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1章 二学期中間テスト
って事でみんな気を付けて帰る事!以上!
しおりを挟むテストは昼前に終わった。俺は全力で頑張ったと思う。普段の授業より疲れたのは言うまでもない。
そして帰りのホームルームで玉ちゃんがみんなにこう言った。
「よーし、テスト最終日みんなお疲れなー!早く帰って休みたいところ悪いが少し時間貰うぞー」
これにすぐに帰れると思っていたみんなはザワザワとし始めた。
えー、何?俺腹減ったから早く帰りてぇんだけど。
「ちょっとみんなに自己紹介をしてもらおうと思ってな♪言わば中間テストの延長戦だ♪授業点に含むから真面目にやれよー?」
玉山はニヤリと笑ってみんなにそう言った。
あー!忘れてた!そう言えば俺の為にみんなに自己紹介してもらうとか話してたな!
確か俺が寝不足とかで朝から保健室に行って無くなったんだ。
玉山のやつ、覚えててくれたのかぁ!
「玉ちゃん最高~♪みんなしっかりやれよー!」
俺が感動してみんなに言うと、更にザワついた。
ふん、みんなも俺みたいにダメ出しされればいい!立派な自己紹介は真似させてもらうけどな。
みんなは動揺してたけど、いざ始まったら結構みんな真面目にやっていた。照れてる奴もいれば、入試の面接かってぐらいしっかりした奴もいた。
へー、自己紹介ってこうやるんだぁ。
「じゃー次戸塚!お前のは大本命だからな。しっかり頼むぞ」
出ました鉄仮面!
見た目からして優等生!そして中身も優等生の戸塚春樹!
戸塚はいつも学年一位の成績で、クラスではいつも無表情で本を読んでる鉄仮面だ。
鉄仮面ってあだ名は俺が付けた!主に心の中でしか呼ばねぇあだ名だけど、戸塚は直登と付き合ってたんだ。そん時の戸塚に毎回睨まれていた俺は何か怖ぇーから鉄仮面って呼ぶようになったんだ。
初めこそこいつには嫌われていたけど、今では普通に話す仲だけどな。ちなみに紘夢の従兄弟で家は金持ちだ。
「はい。城山高校一年A組の戸塚春樹です。趣味は読書です。速読が得意です。親が会社を経営しているので尊敬している父が守って来た会社を継ぐ事が今の目標です。最近は勉強面だけでなく社会性を身に付ける為に父の会社の食事会などにも参加させていただいてます。目上の方ばかりですが、普段学べない事を得られるのでとても充実しています。以上で自己紹介を終わりにします」
ペコっと頭を下げて立派な自己紹介をして見せた鉄仮面。さすが戸塚だなぁと思いつつ、速読って何だ?とも思った。
その後も、いきなり始まった無茶振りにも関わらずみんなが各々自己紹介をしていった。
そして次はいよいよ空の番♪あいつは勉強は出来てもこういうのは俺と大差ねぇだろうな~。
「はーい!一年A組早川空です。空って可愛い名前だけど、立派な男です。母さんが空が好きで付けてくれた名前なので気に入ってます♪趣味はお洒落をする事。なので、卒業後はファッションか美容関係の学校でお洒落を学びたいと思ってます。みんなから質問なければこれで終わりたいと思いまーす」
うわっ!喋り方は戸塚に比べて柔らかかったけど、内容はしっかりしてね!?え、てか空の奴、卒業後の事考えてたの?
少し驚いてると、次はみんなもハラハラ気になっている数馬の番だ。数馬は大勢の前で話すのは苦手だから、玉山も無理するなってフォローしていた。それでも数馬は震えながら立ち上がって、喋り始めた。
「……ひ、広瀬数馬です……俺は、対人恐怖症です……こ、こんな風に人前で話す事が……事が、苦手です……病院にも通ってます……でも、この高校で人と話したり、接したりする事の楽しさや大切さを知りましたっ……だから、お、俺は!病気のせいにしたりせずに、みんなのように、堂々と自己紹介が出来るようになりたいですっ……あ、以上ですっ」
数馬ぁ!お前には毎回感動させられるぜ!
でもこうして改めて数馬の思ってる事聞けたから良かったなと思う。俺とかは数馬とは良く話すから知ってるけど、クラスの奴らはまだ数馬の事を良く知らない奴がほとんどだろ。この自己紹介を聞いたらみんなも少しは数馬の事を知れたんじゃねぇかな。
俺はズズっと鼻水を啜って、次の番の学校の王子である直登の自己紹介に耳を傾けた。
「俺は城山高校一年A組の中西直登です。好きな事は料理で、最近はお菓子作りにハマってます。嫌いな事は人を見た目で判断する事です。小さい頃に空手をやっていました。なので、スポーツや体を動かす事は今でも好きです♪あと、動物も好きで、家では大きなゴールデンレトリバーを飼っています。俺の紹介は以上です♪」
直登もちゃんと紹介してたけど、サラッと嘘ついたのを俺は聞き逃さなかったぞ!直登は汗かくのが嫌いで、体育ではほとんど動かないんだ!つまりスポーツや体を動かす事が好きってのは嘘だ!
なにはともあれ、みんな自分の事をちゃんと話せてたなー……俺のとは全然違う。何か、ちゃんと自分を持ってるようなものだった。
そして態度もしっかり立って前を向いてやっていた。あの数馬も震えながらもしっかり立って喋ってた。
そうか、自己紹介ってのはこうやるのか……
「よーし!みんな良い自己紹介だったぞ♪お前らの担任になって半年経ったが、今回ので知らない部分も知れて良かったな。はい最後に秋山~!頼むから立派に締めてくれ~」
「は!?ちょ!まっ!俺もやんのぉ!?」
俺は驚いて立ち上がってニヤニヤ笑う玉山に抗議した。すると、後ろにいる直登が機嫌悪そうに言った。
「当たり前だろー?貴哉がみんなの自己紹介見たかったんだろ?その見たかった物を見た成果、見せてよなー?」
「いやいや、俺はまだ不完全だからっ……」
「何恥ずかしがってんだ秋山~。さっさとやらんか~」
なんて事だ!俺はすっかりみんなが俺の為にやってくれてる物だと思ってて、まさか自分もやらされるとは思っていなかった!
そのせいでみんながしてた自己紹介なんか吹っ飛んだわ!
あーもう!こうなったらヤケクソだ!
俺は俺のやり方でやる!
「クソ!俺は城山高校一年A組の秋山貴哉だ!……です!好きな事は……寝る事!だから良く遅刻してました!でも最近は早く起きてます!……んー!俺はっ!跡を継ぐような家の生まれでもなければ、好きな事を更に学ぼうとしてる訳でもねぇ。そんでもって、苦手な事は面倒くさがって克服しようともしねぇし、嘘を織り交ぜて上手く話せる訳でもねぇ。でも、これだけは言える。俺は友達の事だけは胸張って話せる!どいつもこいつも癖の強ぇ奴ばっかだけど、俺はそんな友達が大好きだ。あと、生徒想いな担任の玉ちゃんの事もリスペクトしてまーす!って事でみんな気を付けて帰る事!以上!」
途中からはもうほぼ自分の思った事を話しただけだった。みんなみたいに、上手くは伝えられなかったと思うけど、俺なりに好きな物を言えたと思うんだ。
俺が話し終わると、教室は静まり返っていて、めちゃくちゃ気まずかった。えー、何でみんな黙ってんのー?ちょ、失敗した感じー?
すると、玉山が拍手し出して笑顔で俺にこう言った。
「秋山!お前やれば出来るじゃないか♪相変わらず言葉使いは悪いが、どんな人柄なのかが良く伝わって来たぞ。何よりも堂々とした態度と友達の事を話している時の笑顔がとても好印象だった」
「貴哉ぁー!嘘を織り交ぜて上手く話せるって俺の事じゃないよねー!?」
「貴哉らしくて、かっこよかったよ♪俺も貴哉みたいになりたいっ」
玉山と直登と数馬にそれぞれ感想を貰って、俺はストンと自分の椅子に座った。
そして、バラバラと帰って行くクラスメイト達。俺はそのまま自分の席に座ったままボーッとしていた。
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