのに珍しいな。
「おい数馬どうした?」
「数馬くんならトイレ行くって~。俺は先に来たんだよ」
「あいつ一人で行けるようになったのか!?」
「数馬くんの事何歳だと思ってんの?あの子結構一人で行動出来るようになったんだよ。大人数の所だと口数は減るけど、もうパニック起こしたりはしてないよ」
「へー、そっか~。それなら良かったな」
「で、それ桐原さんからのプレゼント?やっぱ年上っていいなぁ♪どこのブランドのやつ~?桐原さんだから安いのくれたりしないでしょ」
「ブランドは分からねぇ。でも値段は知ってる。言わねぇけどな」
「一緒に見に行ったの!?ますます羨ま~!」
「てかあんま騒ぐなよ!これ結構恥ずかしいんだからな!」
「だろうね。貴哉がアクセ付けるとか違和感凄いもん。失くさないようにね~」
それな。俺だからすぐに失くしそうだ。こんな高級品をコンビニ行く感覚で買っちまうぐれぇだから伊織は怒ったりしねぇだろうけど、俺は一生後悔すると思う。
この指輪は伊織だと思って大事にするぞ!
直登も自分の席で大人しくなった頃、空が教室に入って来たのが目に入った。あ、数馬と一緒じゃん。笑い合いながら入って来る二人を見てホッとしていた。
そして、空はリュックを机に置いて俺のところまでやってきた。
「おはよう貴哉♡」
「はよ。お前勉強したか?」
昨日の別れ際微妙な感じだったから少し心配だったけど、今日もいつもの空みたいだった。
「さすがに少しした。貴哉は朝から自主勉とかやる気満々だな」
「空くーん。貴哉の左手見てよー」
「あ!テメェ余計な事言ってんじゃねぇ!」
何となく見つからないようにしてたのに、直登が教えるから空が覗き込んで来て、指輪を見られた。別に隠さなくても良い事だけど、空に見付かるのはちょっと嫌だった。
空は驚いた顔して、俺の左手を手に取ってまじまじと見ていた。
「やば!あの人マジで買ったのかよ!?」
「そうだよ……俺も嘘を本当にするしかねぇと思って欲しいって言ったらあの後すぐに買ってくれたんだ……」
「ちょっと待ってよ貴哉!」
ここで一度大人しくなった直登が立ち上がって俺に猛抗議をして来た。今度は何だよ!
「何で空くんには手を触らせるの!?俺が触ろうとしたら嫌そうに払ったじゃん!」
「え♡そうなの?♡」
直登に言われて慌てて空の手を払う。
やべ。無意識に行動に出てたか。
それに対して空は嬉しそうに笑った。
「うるせぇなぁ!たまたまだ!てかいい加減黙れ!俺がテストで赤取ったらお前のせいだからな!」
「自分が頭悪いの人のせいにするなー!」
こいつは本当に変わらねぇなぁ!
俺と直登のやり取りを見て笑う空と数馬。
二人が笑ってくれるならそれでいっか。
そして俺は運命の中間テスト最終日、きちんと名前を書いてなるべく空欄は埋めるように心掛けて挑んでやった。
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